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ユーザーを100倍増やす科学的マインドセットGrowthHack、 入門書の決定版「グロースハッカー」登場 [書評] 【@maskin】 #apphackl


[読了時間: 2分]

 アプリ開発者や事業者を対象としたTechWave主催イベント「アプリHackersラウンジ」が、いよいよ2013年12月11日(水)に、東京・渋谷マークシティ13F(サイバーエージェント)で開催される。

 本イベントの最大の特徴は、「開発効率」「品質」「生産性」を向上し、多様なリソース獲得やマーケティングなど多面的で総合的なアプリ事業の成長支援をするというもの。

 このイベントの考え方の根底には「グロースハック」(Growth Hack)という考え方が横たわっている。

 これまでのマーケティングは、「まずモノを作れ、あとはマーケターに任せよ」という具合に、開発製産とマーケティングのプロセスが分離されていた。

 しかし、グロースハック的に考えればそれは過去の遺産。製品そのものがマーケティングエンジンであり、ターゲットとする顧客にリーチするための永続的活動をすることこそが、高効率の成長へのつながるものとなるのである。

 そんなグロースハックを学ぶための本「グロースハッカー」が日経BPから出版される。著者はRyan Holiday氏。翻訳は佐藤由紀子 氏。解説にクックパッドでプレミアムサービスを統括する加藤恭輔 氏が名を連ねる。書店に並ぶのは2013年12月12日頃からだという。


12/11開催! グロースハッカーのためのイベント「アプリHackersラウンジ」









 この本はとてもシンプルな構成ながら、実に痛快だ。冒頭で、いきなり「マーケターがまず思いつくのは、グランドオープニング、派手な発表イベント、プレスリリース、マスコミ報道だ。まず広告費が必要だと考える。レッドカーペットやセレブを必要とするのだ」「非常にまずい」と一蹴。

 「短期間に可能な限り多数の顧客を獲得しなければならないと思い込んでいる」、さらに、「ブランドとインプレッションに基づく、推測ゲーム」とくる。

 刺激的ではあるが、この発想は低予算で突き抜けようとするITスタートアップにとってとても理にかなったものとなる。というのは、そんなギャンブルじみたことに手をつけて失敗すれば後がなくなるからだ。


予算ゼロで突き抜ける

 グロースハックの歴史をひもとけば、必ずといっていいほど1995年の米HotMailの事例にあたる。メールの末尾に「ホットメールで君も無料メールをゲットしよう」という一文を挿入したことで、爆発的なユーザー増加につながったのだ。

 一方で、数百ドル超の予算をかけた広告展開をして、米ネットバブル崩壊と共に消えていった企業のことも書かれている。本書では多数の事例を例に、グロースハッカー達へのインタビューで構成されている。

 本書ではグロースハッカーを、「データを信用し、ルールを無視する輩」による「インターネットツールを活用したマーケッティングモデル」と定義している。彼らは無から何かを作り出し、短期間で成長させていく。

 

ツールではなくてマインドセット

 グロースハッカーがやる仕事は、測定可能で効率的な方法で、いかに注目され、それを維持し、倍増させていくかということ。

 一見すると、ツールだけで解決してしまえそうだが、そうではない。本書では「ツールキットではなくマイドセット」という表現の仕方をしているが、グロースハック的マーケティングは、告知段階ではなくて、企画や開発段階からスタートしている。

 どこに誰を対象にするかを決め、フィードバックを受け、科学的に改善しながら開発やプロダクトそのもに、そのサイクルを組み込んでゆく。クチコミだって科学的に評価できる。

 マーケティングというと「認知を上げばいい」というのが日本のメインストリームだが、認知ではなくユーザーを獲得するが目的であり、それを科学的に実践するのがグロースハッカーだ。時には、ビラ配りが適切なこともあり、その場合だってグロースハックと言ってもいいわけだ。

 本書は、そうしたグロースハッカーの最前線のありようを知り得ることができる構成になっている。


クックパッド 加藤氏の解説が必読

 巻末に月間利用者数2000万人を誇るクックパッドで、有料サービスのグロースハックを統括する加藤恭輔氏の解説が非常に読み応えがある。

 メルマガのキャッチコピーだけで2倍のパフォーマンスを発揮する事例をあげ、机上の決断ではなく、利用者の反応を正確に測定し、検証しながら成長させていくことの重要性を示唆。特に無料のクーポンプレゼントが、年間で数千万円の利益を得るエピソードなどはとても興味深かった。

 加藤氏も「グロースハックに正解はない」という。サービス上で発生しているあらゆる自称を計測して、スピーディに吸収し対策を打つことこそがグロースハッカー然としたスタイルなのだろう。





全てのアプリ開発&運営事業者は参加必須!
アプリHackersラウンジ
無料チケットはこちら



【関連URL】

・[更新中] アプリの可能性を最大化する「アプリHackersラウンジ」開催は12月11日、無料チケット申し込み&出展受付け 【@maskin】
http://techwave.jp/archives/aph_lounge_2013winter_main.html

蛇足:僕はこう思ったッス
日経BPの敏腕編集者中川ヒロミさんいわく「これまで脚光をあびなかったような地味でギーグな方がグロースハッカーとよばれ、みんなが目指すようになってくれればいい」。僕も同感。これまでのマーケティングは、派手な展開、目立つ人を広告塔にグイグイ押してきたが、実際の成長は小さなグロースハッカー達の努力によって積み上げられていく。そして、今、環境として彼らの力が最大限に発揮される時代がやってきた。

本書は技術者よりのアプローチではあるが、先日のコロプラ 長谷部氏のような立場の人がアプリのKPIを考えるといったこともグロースハックマインドの一部であると思う。コードをある程度理解するような、マルチタレントのグロースハッカーで編成されたチームこそが、これからのマーケターとなるのではないかと感じる。

あと、これは本当に蛇足だが、TechWaveを運営する上で、自分もグロースハック的な考え方を踏襲している。予算はゼロ。その中で新しい流れを生み出し、時には何千人という人を集めるイベントもやる。ただ目立ち、PVがあがればいいとは思ってもおらず、むしろ一人で運営している今は「グロースしないハック」をやっているほど。残念ながら、それを理解してもらえず「成長してませんね」的な突っ込みを入れられることも多いのだけど、グロースハック的にはあまり不安になっていなかったりする。

著者プロフィール:TechWave 編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング → 海外技術&製品の発掘 & ローカライズ → 週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSのサービス立ち上げに関与。坂本龍一氏などが参加するグループブログ立ち上げなどを主導した。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。生んでは伝えるというスタイルで、イノベーターを現場目線で支援するコンセプト「BreakThroughTogether」でTechWaveをリボーン中 (詳しいプロフィールはこちら)

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