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「デザインはノンバーバル。アプリ素材の買取販売で世界展開へ」―AppItem OFF松田佳祐【本田】

[読了時間:1分]

アプリ・アプリ素材売買ビジネスの今(2)
 使わなくなったりお蔵入りになったスマホアプリやその素材を最活用しようとするビジネスがある。前回のアクシオンに続き、後半では2011年11月に「アプリ素材の買取販売」事業を始めた株式会社ビジョナリー・ファンを取り上げる。

サービスの概要

 AppItem OFF(アピテムオフ)とは、2011年11月28日にオープンしたアプリ素材の買取販売のマーケットである。スマホアプリを構成している一つ一つのデザイン(例えばRPGゲームだと、キャラクターや剣や防具、背景画像など)のほぼ全てを、アプリを新たに作りたい人に売る。

 サービスの仕組みはBtoBをメインにしている。売り手はデザイナー個人の場合もある。買い手はBのみ。買う方は、素材の種類や金額を指定して検索。デザイン素材は、ai(イラストレーター)やpsd(フォトショップ)形式など元データ(データをいじれる状態)を扱う。リリース時は買い取りのみを行い、販売は2012年1月を予定。

 著作権管理や不正利用防止のためのルールも厳密に定めている。
 買い取ったデータは一社独占であり、その会社は自由に利用・加工して、著作権を主張出来る。売った側は二度とそのデザインを使うことは出来ない。また、買い取りするには、個人を特定できる情報、法人であれば登記簿謄本の確認が必要がある。売ったデータが他者の著作権を侵害していたり、破損・ウィルスを含んだデータだった場合、売った後に売主が使ってしまった場合などの例を列挙して、売主側の責任を明記している。

 買い取り価格の決め方は、

の3つの掛け合わせで決まる。

このビジネスを始めたきっかけ

 ビジョナリー・ファンCEOの松田佳祐さんに、このビジネスの狙いを伺った。

 「元々、大学生インターンの求人メディアをやっているが、アプリ系からの企業からの求人が多い。実情を聞いていると、そもそも人材不足で労働環境も大変そうだった。」

 別な仕組みが必要と考えていたところ、そういった会社にお蔵入りしたデザインが多いことに気が付いたそうだ。
 「1つのアプリを作るのにも、3-5案のうち1つしか使われない。さらに資金が途中で底をつき、頓挫したプロジェクトもあった。その使われなくなったデザインが大量に溜まり、多い企業では数千点が無駄になっていて再利用の予定もない。見させてもらうと、一つ一つのクオリティが高く勿体無いと思った。」

 「アプリそのものの買取サイトはあるが、単価が高くて買い手がつかず資金化しにくい。そこで、デザイン一つ一つなら、数百円から数千円の単位でうちが買い取れる。メリットは、デザインを持っている企業にとっては、すぐにお金に変えられること。買い手としても、必要な部分だけを安価ですぐ買い取れる。」


ビジョナリー・ファンCEO松田佳祐氏(Photo:Masahiro Honda)

手応えと今後の展開

 2012年8月末までに、買取アプリ素材数10万点、販売アプリ素材数8万点が目標。
「最初の予測よりもいい感触。興味を持ってもらえるかも全く想像がつかなかった。数十社お伺いして脈のない企業はなく、企業からの受けがいい。値付けやユーザーへの提供の仕方を間違えなければ伸びる。」と自信をのぞかせる。

 年内には英語版を作り、来年から海外展開・アジア進出も予定している。このような仕組みで国際的なデザインの交流を目指すという。

 「アプリということで世界共通。デザインはノンバーバルでもある。また、デザインの流行も分かるはずなので、機械的に買取をするのではなく、アプリ業界全体を見ながら、こちらから必要なデザインを提案することもあると思う。」

蛇足:私が思うに、
 デザインってたくさん作って無駄になるのは当然(仕方ない)というのは、デザイナーにとってみれば「常識」。ここを覆そうとするAppItem OFFのチャレンジは、クリエイティブに新しい光を当てる可能性がある。

 素材を提供する企業側も、AppItem OFF利用を前提とした権利処理やデータ管理をすることによって、無駄になる資産を有効活用出来るんじゃないかな。

著者プロフィール:本田正浩(Masahiro Honda)

写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。

技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。

http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com

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