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いまこそウミガメ起業の時。時代の渦に飛び込め (大阪での講演会を終えて)【加藤順彦】

[読了時間:2分]

在阪の9団体・企業の共催で4月17日に開催され、大反響を呼んだ加藤順彦氏講演会。その講演会で感じたこと、言いたかったことを、加藤順彦氏自らがまとめて寄稿していただきました。(湯川鶴章)

 去る4月17日、大阪駅前第三ビル17階の会議室にてTechwave大阪さんが中心になりウミガメについての講演会を開催してくださいました。(関連記事:今日本に必要なのはウミガメのロールモデル 加藤順彦氏講演会レポート【服部丈】

 3000円の有料講演会にもかかわらず、共催各社様のご協力のお陰もあって、なんと200人もの皆様にご来場いただき、たいへん感激しました。冥利であります。

 体調管理に気をつけていたことも奏功し、当日は何かが乗り移ったかのように、よどみなく、喋れました。お伝えしなくてはならないこともちゃんと網羅的に分かりやすくお話しできたかと思います。清清しく自己満足しています。

 失敗続きの…僕の半生のお話しをさせていただきました。

 思えば、奇をてらうことばかりに挑むトリッキーなベンチャーだったと思います。そんな僕はバブルに端を発した学生企業のブーム(80年代後半)も、ダイヤルQ2の社会現象(90年)も、ツーショットダイヤル市場の爆発(90年代前半)も、ISPやネットビジネス塑像乱造&ビットバレー(90年代後半)も、iモード現象+新規IPOブーム=大公開時代(00年代前半)も、その渦の中にいました。

 いや、生きていく中で少しずつ次の波の予兆を見出すこと、これから渦が出来そうなとこを見つけることに長けていて、なんとなく見つかるたびに反射的に飛び込んでいたのかもしれません。

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 2006年1月16日。 たかぽん 堀江貴文さんが逮捕されました。


 これが引き金となって、ネット銘柄の株価は総崩れになりました。

 楽天やヤフーなど軽症でも株価は一年で三分の一程度に、GMOなど、まともな経営状況の会社でも十分の一程度、酷いところは百分の一まで株価が下落し、信用が収縮しました。

 そして、各社の広告宣伝費はあっという間に、極限まで切り詰められました。

 それだけではありません。NIKKOの主要なお得意先であった

・消費者金融各社に対するグレーゾーン金利是正?による過払い金利の返還決定 や
・新興マンションデベロッパー各社への姉歯ショックを契機とした、建築確認期間の延長、
・短期業務請負業者の度重なる業務停止命令と社会的粛清による破綻
・出会い系各社に対する別件タイーホや、厳しすぎる徴税による店じまい、  

が相次ぎました。

 政官財の偉い人たちによるルール変更や、マスコミによる「社会悪」的なバッシングの数々・・・。

 僕は、僕の会社NIKKOは、まさに上記の業種をお得意先としていました。
 それらが一斉に広告している場合ではなくなってしまいました。

 仕事上のライバルに負けたというのなら、くやしくてもまだあきらめがつきます。
しかし、この売上げの下落は、競合との競争に負けたのではなく、外部要因による市場消滅が原因でした。
ベンチャー潰し、官製不況ではないか、とも思いました。
  (関連記事:若者よ、アジアのウミガメとなれ

 翌2007年になって、僕は…この圧倒的な負け戦を俯瞰して観ざるを得ないところまで追い込まれていました。そしてようやく、日本をとりまく市場縮小という椅子の減る椅子取りゲームの不戦敗の対象が…若く新しい起業家・新興企業であることを悟ったのです。

 しかし気付くのが遅すぎた。そして僕は、愛する会社を手離しました。僕は経営者として負けたのです。

 僕は今回の大阪の講演会で、この「喪ったもの」「経営者としての敗北」を通じて、いかに向かい風にあったとき、市井の者の営みは脆く儚いものなのか、いかに成長の追い風を掴むことが大事なのか、を特に伝えたかったのです。

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 僕は、新しい「市場・内需」という名の椅子が猛烈に増えていく…椅子取りゲームがアジアで始まっていることを知ったのは、その少し前でした。

 次の大きく新しい渦が、日本ではなくアジアで起きることに気付いたのです。

 いまこそ、ウミガメ起業の時です。

 時代の渦の中に飛び込んで、成長の追い風を掴んでください。僕はもう飛び込んでいますよ。

 そして、中国におけるジャック・マーやロビン・リーのように、皆さんに、日本の新しい希望になるべく、自らを高める挑戦を始めてほしいのです。

著者プロフィール: 加藤順彦

大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に(株)リョーマ、(株)ダイヤルキューネットワークの設立に参画。(株)徳間インテリジェンスネットワークを経て1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、同社のGMOインターネットグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住 / 2010年永住権取得。移住前は個人エンジェルとして、日本国内の30社超のスタートアップベンチャーの第三者割当増資に応じるとともにハンズオン支援してきた(うち8社はその後上場)。現在もシンガポールにて日本人起業家への投資&支援を行っている。主な投資支援先はアパレルのsatisfaction guaranteed 、Skype英会話のラングリッチ、プレスリリースサービス@press/サービスオフィスCROSSCOOPのソーシャルワイヤー、千秋育子デザインをプロモートするMariposa、アジア進出支援コンサルのパンアジアパートナーズ等。関西学院大学商学部非常勤講師 。
蛇足:オレはこう思う

 加藤さん自らがその半生を振り返った記事「若者よ、アジアのウミガメとなれ」【加藤順彦ポール】はTwitterで2600回以上も拡散されるなど、大変な人気の記事となりました。この記事に感銘を受けたというお話もあちらこちらで聞きます。記事もすばらしいのですが、実際の加藤さんの講演は聞くものの魂を揺さぶります。ぜひ日本各地で講演会を開いてもらいたいと思います。
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