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位置ゲーにこだわり続けるコロプラ。
2012年10月度のAndroid世界ランキング入りを機に好調トレンド入り。2013年5月10日終値で 時価総額2350億円を突破。
記事執筆時点2013年12月6日(11時)での時価総額は、3420億円越えで、全市場で比較すると249位。ディー・エヌ・エーの時価総額(約3070億円)を越えている。
そんな、好数字の立役者、株式会社コロプラ 取締役最高戦略責任者(CSO)兼 経営企画部長 長谷部潤 氏は言う「時価総額はつくれる」と。
2013年12月4日、京都で開催されたInfinity Vernture Summitのセッション「ファイナンス、IPO 時ストーリー、その後の実際」の一幕からコロプラ長谷部氏のプレゼンテーションの一部をお届けする。
長谷部氏は2010年にコロプラに入社。当時、「上場は無理だろう」と思っていたとのこと。
「起業した以上、上場するという選択肢はあるわけで、では、どんな感じで市場と向きあっていけばいいのかといった話をしたいと思います。
まず自己紹介から始めたいと思います。1990年に大和証券に入って、それから10年、本当に苦しい時代でしたけれども2000年から大和総研に転籍してアナリストになりました。当時インターネットの黎明期であり、ミクシィさんや、ディー・エヌ・エーさんとは主幹事として上場前からお世話になりました
それからさらに10年。事業会社であるコロプラに移った次第です。
コロプラでは何をやっているのかというと「裏の仕事」を一手に引き受けています。
事業計画を作って、ゲームの中で出てくるKPIを分析するチームとチューニングしたり。広告出稿については、この業界の広告は数理統計の世界でもありますのでこちらのチームで見ています。
さらに位置ゲープラットフォームやらM&A、海外展開、法務、広報。おでかけ研究所という位置情報をビジネス化するチームや、ソーシャルゲームインフォの社長もやらせて頂いています。IRだけではないということを強調したいですね。
「どう考えても上場は無理」
「僕は、ライフログを趣味にしていまして、そんな中、位置情報を使ったコロプラという会社があるぞということで、2009年の冬にインタビューしたんです。
当時の売上は月に数千万円、スタッフは20~30人くらいだったですかね。小さい会社だなーという感じだったんですけど、副社長の千葉功太郎 氏からの誘いを受けコロプラに入社することになっちゃいました。
実際、転職した当時、上場する意思はあるとしても、自分の経験上、どう見ても上場は無理でしょうという感じでした。私自身も増資をしているのですが「返ってくるのかなー?」という気持ちでした。
途中から調子が良くなってきても、急激に業績が良くなるようなトレンドにはなっていない。IPOできたとしても、いって100億円かな、下手すると50億円くらいだろうなと思っていたのですが、上場の時は公募は236億円。初値が445億円とビックリしちゃったと。
今(12月4日)は3118億円と想像もしないような数字となったわけです。
実際のプロセスはどうかというと、主幹事は私の古巣の大和証券だったんですね。主幹事というのは上場のお手伝いをしてくれるところです。その人達とのやりとりは、ずっと進めているわけです。
2012年4月にその主幹事との証券引き受け審査があったわけです。これを担当する引受審査部と、これなら大丈夫とか、このエクイティストーリー()ならいけるよね、といった協議をします。ここで決まった内容で、上場の時の目論見書の元になるものとか、この会社はこういうセクターの会社で同業他社はこのようなものですということを決めるわけです。同業他者のバリエーションを評価することが上場する際は大変重要なのですね。
ところが、大和証券さんにいくら言っても「SAPさんですよね?」と言われてしまい、わかってもらうのが大変でした。この理解があるかどうかで決まってしまいます。この上場時に決まったバリエーションが、後々まで引っ張られてしまうんです。この時点で上場後の状況も決まってしまいますから、かなり気をつけました。
数字をスパイスとして使う
「こうしたIRとは、フレンチでいうサービスを提供する立場であるということです。
