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アプリ博のつくり方 ーイベントコミュニティ構築のメモ 【増田(@maskin)真樹】


[読了時間: 5分]

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 去る2012年2月13日(水)、東京・渋谷の東急セルリアンタワー11F、GMOインターネットさんのミーティングフロアおよび社食「GMO Yours」で、TechWave maskinプロデュース「アプリ博」を開催しました。GMOインターネットのみなさん、SocialMediaWeek関係者のみなさん、出展者のみなさん、来場者のみなさん、ボランティアスタッフ、TechWave編集部、その他多数の協力者の方々の協力により平日開催にもかかわらず、およそ6時間で1000人の来場者を記録し、終始興奮状態のまま終演することができました。まさに夢のような空間、主催者の私自身も振り返ってはその余韻にひたり、この世界を実業に反映させたいと思う毎日です。

 このイベントの企画自体は私maskinこと増田真樹が一人で構築していきましたが、本イベントの成功は関係者みなさんが意欲的に協力していただいたことに尽きます。それではアプリ博はどのように企画し、運営していけたのか。企画段階からいくつかの結果を通してイベントコミュニティ構築における覚え書きを残したいと思います。

みんなで作った夢の空間





 筆者はこのイベントのコンセプトを「日本初のIT博覧会」「怒涛の8時間ピッチ」「アプリ開発者同士の横のつながりの創出」「みんなで作る」といった複数のキーワードで構築していきました。結果としてフィードバックベースでは多くの方から以下のようなメッセージが今も途だえることなく届いています。まずは、その反響の一部を列挙させて頂きます。

■ゲスト側の反響
・出展者も参加者も野望でギラギラしてましたね。おおいに刺激を受けました。多謝!
・アプリ博お疲れ様でした!来客としてめちゃくちゃ楽しませて頂きました♪
・アプリ博面白いっす!
・アプリ博は本当に楽しかった!刺激受けました。異分野の方々との交流は刺激的でした。
・やたらchatworkの紙袋持ってる人多いな。なんかイベントあったのかな?
・アプリ博覧会 いろんなideaのアプリが集結!大盛況なうです。こんなことifあればいいな~がカタチになってる。面白い!良い意味で尖った人達が多くて刺激になります。
・アプリ博、めっちゃおもろい。刺激たっぷり。アミューズメント系のアプリが面白い。いろいろコラボできそう
・アプリ博来ております。各社サービスをもぐもぐ消化中。会場の業界臭が楽しいw
・ちょっと行って来た。すごい人。私はVCでもないのに、エレベータートークされまくりw
・すごく楽しくて、今日行って本当によかったです。
・マスキンパワーばねえっす。
・お疲れ様でした!アプリ博、素敵なご縁、感謝です!
・とてもいいイベントでした。ありがとうございました。
・Maskinさん、お疲れ様でした。素敵なイベントでしたね!
・今日はおつかれさまでした。すごいカンファレンスになりましたね!!
・素敵なイベント有り難うございました!
・伝説作りましたね。すばらしいイベントでした。多謝!

