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TechWaveの2周年と今後の方向性【湯川】

[読了時間:4分]
 TechWaveは2010年1月15日にスタートしました。今日でまる2年がたったわけです。「新しいメディアのカタチを模索する」ということをミッションの1つに掲げてスタートしましたので、メディアビジネスとしてTechWaveがどう変化してきたのか、これまでの経緯と今後目指している方向性についてお話したいと思います。

 2009年に新しいブログメディアの開設について旧ライブドア(現NHN)からお話をいただき、ライブドア傘下のブログメディアとして2010年1月15日にTechWaveはスタートしました。ライブドアは広告で収益を上げることなどを目的にTechWaveを運営し、わたしは編集長としてライブドアから毎月、業務委託費を受け取るという形でした。

 時事通信時代に同じ部署にいた本田正浩に声をかけスタート時から二人三脚で始めることになり、すぐに増田真樹、三橋ゆか里、鎌田麻三子など、仲間が増えていきました。

 ページビューを増やし、広告収入を増やすという普通のメディアビジネスに挑戦したのですが、仲間を増やし業務委託費を分配するので、とても業務委託費だけでは生活できない状態でした。自分一人でブログメディアを運営し、業務委託費だけでぎりぎりの生活するという選択肢もあったのですが、ワーキングプアーになるために独立したのではありません。しっかりと生活できるようなメディアを作ることが目的の一つでしたので、周辺ビジネスも作っていきたいと思いました。そして何より、すばらしい仲間と一緒に仕事をするほうが楽しかった、というのが本当のところでした。

 周辺ビジネスは思いつくままいろいろと試してみました。電子書籍事業にも乗り出して、英語の勉強法に関する電子書籍も出しました。少人数制の勉強会やイベントなども手がけました。

 中でも予想以上にうまくいったのがTechWave塾という少人数制勉強会でした。最初は「ソーシャルメディアマーケター養成講座」という名称でスタートしたのですが、わたし自身の興味の対象がソーシャルメディアマーケティングから別の領域に移行したので、勉強会の名称も「TechWave塾」に変更しました。テーマ自体は、「スマートフォン」「オンラインメディア」「アジア」と、わたしの興味のままに変えて行き、これまでに8回開催するまでになりました。TechWaveというメディアを運営していることで、受講生の集客と一流の講師への依頼が容易になる、というビジネスモデルになっています。


 TechWave塾に関する最大の賭けは、受講料でした。6回の講義で15万円という高額な受講料に設定したのです。これだけ高い受講料を課して本当に受講生が集まるのだろうか。当初は悩んだのですが、実はこの高額受講料が思わぬ効果を生みました。

 ここまで高額の受講料を支払うのだから、応募してくる受講生はみな本気でした。本気の受講生しか集まりませんでした。みなさん本業が忙しいのでしょうが、休むことも少なく、講義中は真剣な眼差しで講義を聞き、議論するのです。講義後の懇親会でも、みな熱心に議論し朝まで議論する人たちもいました。また受講生のほとんどがそれぞれの分野の専門家ですので、受講生同士の議論の中にも学びがたくさんあります。P2Pの学習環境ができたのです。

 TechWave塾の受講生はのべ133人になりました。OB、OGたちはFacebook上でグループを作り熱心な情報交換を続けています。OB、OGが持ち回りで講義する勉強会も誕生し、OB、OGたちが自主的に運営しています。非常に活発なコミュニティが形成されたわけです。

 彼らと話していると「TechWave」という言葉の定義が変わってきたことに気づきます。彼らがTechWaveと呼ぶときは、このブログメディアを指すのではなく、TechWaveを核としたコミュニティを指しているのです。

 テクノロジーを使って世の中を変えていきたいと考えている人たちのコミュニティですから、みな生き生きとしています。目がキラキラ輝いているのです。コミュニティのメンバーがよく「TechWaveのイベントにくると元気をいっぱいもらえる」と言うのですが、それはわたしも実感しています。わたし自身、彼らからたくさんの「元気」をもらっています。