要はエンジニア=シェフが作ってくれたアプリ、もしくはエンジニアさんが発揮しうる能力から推察できる料理の皿。これをどういう順番で、どういうタイミングで持っていって、さらにはお客さまはこういうお皿を望んでいるので、次のお皿にはこういうメニューを載せていきましょうということをIR側がイニシアチブを取っていかないと、企業の評価にはつながらないのです。
最初に、どういう風なメニューを作るのかということを内々で考えるのです。大切なのは、ボトムアップ。
どうしても「うちの会社はどーです、こーです、すごいでしょ」となりがちなのですが、日本や世界の状況はこうで、故に今我々がいる業界はこうで、業界はこう変化しようとしている中、我が社はこのように進めようとしているんです、といった流れでまとめます。
そこには必ず、数字をスパイスとして使って下さい。例えば、このような形です。
具体的な数字を入れ、かつその数字から何を与えられるのか、ざっくとした明るい未来を示せるということですね。
なぜこのようなことを強調するかというと、ご存知の通り時価総額というのは利益とPR、バリエーションを掛けあわせたものです。利益は数字が出てますしいじりようがないのですが、PRというのはいわば妄想が入ってくるもので、ここをどうふくらますかが重要になってくるわけです。
現実的な数字、利益はクリアに綺麗にロジカルに説明しつつ、夢については互いに共有できる話にする。
大切なのは料理の順番
コロプラの場合は、上場前からお皿を出す順番を考えていました。まずIPOの時は、スマホの売上比率の高さを強調しました。そうすることで、おいしくお皿をめしあがっていただけるのかなと思ったわけです。
第二四半期くらいには、ネイティブかウェブかという議論が出てくるかと思っていましたので、そういった話をして、期末くらいには、弊社は多数のアプリをリリースしていてヒットしているので、その流れを順番に説明していこうと思いました。
IPO時は「スマホの売上比率」を強調する戦略を取りましたが、その際、使用した数字は当時日本では30%前後と言われていたスマホの普及率です。まあ、これから伸びるよねというのはグラフを見ればわかるけど、それでは弱い。
そこで重要なのが過去の事例をもってくることですね。私はブロードバンドが普及した時期の推移を重ね、「あの頃はそうだったね」と機関投資家の方に理解を深めてもらいました。そこで、弊社のスマホの売上比率は80%を越えています。スマホ市場が成長すれば伸びるんですという表現でお皿をめしあがっていただく。
ここで重要なのは、おいしく食べているところに、次の皿をもっていかないというところです。「楽しませてもらってるよー」と言われたら「がんばったんですー」と第二四半期まで引っ張っていく。大変満足してもらい株価も上がり、その期終わりました。
二枚目のお皿である第二四半期は「ネイティブアプリ」です。これまで株式市場の定義は「ストアに出しているものがネイティブ」でした。語りまくって、こちらが当店自慢のネイティブでございます。口の中でとろけるようなヌルヌルとした操作感を実現することができますと説明して「そりゃすごい」という反応を得ることができました。
結局、第二四半期では、他にはできないスペシャリティをやることで、株価の方も反応していく。
大切なのは、ここでなければこの料理は食べられないということを徐々に思わせていって欲しいんです。初めての店でいきなりおいしいなんてわからないんです。だから、いきなり「うちの会社はすごいんです」とアピールしてもダメなんです。なぜなら、初めての店と同じ会社だからです。
だから、スマホが成長することを強調。市場が伸びることは機関投資家はそれは理解できますから、僕達がすごいんじゃないんです、スマホがすごいんです。そこに乗っているということを、最初のお皿で示します。
二つ目の皿で、ネイティブはすごいんだけど、それをやれるのはあまりないんですよということを示し、やっとここで自社の話をちょっと盛り込む形にします。
三つ目の皿で、直近の説明会では沢山あるアプリのポートフォリオを示しました。一杯アプリがあるんです。これは戦略的に有機的に配置しているんです。これは独自の戦略ですから、ここで初めて自社の優位性を説明していきます。
最初は自社だけの個別のアピールの話をしがちですが、市場の話を進めながら徐々にボトムアップしていって、一年計画くらいIRをまとめていくのが重要かなと思っています」。
ホールのテーブル配置図にも気をくばる
「では、来店してくれるお客様ってどんな人という話、ホールテーブル配置図についてお話します。
まずは、セルサイド(売買の仲介者)の人達。いわゆる証券会社です、株の仲介をする人たちです。その中にアナリストという人がいます。