■ 出展者からの声
・沢山の方がブースへ来ていただけて、本当に楽しいイベントになりました。
・12時から21時までずっと立ちっぱなしの話しっぱなしだったので、かなり疲れました。
・アプリ博はとても良いイベントになりました!是非また開催してほしいです! よろしくお願いします!
・使ってますよ!って言ってくれるお客様がたくさんいてくださってめちゃくちゃ嬉しい。
・お馴染みの方・久しぶりの方、そして初めての方々に沢山お会いできてメチャ楽しかったです!
・みなさまから、色々なご意見、ご感想をいただき、大変参考になりました。ありがとうございました。
・沢山の良い出会いがありました。出展者の皆様とももっと交流したいですね!今後とも宜しくお願い致します。
・本当に多くの方とお話することができ、またプレゼンの機会も頂戴することができて、非常に有意義な一日となりました。
・OPENからCLOSEまでノンストップで喋りまくりました。
・たくさんの出会いがあり、札幌からきた甲斐がありました。本当にありがとうございました。
・楽しく有意義なイベントで、本当にユメを見ているような気持ちでした。この経験を糧に、今後も頑張って参りたいと思います。改めて、このイベントに関わられたすべての方にお礼申し上げます。
・開場から怒涛の来場で閉会までほぼ口を閉じてる時間がありませんでした。参加したメンバー全員で喉が枯れるまでアプリの説明ができる超幸せな空間を与えて頂き、本当にありがとうございました。
・ものすごい来場者の数で正直おどろきで対応にてんてこまいでしたがとても素晴らしい体験ができました!ものを作って出すということがいかに大切か身をもって感じることができ大変嬉しいです。
・とても有意義な時間を過ごさせていただきました。最初から最後まで膝がガクプルになるまでいろいろな方とお話することができました。
・素晴らしい集客力で、魅力的な出会いをたくさん提供していただき、参加して大変良かったです。
・出展して本当に良かったと思っています。ほんっっとうにありがとうございました!
・楽しかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!素敵な1日でした。ありがとうございます!
・8時間途切れる事なくお話させていただいて、あっという間に終わってしまいました。
・ 何度も書きますが、本当に楽しかったです!!!またイベントご一緒させてください!!!

 本当に?と思えるほど喜んでもらっている方で一色でプロデューサー冥利に尽きる内容です (号泣しました)。ただ、一人で企画してはいるものの、多くのみなさん、最後はお客さまにも手伝ってもらい、長距離マラソンで倒れながらゴールするような状態でした。頼りなくて申し訳ない。けど、全身全霊を投入したのは間違いなかったです。

企画設計における考え方

 さて、それではこの企画の企画が実行までのことについて話します。まず、概要ですが、企画は2011年10月くらいから考えていました。実際の期日を確定し募集した期間はおよそ20日。TechWave.jp上の記事とバナーのみの告知に始まり、後日Facebookイベントページでも招待をしていきました。

 イベント参加表明と実際の参加者は、これまで(2011年で十数回のイベントを実施)の経験から、maskinプロデュースの場合「参加表明(100):実際の参加者(85から75)」という比率をキープしていました。最近はFacebook国内浸透&イベント多発に伴い参加率は減少していますが、本イベントの設計は「1000人を目標値」としておよそ75%の参加率で設計しました。

 結果としてはイベントページへの参加登録は1360人。実際の来場者がおよそ1000人で来場率は73.5%でした。誤差どころかドンピシャの数字で、スポンサーの方や出展者の方などはかなり驚かれていましたが、かなり綿密な計算をしており、会期中もTechWave上の開催情報記事やFacebookページを数十分ごとに更新するなどのマネジメントをした上での数字です。


 この1000人という目標値については、市場から計算した結果ではなく、「日本初のIT博覧会」でかつ自分一人で運営してマネージできるその時点でのMAX値と考え設定しました。この数字をクリアするために、企画や会場、運営方法などを決定していったんです。

 次に「日本初のIT博覧会」とはどうあるべきか?をどのように考えたかという点です。まず、「記事を読むだけ」「大スクリーンでプレゼンするだけ」しかないサービス紹介の流れを打破したかった。作る側の視点からすると、せっかく作っても利用者の声を得るにはソーシャルメディアくらいしかない状態。ピッチ(投資家向けプレゼン)をするのもいいですが、投資家にPRする前に利用者に反応を得るべきじゃないか。

