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昨年2016年のFacebookの最大のトピックは「LIVE」「VR」、そして「ニュース」でした。Facebookライブストリーミングは2016年4月に一般に公開されたとは思えないほど話題になりましたし、子会社Oculus社と協同で開発したソーシャルなVRは夜明け前のVR業界に活路を見出す役目を果たしました。
フェイクニュース、つまりソーシャルメディアに投稿される情報の真偽に関係なく拡散される問題の根源に、プラットフォーム側の責任を求める声が高まりつつあります。しかし、Facebookは対策を講じるも、つい先日も、殺人事件の当事者がその内容を動画で投稿し、1時間以上の間公開されたままになるという問題が発生しました。このことは2017年4月18日から19日にかけてアメリカ・カリフォルニア州サンノゼで開催されているFacebookの開発者向け年次イベント「F8」での壇上でも、Facebook CEO マーク・ザッカーバーグ氏自らが話題にしています。
今、リアルの人間関係=ソーシャルグラフを抱えるFacebookに求められるのは現実社会との新たな関係構築といってもいでしょう。同社の最新の取り組みが発表される「F8 2017」では、そういった社会のニーズに対し、どのようなメッセージが発信されるのでしょうか。2日間に渡るイベントの中から注目したい内容をまとめました。
カメラで現実をFacebookをつなぐARプラットフォーム
Facebookと現実世界との接点構築というシナリオで考えた時、最もわかりやすいのがカメラベースの取り組みです。「Camera Effects Platform」と名付けられた新開発のプラットフォームは、カメラに映る人の顔の追跡、3Dレンダリング、AR(拡張現実感)エンジンを搭載しています。
用途は大きく2つに分かれます。一つ新たな映像表現。SnapChatやFacebook Messenger、Instagramなどで知られるカメラ映像の創造性を拡張するタイプのものです。スタンプを置くだけでなく、カメラの映像と融合するように3Dオブジェクトなどをちりばめることが可能です。
もう一つは、カメラが稼働中に追加できる機能の開発です。人物を認識して、その内容にタッチすることで情報を表示するなどインタラクティブな機能を搭載することができるようになります。
こういったカメラベースの機能を開発するためのツールの提供も開始しています。一つはアニメーションやスクリプト型のエフェクトなどを作成するためのデスクトップツール「AR Studio」、プロフィールなどで利用できるフレームを作成できるオンラインのエディタ「Frame Studio」です。
「AR Studio」は、AR表現のためのあらゆる機能を作成できるもので、カメラ撮影時およびFacebook Liveでも利用できます。現在、デスクトップ用アプリのβ版が利用申し込みを受付中です。
ARといえばポケモンGOのようにカメラの映像に3Dオブジェクトが浮かび上がるタイプのものが頭に浮かぶと思いますが「Camera Effects Platform」はそういった表現や機能創造の幅を打ち破るものとなる要素が含まれています。
VRまわり
3年前に買収したVRプラットフォーム開発の「Oculus」と共同で進めているのは「仮想空間のソーシャル化」です。昨年開催されたOculusイベントで発表された「Social VR」(「ザッカーバーグ氏「ソーシャルVR」 を全面プッシュ、米Oculusイベントでデモ 【@maskin】」)がようやく「Facebook Spaces」という名前でリリースとなりました。
詳細は割愛しますが、ユーザーはアバターとして仮想空間に入り、ものづくりツール等やビデオ鑑賞を一緒にしたり、音声によるコミュニケーションを楽しむというものです。Oculus Rift + Touchという限定されたハードウェアで動作するベータ版として限定されたユーザーに対しての公開に留まります。
Facebookは今後10年、モバイルに変わるフォーカス分野としてVRを掲げており、すでに50名近いスタッフが「Social VR」で働いてる状態。Facebookの製品担当者 Mike Booth氏は「まずはOculus向けの製品をリリースしますが、他のVRプラットフォームにも展開する」ことを明らかにしていますが、「FacebookのVRビジョンのまだ0.1%」という段階だということです。
実際、VRの発表は昨年のOculusイベントでの発表以上のことはなく、踊り場に到達したのでは?という厳しい意見もみられました。
メッセンジャー2.0はLINE対抗か?