あとは、バイサイドという株主、売買を依頼する人たちがいます。証券会社を通じて注文するわけですけど、国内にいる国内系と外資、それから海外に住んでいる投資家さんがいます。こちらにもアナリストがいるんですが、ファンドマネージャーに報告するのみで、外部に発信することはありません。
ただお客様の力関係を理解しないと料理をサーブする時に困るわけですね。
セルサイドを中心に話をすると、株を買ってくれる側とのミーティングを定期的に(四半期で1~2回)実施します。次にバイサイドの人は社内レポートやミーティングという形でファンドマネージャーに伝えます。
ファンドマネージャーは売り買いの判断をする偉い立場にあり、セルサイドのアナリストが気に入られるといいですが、雲の上の存在のような人で、ミーティングすらなかな設けてもらえない。
これが、アナリストランキングやブローカレジポイントという形でフィードバックされ給与などに影響される。一方のセルサイドアナリストの強みは、マスメディアはセル側に取材するため、投資家にも影響を及ぼす点にあります。
レストラン規模と格については、上場すると時価総額を意識しますので、その意味について説明します。まず、時価総額100億円未満では売買の主体は個人主体。セルサイドはいない辛い状況。
100億~500億円になってくると中小型ファンドが参加し、動きもあっておいしい。
500億~1000億円になってくると中小型ファンドに加え一般的なファンドが参加してきます。
インターネット業界の時価総額は、500億までに銘柄があって、1000億超にも銘柄がある。なのに500~1000億円が割とないんです。なぜかというと500億を超えるとこういった人達が入ってきてしまいますので、一気に1000億超えを狙うんです。
1000億を超えると外国勢なども参加、カバレッジが開始され、3000億を超えるとカバレッジが多数になっていくのです。
結論として私が申しあげたいのは、一つです。「時価総額はつくれます」ということです。
優秀なシェフもいて、お店の立地もいい。それを活かして、レストランの価値を最大かするのはサーブ(給仕)です。IRをさぼっていると、時価総額はマイナスのほうに作られてしまい、しっかりやっているとプラスのほうに作ることもできるのです」(株式会社コロプラ 取締役最高戦略責任者(CSO)兼 経営企画部長 長谷部潤 氏)
アプリHackersラウンジ12/11開催、無料チケットはこちら
【関連URL】
・【書き起こし】コロプラ・GMO・スタートトゥデイの財務トップが語った「IPOストーリー、その後のIRの実際」
http://u-note.me/note/47487225
・コロプラが時価総額2350億円突破、5月10日終値 【増田 @maskin】 | TechWave
http://techwave.jp/archives/colopl_20130510.html
・世界アプリ市場 日本・韓国牽引でGoogle Playが台頭、iOS売上では中国が6位に浮上【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51778500.html
・株式会社コロプラ【スマートフォンゲーム&位置ゲー】
http://colopl.co.jp/
丁寧で巧みなトークにとても感動しました。レストランとシェフ、そしてお客様というメタファーを使用し、企業を投資家、そして市場との関係をクリアにした名トークだと思います。「時価総額はつくれる!」というと一見刺激的な言葉ですが、数字というものは動かないわけで、それをどう理解し、市場の動きと連動して未来への価値とするか、単なる情報発信方のIRではなく、戦略的かつ経営本体とも深くからんだ素晴らしい視座を与えてくれる内容でした。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング → 海外技術&製品の発掘 & ローカライズ → 週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSのサービス立ち上げに関与。坂本龍一氏などが参加するグループブログ立ち上げなどを主導した。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。生んでは伝えるというスタイルで、イノベーターを現場目線で支援するコンセプト「BreakThroughTogether」でTechWaveをリボーン中 (詳しいプロフィールはこちら)