 と思い、徹底的に利用者に対しサービスをプレゼンできる場を考えました。これは2011年7月に浅草花やしきで開催した「花テック」でも同じことを考えています。

情報密度を高める場づくり

 実際は出展者に4人がけのミーティングテーブルを1つ提供し、そこをブースとして演出してもらい、流れくる来場者に対しサービスの紹介をするというものです。今回は過半数が新サービスで、事前に情報がないものですから、基本的に前提知識がない人に対し紹介をしなければならないという状態です。プレゼンする中で、おそらく「あ、こうすれば理解してもらえるのか」「自分が思っていたよりイケてない」「ここが魅力になりそうだ」という発見が生まれるはず、と考えました。

 イベントにおける “情報” とは、人であり企業であり、サービスであり、そこで発生している出来事です。情報において最も重要視されるのが鮮度であり、アプリ博では前日まで出展社の情報を公開しませんでした。当日、出展者マップを配布したりしましたが、基本的にはどこに何があるかわからないドンキホーテ状態。会場をうねりながら、楽しそうなものを探し出し話を聴くという「貪欲な来場者」像を徹底して追求したんです。来場者は必死に話を聞こうとするので、出展者は大変だったと思います。


 それと、もう一方で「アプリ開発者同士の横のつながりの創出」することを強くイメージしました。なぜかというと、アプリ開発者は2~3人くらいの少数チームがほとんどで、かつ業界人同志で交流する機会が皆無に等しい状態だからです。「日本初のIT博覧会」としての成功は、このイベントにより産業が活性化することですから、業界同志の交流も大切だったのです。結果としてほぼ全ての出展者から「業務提供など何らかのプラスになった」とフィードバックを頂いています。意外なこととしては、「互いにアドバイスしあった」という意見が多かったことです。アプリ博出展者だけの非公開グループがあるのですが、イベントが終了している現在も交流が行なわれています。

 それと、私のイベントについての考え方を説明しておきます。まず、私はTechWave.jpというオンラインメディアもソーシャルメディアやウェブサービスも、そしてリアルのイベントも同じ土俵のものと考えています。実際は、TechWave上の記事で特定のテーマにフォーカスし、ソーシャルメディアなどを介して読者と交流。その流れでイベントを企画しリアルでその “市場観” を具現化します。リアルイベントの賑わいはTechWaveブランドへ還元するものとしてかなり力を入れます。この連鎖を継続することで「TechWaveというオンライメディア」←→「リアル(実業、実生活)の世界」との関係を密接的にすることでコミュニティとして形成したいわけです。

 また、私のイベントは一定の規模(50-150人、もしくは300人~1000人)があるのも特徴です。よく、人数が少なく1対1で時間をかけて話ができるコミュニティのことを「情報が濃い」と定義されますが、それは個人個人において深く議論できると意味であり、私が考える「情報が濃い」とは違うんです。人と人がゆきかう機会が多数存在し、情報が情報を生むということこそが「情報が濃い」コミュニティ空間になると思います。

 例えば、アプリ開発者が10人集まって議論するのと、ユーザーと出展者が多数いるアプリ博に出展するのとでは情報の密度は圧倒的な差があります。つまり対話が多次元的に重なるほうが情報が濃いと定義しているわけです。もちろん少ない人数のコミュニティなりの利点はあるのですが、情報収集としての密度としては大人数&多次元の場を徹底して考えているというわけです。

妥協なき情熱の先

 最後になりますが、「一人で企画する」ということについて説明します。基本的に私maskinプロデュースの企画は、一人で密室に籠るように考えています。理由はイベントの鮮度や独自性を重視するからです。交渉事も印刷物も全部自分で制作(これは特殊かもしれないですね)するし、「普通はこうやるでしょ」と思われることも打破して挑みます。会場もボランティアスタッフもその都度招集させてもらっています。当然、チームや組織のほうがやれることは増えますが、合議制にすると確認作業やら意見のすりあわせに時間が取られスピード感が失なわれ、無茶な企画は実現できなくなります。

