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中国では海外に進出して成功し、そこで得た知識・経験などで故郷に貢献する人物を「ウミガメ(海亀/海帰)」と呼びます。今回は大阪のウミガメ代表ともいえるお二方をお招きし、アツい話を聞かせていただきました。
まず壇上に上がったのはTechwave編集長・湯川鶴章。「21世紀にインドがシリコンバレーを超えると断言する根拠」と題した講演は、インド滞在で得たヒントからスタートしました。最先端のテクノロジーと貧民街が混在する状況を目にし「アーリーアダプターよりも、ガジェットで社会を変えることを目指している」「インドで流行したものが、アフリカや周辺アジアへと移っていく(市場メカニズムが一緒)」と注目。「インドはITプラスαで成功し、そのソリューションをアフリカへ持っていって成功。ユーザー数で世界のデファクトスタンダードへ」と成長し「インドは世界を獲る」と仮説をぶち上げました。
その鍵を握るのがモバイル。携帯電話ユーザーが7億8000万人という巨大市場で低コストでコンテンツ開発・加工も可能です。さらに段階的な成長を遂げた先進国とは違い「ITを使って三段跳び」(湯川)するインドは、モバイルバンキングなど新しい市場が開拓されています。「遅れてきた人が先を行く、というのはITではよくある話」という説明には納得ですね。
最後は「ITは先進国の新しい物好きのためだけにあるんじゃない」「これまでのやり方では解決できなかった社会の問題を解決するために、ITを使うべき」とTechWaveのミッションにも通じる提言。LINEやweixnなどFacebookの次の覇権を握るwebサービスなど最新の話題をピックアップしながらも、スケールの大きな話に聴衆は耳を澄ませました。
続いては現在、シンガポールで日本企業へ投資や支援を行う加藤順彦氏がステージへと上がりました。冒頭から「(日本は)閉塞感が最大の問題。海外で成功した企業を作ることにコミットしている」と語ると会場のボルテージも次第に上がっていきます。
学生時代から商売を始め、起業家として道を歩んできた加藤氏にとってベンチャー企業の成功の秘訣は「イノベーションのジレンマを仕掛ける。隙間を突く」。ネット広告の代理店として、2000年代の好景気をリードした経験を「大手はマーケットが小さすぎて参入できない。自分が優秀だったというより、IT広告産業自体が成長した。成長の波に乗ることが、いかに大事かを身をもって知った」と振り返ります。
ところが2006年にはライブドアショックを引き金に、取引先であったベンチャー企業が次々に深刻な信用収縮、経営不振に。「戦いに敗れて利益が半分になったのではない。官製不況ではないか」とやるせなさを感じた。「内需縮小の断末魔。成長というのはイス取りゲームのイスが増えることだと思っているけど、日本の場合はプレイヤーを間引きした。既得権を持つ人が、新しいイノベーションを阻んだ」。
そんな時に加藤さんが出会ったのが、米国で活躍するアジアの起業家たちでした。日本では起業家が非難の的となっていた時代に、立ち寄った上海ではアリババのジャック・マー社長らがヒーローとして尊敬され、評伝や自伝は本屋に山積み。「これは勝てるわけがない。このままだと日本は滅びる」。そんな危機感から今後の消費が期待できるアジアに視線が向くようになりました。
現在はシンガポールで奮闘中の加藤さんは「シンガポールの魅力は税率の低さだけではない」と力説する。成り立ちの背景や現在の状況を数字を交えながら的確に説明し「世界中に門戸を開いて、優秀な人材を集めている。さらに東南アジアの物流のハブとしても機能し、世界中の銀行家が集まっている。企業に必要なヒト・モノ・カネの全部がそろっている」と利点を強調した。
日本人として海外で起業し、成功を収めるというロールモデルを作り上げる。それが今、加藤さんがコミットしていることです。そのためにシンガポールでsatisfaction garanteedやLangrichといった企業と一緒に汗をかき、働いているとのことです。「日本では外資と戦うことはない。だから勝ち方を知らない」と日本を出て勝負する意義を話しもしますが「本当の自由競争。だから勝てる人しか勝てない」と厳しさも指摘します。その上で「グレーゾーンを狙うことはできる。しかし、新潮流の勃興に合わせることは狙うことはできない。イス取りゲームに参加しないと、イスに座ることができない」と力をこめました。最後は「俺が(ロールモデルに)なってやるという人が、一人でも出てくれれば成功だと思っています」と締めくくると会場には万雷の拍手が鳴り響いた。
最後には学生からの質問に回答「視座は人間を変える。(自分を)大阪人じゃなく、アジア人だと思ってほしい。そうすれば市場もつながって見えるはず」とエール。アフターパーティーも大盛り上がりでお開きとなり、大阪の熱すぎる一夜は幕を閉じました。
湯川さん、加藤さん、本当にありがとうございました!
1981年、静岡県生まれ。2005年4月に大学卒業後、スポーツ新聞社で記者として取材活動に従事。2011年9月から株式会社TAMに加わり、ソーシャルメディアチームの一員としてクライアントのFacebookページ運営や、アプリ開発を担当。TechWave塾大阪 第3期生。
9団体・企業が集客に力を合わせたこともあって来場者はボランティアスタッフを合わせると200人を超えた。「大阪でこれだけ人が集まった講演会を見たことがない」という人がいたが、熱気あふれるイベントとなった。
共催していただいたのは、
Web CAT Studio(株式会社リクルートエージェント)
株式会社エイブルワーク
関西若手の会
株式会社アントレプレナーファクトリー(WestBooster)
ウズウズ(Wisdom Sharing Work Shop)
ChatWork(株式会社 EC Studio)
STARTUP KANSAI
起業成功塾(株式会社FirstStep)。
本当にありがとうございました。
僕自身、加藤さんのお話を聞くのは3度目だし、過去の講演の音声起こしをしたぐらいだから、内容は熟知している。それでも一向に退屈に感じない。演壇から発信するエネルギーのようなものを、人は受け取る能力があるように思う。電波のようなものかもしれない。それによって心が震える。会場全体が共振するように感じる。そして心が共振したあとは、非常に晴れ晴れとした感覚になる。
これがネットでは味わえない、リアルイベントの醍醐味だと思う。
加藤さんが精一杯生きてきたこれまでの半生によって蓄積された生命エネルギーが発信され、それによって心が共振し、心の駒の回転速度が増した・・・。イメージで言うとそんな感じがする。