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「スマートホームは市場を変えない」 米トップ VC アンドリーセン・ホロウィッツ Benedict Evans氏が語る

世界に先駆けスマートスピーカーやスマートホームデバイスが加熱する米国。米トップVC(ヴェンチャーキャピタル)として知られるアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)のパートナー ベネディクト・エバンス(Benedict Evans)氏が2018年2月5日公開したブログ記事「野菜ピーラーとスマートホーム」が注目を浴びています。

かつて日本の戦後、冷蔵庫・洗濯機・テレビが「三種の神器」と呼ばれていたように、スマートホームデバイスやスマートスピーカーは誰もが買うプロダクトになるのか?という疑問に、同氏は「No」と答えます。「スマートホームデバイスがそこまで大きな課題を解決しているようには思えない」というのです。

人々はスマートなものは何でも買うわけではない

エバンス氏は、家庭におけるさまざまな課題を解決してきた電化製品と同じように、“スマート”な電化製品も低価格化などによって「普及する可能性がある」としながらも、「例えば日本の炊飯器が世界に普及しなかったように、世界で統一的に普及するデバイスなどはない」と話します。

現状のスマートホームデバイスは、野菜ピーラーがニンジンの皮を包丁でやるより断然早く剥けるように、家庭内におけるさまざまな小さな“摩擦”を取り除くための道筋を探している状態にあると彼はいいます。

スマートホームは広まらない

スマートスピーカーを含めたスマートホーム全体で、必要なのはどんな時にどんな処理を行えばそうした家庭内の小さな“摩擦”を理解することです。すでにスマートスピーカーを使っている人は「こんなことに対応すれば便利なのに」と思っているでしょう。

家庭内でできることを増やすために、より多くのスマートホームデバイスを家に設置すれば、解決できることも増えるのでは?と思う人もいるかもしれませんが、先進エリア米国ですらAlexa・Google Assistant・Apple Homekit・・などとプラットフォームも対応デバイスもばらばら。

エバンス氏は「Amazon Prime会員になる魅力であるとか、Apple製品をシリーズで購入するとか、一つ一つのプラットフォームだけに絞ってスマートホームも揃える上での魅力はあるあると思いますし、膨大なAIの学習には貢献するかもしれませんが、ネットワーク効果は狙えないし、そもそも、買ったばかりの冷蔵庫をスマートホームに対応させるために買い換えるほどの力はない」と話します。

確かに、と頷けるだけに、熱気に包まれるスマートホーム・スマートスピーカー・IoT・アシスタント界に波紋を呼びそうです。

【関連URL】
[ブログ記事] Smart homes and vegetable peelers | Benedict Evans
・[公式] Andreessen Horowitz – Software Is Eating the World

蛇足:僕はこう思ったッス
米国のスマートホームは何も今始まったことではなく、1990年代半ば頃にはCESでもApple対応のホームネットワーク機器などが注目されていた。自分も自宅の玄関とか熱帯魚とかをいわゆるスマートホームっぽくして遊んでいたことがある。DIYなら昔でもいくらでもやれたわけで、20年経ったいまでも状況は変わっていない。スマートスピーカーのVUI(声のインターフェイス)に可能性はあるとはいえ、スマートフォンのような強力なエコシステム醸造装置(パーソナルなデバイス/統一されたOSや世界規模のApp/コンテンツマーケットプレース)が始めから用意されていたわけではない。エバンス氏の言うとおり、産業としては仕様が統一されなければ、波及効果は期待できないし、買い換えや家庭内対応レベル向上を考えると限界があるのでは?という気がする。

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