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ネット選挙解禁不要?論【湯川】

[読了時間:2分]
カネがなくてもソーシャルのつながりと熱意で選挙は勝てる 出馬決意からわずか10日で当選した横田いたる氏のケース【湯川】という記事が、Facebook上の「いいね!」を1000件以上獲得した。この選挙戦を取材し執筆しながら思ったんだけど、ネット選挙を解禁する必要はないんじゃないだろうか。まだこれが自分の考えだと主張できるほど自分の中で十分に理論武装できてないんだけど、漠然とした感想の状態でネットにアップすることで、フィードバックもらって、もう少し考えを先に進めたいと思う。

 いやもちろん解禁されるのならそれに越したことはないんだけど、選挙制度改革にかける労力を考えれば、そんなことをしなくても今でもネットの恩恵を十分に活用できると思う。

 今回横田さんが当選した丹波市議選挙において横田さんとその仲間たちのネット利用で効果を発揮したと思えるのは次の2つ活動。


【横田さんの以前からのFacebook上での日々の活動】
 これが仲間を集める上で非常に効果があった。

 横田さんは行動力が半端なく実際にいろんな人に会いに行くのだが、一度会ったことのある人たちとの交流の維持や深化のツールとしてFacebookをうまく使っている。Facebookは友人関係の維持には非常に効果的。これはFacebookユーザーの多くが既に気づいている通り。これまでは一度会っただけの人とはその後会う機会がないとなかなか親交を深めることができなかったが、Facebookのおかげでより多くの友達とつながっていられるようになった。

 横田さんはまた、ほぼ毎日自分のやったことを「今日の横田」と題して日報のようにFacebook上でアップしている。なぜそんなことをするのか。これもソーシャルメディアをよく利用している人ならその効用はすぐに分かると思うが、こうすればチャンスが向こうからやってくる。自分がどんなことが得意で、何をしようとしていて、そのためにはどんな課題を抱えているのかを公開しておけば、それに合うようなオファーが寄せられるのものなのだ。

 こうしたFacebook上の活動を通じて、横田さんは仲間を増やし、すごいスピードで次々といろいろなプロジェクトを進めていった。横田さんは言う。「こんな人に会いたいな、こんなことをしたいな、と思ったことが全部実現するんです。ほんと奇跡のよう」。これは本当にそうで、僕も実感していることだし、横田さん以外にも同様のやり方で恩恵を受けている人を何人も知っている。ネットは「バカと暇人のもの」と一部で言われたが、今ネット上で最も大きな恩恵を受けているのは、実名で前向きに一生懸命生きる人だと思う。

 ここで大事なのは「前向き」というところ。人の悪口を言ったり、愚痴ったりすることが多い人は、極端につながるスピードが遅くなる。実名で発信しても横田さんのような「奇跡」など起こるとは思えない、と反論する人がいるが、そうした人は自分自身が悪口、愚痴を口にしているか、後ろ向きな人たちの空間に属していることが多い。最近のネットは、前向きな人たちの空間と、後ろ向きな人たちの空間との二極化が進んでいるように思う。前者に入らないと「奇跡」は起こらない。

【支持者、友人を集めたFacebookやLINE上の非公開のグループ】
 横田さんたちは、支持者をFacebook上やLINE上の非公開のグループに集めて情報を共有した。ここで「ポスターの印刷が公示日までに間に合わない」と投稿すれば、グループのメンバーの誰かが即日印刷の業者をネット上から探してきてくれた。「事務所にトイレがない」と投稿すれば、水道業者のメンバーが「工事現場に設置する簡易トイレを貸してあげることができるよ」と答えてくれた。「このグループのおかげで、いろいろな物、サービスが非常にスピーディかつ安価に手に入れることができた」と後援会長の前川さんは語っている。

 また他の陣営の動きや、人が集まる場所の情報なども非公開グループ上で共有され、効率的な街頭演説や選挙カー回りが実現した。

 ポイントを整理すると、①日頃から自分の考えや行動を公開し、仲間や支持者を増やす②選挙期間中は支持者の非公開グループを作りメンバー全員の知恵や情報を借りる、ということ。

 この2つがネットが、政治家だけでなく実名で前向きに生きるユーザーに与えることのできる最大のメリット。これは、ネット選挙が解禁されていない今でも有効である。

 ネット選挙解禁という概念は、主に選挙期間中にインターネットを使って有権者の注目を集め、名前を覚えてもらう、というようなネットの使い方を指していると思う。マスメディアを利用するのと同じ目的で、インターネットを利用しようという考え方だ。

 でもネットのマスメディア的利用にはネット選挙解禁を待たなければならないが、候補者と有権者がフラットな関係になって共に問題解決に向かうというソーシャルメディア的な使い方であれば、ネット解禁を待つ必要がない。公職選挙法に違反することなく、今でもネットの効果を最大限に引き出せる。

 そう考えると、ネット選挙が解禁される必要もないのではないだろうか。

 ネット選挙が解禁されて、ネットをマスメディア的にしか使えない候補者からは、ジャンクメールが多数寄せらるかもしれない。そう考えればネット選挙など解禁されなくてもいい。そんな風に思えてくる。

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