 これを打破するには、「アップルのデザイン」を読むと解るように、独自性や非常識なこだわりを実行するにはジョブズ氏のような強力なリーダーシップが必要です。ただ、そういう組織を構築するのには時間がかかるので、メディアと連携し鮮度を保つイベントを立ち上げるには不向きなんです。(もちろん、長期的に運営するNPOや自治会とのやり方とは違います) だから全責任を一人で持ち、その代わり徹底的に考え抜く。

 イベント開催までの2週間は、集中して準備にあたります。関係者はジャムセッションのように集い、集中してすりあわせをします。もちろん問題は多数浮上するのですが、あえて短期間に集中することで、1点への収束力が高まる効果が生まれます。イベント開催中もその流れを失なわず、全員でダッシュする感じです。ご協力いただいた方々にはヒヤヒヤさせてしまうと思うのですが、実は関係者が会期中に談笑するようなユルい状態は来場者の不満足に直結するので、成功に向かって全員で疾走した方が結果が伴いやすいのでそれを避けたいという考えがありました。

感謝のバトンリレー

 maskinプロデュースイベントの特徴として、もう一つ、運営スタッフの都度招集というスタイルがあります。基本的に毎回同じ方が手伝うのではなく、 “イベントに共感した参加者が、「楽しかったんで次はスタッフやります」”といって下さる方がとても多く、その方を中心に集めていくんです。

 これはプロデューサーとしては「次はもっと面白いものを」という励みになるし、こうしてこのイベントコミュニティの価値が引き継がれているライフサイクルこそが宝のように思えます。


 全身全霊で挑む。それでもプロデューサー一人の力は未熟で不十分ですが、こうして共感しくれる人達に支えてもらいながら、コミュニティは未来に向けて成熟していくのだと感じます。基本的に無茶なことばかり考えますが、未来は必ずともなってくると考えています。そんな私の活動につきあってくださった全ての関係者に心から感謝すると共に、次世代へ向けここに記録します。

【関連URL】
・夢のような空間・・「アプリ博2012」は平日にもかかわらず1000人が来場&大盛況 【増田(@maskin)真樹】 : TechWave
http://techwave.jp/archives/51731006.html
・アプリ博2012レポートまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2132979381483764801
・大盛況のアプリ博で見つけたおもしろアプリ「U-NOTE」#apphaku【湯川】
http://techwave.jp/archives/51730103.html
・未発表アプリ目白押し!!→「アプリ博」出展アプリ全リスト&会場マップ 公開
http://techwave.jp/archives/51729910.html
・日本IT業界の進歩と調和~「アプリ博2012」に行こう!
http://techwave.jp/archives/51728969.html

蛇足:僕はこう思ったッス
2011年は1月から沢山のイベントを実施しのべ1000人くらいの人に参加して頂きました。とにかく多種多様なイベントを実施する考えでやり、成功したものもあれば、失敗したものもあります。基本的にはこれまでに無い企画にチャレンジしてきたので、設計が不十分だったことが原因となることもありますが、これは次に活用できると考えて運営しています。一番よくないのは、全員参加で作ってないイベント。イベントは一回やれば終わりではなく、その前もその後も続くコミュニティとして形成されるものなので「おまかせ」や「とりあえずやっとく」的なものは、集まる人も散漫になり、運営もホスピタリティ(もてなしなど)に欠如したものになりがちです。ウェブメディアもサービスもイベントも接客業なんですよね。人の流れから印刷物、椅子や机の配置まで人にかかわるところを徹底的に追求し、参加者全員が情熱を持って盛り上げていく成果を提供することで、人との関係を豊かにできると思います。それがクリエイティビティなんだと思うんです。

(補足) TechWaveは3人の分業制で、それぞれのイベントに協力しオンラインメディアとしてTechWave一つに共同で展開するものの、イベントそのものでは単独で企画運営しています。僕の一連の活動も増えまくっているので、後日「maskin Produce」というページを設けまとめていきたいと思います。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。大手携帯キャリア公式ニュースサイト編集デスク。TechWaveでは創出支援に注力。
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