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空前のスタートアップブーム。「大きく賭けろ」という人が沢山いて、それに呼応するように自信満々に俺スゴイとプレゼンする人がいる。で、どんなサービス? と聞いてみると、まだ何もなかったりするケースも多い。本当に成長を続けている人は、大口を叩き大きな賭けをしている人ばかりかと言うとNOだ。
例えば、「ビバリーヒルズ・コップ2 」「リーサル・ウェポン4」、スピルバーグの「A.I.」、「9デイズ」など人気映画や「マダガスカル2」などのアニメ映画の吹替えにも出演する米大物コメディアンのクリス・ロック氏。写真を見ると顔は知っているという人も多いだろう。北米HBOチャネルに番組を持ち、トップコメディアンとして誰も疑わない彼が、講演前に自宅近くの小さなステージで数百回も “スべ” ってばかりのネタを披露するのだという。
小さく、そしてリアルに挑戦し続けること、そこで失敗は学習となる
こんな大物がどんなショーを披露するのかと思えば、ほとんどのネタがスべってばかりで、数十人しかいない会場から失笑を買うのだという。ただ、クリス・ロック氏は、メモ帳に観客の反応を記録し、そこから稀に生まれる超ウケネタを発掘するのだそうだ。
4月5日に日経BPから発刊される「小さく賭けろ!」の冒頭を飾るこのエピソードは、大股でダッシュできないほとんどの起業家志望者に勇気を与えると思う。
本書には、GoogleやAmazon、HPなど巨大企業、急成長企業がいかに小さく賭けてきたかの事例が紹介されている。そう、彼らは今のスタートアップが描く「世界でNo1の○○」みたいな企画書なんて持っていなかった。ちょっとした技術とプロダクトを持ち、走りながら活路を見い出していったのだ。そんな「小さな賭け」とは何か、本書では以下のように定義している。
「小さな賭け」の原則
実験する
素早く行動して失敗して教訓を得る。プロトタイプから洞察を深める。
遊ぶ
創造的なアイディアを、焦りによる窒息させない。
没頭する
全身で踏み込み、世界がどのように動いているか深いレベルで理解する。
明確化する
洞察を利用して問題を再定義する。
出直す
より大きな問題を発見するためには、柔軟でないといけない。あらゆる機会を利用すべき。
繰り返す
何度も何度も繰り返すうちに経験、知識、洞察が得られる。
このような原則を見ていると、机上の空論という言葉がふと頭に浮かぶ。どれもこれも企画書レベルでは実現できないことばかり。これらのプロセスは、あらゆる事業に適用できるし、また、どのような業種業界でもこれらの要素を取り入れることでチャンスを得られる可能性がある。というよりは個人的にはこれこそが仕事の本質ではないかと思ったりする。
セクショナリズム、閣僚化、社内規則などなど、いかにも企業っぽいキーワードと本書の発想とはかけ離れているではないか。
クリス・ロック氏のやり方は、ITスタートアップでも弁当屋でも、学校でも通用する話だ。お客さまから従業員まで関係者をより多く巻き込み、話を聞き、現場を体験し、試行錯誤をすることで全ての失敗が「成果」に変わるようになる。
本書が示すのは「小さな勝利の循環」。辛いことが沢山あっても、小さな勝利をつかむ手法がわかっていれば、いずれ突破口は開けるはずだ。だから、この本を、成長や革新性に悩む全ての事業者やスタートアップに読んでもらいたいと思う。
【関連URL】
・ピーター・シムズ の 小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822248968
何がいけないのか、どこが悪いのかを伝えてもらえず、表現方法からプロット、全てを11回方向転換して、ようやくOKしてもらったが、到底満足して書上げたという状態ではない。
ところが後日、読者満足度で断トツのトップだという話を聞いたのだ。ここで思ったのは、ギリギリの状態でチームで戦うことの強さ、そして走りながら得られるものの力の偉大さだった。よくわからず走り続けることで、確実に求める所へと前進していく、それは頭で考えることよりも大きな成果を得られるということがわかった。
失敗は学習。ここで得た経験則は現在も続いているし、自分が主宰するイベントや記事、サービス開発、企画立案でもかならず入れている。「当事者を巻き込む仕組みを作り、小さく賭け続けろ」というのが僕のモットーである。この書籍を日経BP 中川ヒロミさんより献本いただき、勇気付けられながら読んでいった。この記事でも書いた通り、スタートアップの成長には大局を見る冷静さと、延々と自分の理想を堀り続ける実行力があると思う。
ただ、この本が語ろうとしている世界観は伝えるのがとても難しい。エピソードは小粒の(広義の)スタートアップが何も無い状態から立ち上がろうとするプロセスが書かれ勇気付けられると思う。ただ、それらを結ぶのが何かが見えにくい。編集された中川さんの苦労が見える。
ギリギリの状態で雑誌の特集を校了させたというエピソードは、ゴールが見えないが、チームの誰もが活路を見い出そうとプロトタイプどころか生原稿の再執筆&再デザインの中で、小さな仮説を立てチャンスを見い出そうとした結果どうなったかという話。
つまり、この本はハウツー本のように「こうすれば、こうなる」ではなく、一つの世界観を提示するためのもののように思える。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 DJ、emacs使い。大手携帯キャリア公式ニュースサイト編集デスク。TechWaveでは各種イベント、創出支援、スタートアップ支援に注力。メール等お待ちしております! (宇都宮市在住)