 そしてコミュニティは、わたしの生活の糧になっています。最近は、TechWave塾の塾生募集に力をそれほど入れなくてもよくなりました。塾生OBが新しい塾生を連れてきてくれるのです。TechWave塾大阪は今回、3期目ですが、ブログ上で告知する前に口コミで8割以上の席が埋まっていました。

 もともとメディアはコミュニティになると考えていましたから、この流れはある程度予測していたのですが、コミュニティメディアの力がこれほどすごいものになるとは思ってもいませんでした。

 一方でページビュー獲得を中心にしたメディアビジネスの限界に、わたしもライブドアも気づき始めていました。TechWave塾にはライブドア関係者が毎回一人は参加していましたので、ソーシャル時代のメディアはコミュニティをベースにしたものになるという理解がライブドア関係者の中にも広まっていきました。どちらから言うまでもなく、これまでのページビュー中心の運営方針を変更し、「テクノロジーで閉塞感を打ち破れ」という新しいミッションをかかげたコミュニティメディアである、ということを前面に押し出すことに決めました。ブログのデザインも変更しました。それが2011年7月1日のことです。今ではライブドア(今年からNHNに社名を変更)からページビューに関するプレッシャーを受けることは、一切ありません。ページビュー獲得を第一に考えて記事を書くことが一切なくなりました。また2012年1月1日からは契約内容が変更になり、TechWaveというブログメディアはNHNではなく「湯川鶴章」個人のものになり、「業務委託費」ではなく「スポンサー料」をいただくようになりました。

 スポンサー料は、ブログメディアの編集を受け持つ湯川、本田、増田で分配し、それぞれが運営するイベントの収益はそれぞれが受け取る形にしています。順風満帆とはまだまだ言えないかもしれませんが、なんとかやっていけています。今年はより安定的な収入を確保できるようになりたいですし、3人以外にもTechWaveに関わってくれている人たちにも収益が還元される形になっていってほしいと思っています。

 試行錯誤はまだまだ続きそうです。

 コミュニティの形は、僕を中心として、その下に増田、本田が入っているのではなく、増田、本田はそれぞれのコミュニティを形成し始めています。TechWaveという1つのコミュニティではなく、それぞれのコミュニティがTechWaveブランドを掲げているという形です。増田が主催するスタートアップのための少人数制勉強会やコミュニティであるTechWave Vanguardはその顕著な例です。

 1つのブログメディアの下に、複数のコミュニティが存在することがいいことかどうなのか、正直分かりません。これも試行錯誤の中で、判断していきたいと考えています。

 また今年は、増田、本田以外にもTechWaveコミュニティのメンバーに記事を書いてもらって、それぞれが発信することで、「評価」「評判」を得て、それぞれのコミュニティや仲間を獲得してもらいたいとも思っています。TechWave塾の事務局を手伝ってくれている鈴木まなみが、書く記事書く記事ヒットを飛ばしていますが、彼女自身、情報を発信することで彼女の世界が広がり始めたことを実感し始めたと言います。岡田斗司夫氏の「評価経済社会」などの本にあるように、「評価」「評判」というものが、これまでの「貨幣」のように社会の「血液」になるのだと思います。「評価」「評判」が「人」や「金」、「幸福」を連れてくる時代になるのだと思います。そういう時代の到来を目前に控え、TechWaveというブログメディアをプラットフォームとして多くの人が「評価」「評判」を得ていってもらえれば、と思います。

 これがTechWaveのこれまでの経緯と、今後の方向性に関する、わたしの偽りのない考えです。

 コミュニティとしてのメディア、コミュニティ活性化の秘訣など、テーマとしては非常におもしろく、TechWaveはいい事例になっているのではないかと思います。最近はループス・コミュニケーションズに就職したTechWave元コミュニティマネジャー(現在は、TechWaveエバンジェリスト)の鎌田麻三子が、講演などでこの辺りの経緯を話してくれています。興味のある方はFacebookで鎌田麻三子を検索し、メッセージを送ってみてください。

 最後にこれまでご支援いただいたみなさまにお礼を申しあげたいと思います。これからも試行錯誤を続けていきますので、ご支援のほどをお願いしたいと思います。

2012年1月15日
湯川鶴章

(文中の敬称は、省略させていただきました)

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