カメラに次いで力が入っていたのがメッセンジャーです。この一年程度の動きをみても、カメラ機能の拡張から、グループビデオチャット、チャットボット、ゲームまで幅広い取り組みがありました。そして、今回のF8では「Facebook Messenger Platform 2.0」が発表されています。
最大のポイントは、メッセンジャーそのものがポータル的に利用できるようにするという発想の登場です。彼らはメッセンジャー上で共有したりゲームをしたりECを利用することを「ソーシャルリビングルーム」という言葉で定義しています。気になるアカウントを見つける方法やQRをコードをスキャンしてアカウントをフォローする仕組みやボットとページなどが連携したサービス、バーチャルアシスタントなど、LINEが展開しているスマートポータルを思わせる舵の取り方です。
未接続の地域をなくす
Facebookは今後の10年間に技術投資をしています。前述のVRを含め、人工知能、そしてコネクティビティつまり通信環境の整備です。一言でいえば通信インフラが十分ではない地域を無くそうという取り組みです。Facebookはこれまで通信インフラ用UAV「Aquila」など多様な取り込みをしていますが、昨年2016年7月も無線通信プラットフォーム(Facebook、無線通信プラットフォームをオープンソース化 【@maskin】)を発表しています。
「F8 2017」の発表では、同社が参画する通信事業者大手らとの連合で取り組む「テレコムインフラプロジェクト」の一環が表明されました。Facebookが描くのは、ユースケース毎に適切なテクノロジーを開発し、パートナーと一緒に柔軟で拡張性が高いネットワークを構築するというものです。
FacebookのCTO Mike Schroepfer氏は「F8 2017」でこの取り組みを発表しました。前述した通信インフラ用無人機「Aquila」は成層圏ほどの高さを飛行するのですが、ミリ波技術で13kmを超える距離で36Gbpsのデータ転送速度を記録したそうです。クロスリンクという技術を使うと、同じ接続ポイントでも80Gbpsのデータ伝送速度が実証できるとのことです。さらに7km離れた場所を引こうするセスナ機と16Gbpsで通信することにも成功したとのことで。これらをOpenCellularや地上のバックボーン等と組み合わせることで有効なバックアップとして機能するというのです。
また、今回は、さらに緊急時の通信を回復する方法として、光ファイバーと送電ケーブルに接続された小型ヘリコプター「Tether-tenna」も発表されています。
脳で文字入力する技術
Facebookは人工知能の技術を使い、画像認識や映像にキャプションをつけるなどの機能を実際にサービスに搭載してきました。今回の発表にもあった「Camera Effects Platform」などもその一例です。また、「F8 2017」ではFacebookが開発するディープラーニングプラットフォーム「Caffe2」のオープンソース化を発表しています。
そして、人間の脳にフォーカスする分野で最も注目が集まったのは先端技術「Building 8」でした。このチームを率いるRegina Dugan氏は「脳から直接一分あたり100語の入力が可能なサイレント音声システムを作成するという」目標を発表したのです。サイレント音声というのは、声として発生されていない言葉を脳から直接取得するという方法です。
英語における100語/分という入力速度は、今日におけるスマートフォンの入力方法によるもののおよそ5倍のスピードになるということです。これを実現するために、身体に接触することなく脳の動きを読み取り言葉にするデバイスとソフトウェアの開発をしているとのことです。
Facebookの10年
このほか、世界でシェアが高い「JavaScriptフレームワークの刷新」「位置情報データベース「Places Graph」の効果」「他のサービスと連携して身元情報を確認する機能」「人工知能を活用したアナリティクス機能の高度化」など多様な機能が発表されました。あまり話題になっていませんがビジネス用Facebook「Workplace」の年内公開も明らかになっています。
Facebookが目論む今後10年はどうなるのでしょう。「コネクティビティ」「VR/AR」「人工知能」という3つのテーマ。「F8 2017」は事前の盛り上がりがいまいちだという声も聞かれましたが、それぞれのテーマの深いところで進んでいることだけは確認できたといえそうです。
【関連URL】
・Facebook Developer Conference: F8
https://www.fbf8.com