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日本のスタートアップを発展させる4つの策。政府主導のベンチャープロジェクト「J-Startup」意見交換会レポート

J-Startupの意見交換会でスピーチする世耕弘成 経済産業大臣

日本のスタートアップ発展のために越えなければならないハードルは多くあります。そのうちのひとつが、スタートアップと大企業のマッチング。会いたい企業になかなか会えない、現場の人ではわかってもらえない、上司の承認がなかなか降りない、など課題は様々かと思います。そんな中、スタートアップと大企業の溝を埋めるべく発足した政府プロジェクトJ-Startup。(参考「J-Startup、日本のスタートアップをグローバルに押し出す取り組みの行方」)今回は、その取り組みの一環として、経済同友会とJ-Startupに選抜されている日本トップのスタートアップ企業の経営者が意見交換する場が設けられました。

J-Starupについて

「J-Startup」は、国の閣議決定により経済産業省(METI)、日本貿易振興機構(JETRO)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導するプログラム。これまでの平等に企業をサポートするという視点を少し変えて、90社選抜し集中してサポートしていこうという取り組み。大企業とスタートアップがつながる場を提供するだけでなく、各省庁間対スタートアップとのやり取りにも仲介役として入り、コミュニケーションを円滑に行うためのサポートも行っています。また、海外に進出したい企業が現地参入に困っている場合には、経済産業省が直々に現地政府にレターを送ることもあり、J-Startupに選抜された企業は、このような政府ならではのサポートを受けることが可能です。詳しくはこちら

日本のスタートアップ発展には何が必要か

意見交換会であがった4つのポイント

ポイント1:“なんでも自前主義”からコラボレーションへ
スウェーデンやイスラエルのスタートアップがスピード感をもって数々の成功を収めているなかで、なぜ日本では著しい成果が出ないのでしょうか。志賀氏(日産自動車株式会社 取締役)は、こう考えています。「スタートアップが大企業の経営者層に自社のアイディアをピッチして、気に入ってもらえた。経営者は現場に話を下す。少したってどうなったか聞いてみると、現場の社員があれくらいのテクノロジーなら社内で作れますといって話を進めない。日産自動車でも、電気自動車については10年以上前から議論されてきた。それでも現時点で電気自動車はリーフしかない。」ものつくり日本のプライドが邪魔をするのか、そうしている間にテスラなどの欧米企業が次々と電気自動車の市場に送り出してきました。どうしたらこの課題を克服できるかという質問に対し、志賀氏はこう答えました。「スタートアップの方は大企業へ提案するとき、新しいテクノロジーを新車に装備する提案をするんですよね。でも、テクノロジーを普及させるという観点からいえば、既存の車種に実装できるテクノロジーやサービスの方が検討しやすい場合もあるのです。」大企業へピッチする際には、新しいものを創るだけでなく、その企業が持つ既存の製品やサービスをアップグレードする観点も必要かもしれませんね。

ポイント2:スタートアップとの打ち合わせは、大企業の社長自ら参加する
溝口氏(株式会社FiNC 代表取締役社長 CEO)は、自信の経験から経営者層へ話せるチャンスが不可欠だと述べていました。「僕の経験からですが、現場の人に直接話しても理解してもらえないことが多いです。現場の人では門前払いでしたが、経営者と別の機会に会って話したら提携できたという話も少なくありません。また、社長をはじめ経営者層との打ち合わせで上手くいって、現場の人と進めていると驚く理由で話が止まることもあります。セキュリティーの問題で、ある特定のクラウドサービスを使っている会社とは提携できないとか(笑)」大企業には大勢を統括するためにある一定の規則が存在します。その中で、時にはイレギュラーな決定を下さなければならないときもありますが、それを判断できるのは経営者層。そういう観点からみれば、大企業の社長や経営者層は積極的にスタートアップと直接話していくことが必要かもしれません。

ポイント3:日本だけでなく、需要があるところへ
日本から世界へとよく言われますが、杉江氏(WHILL株式会社 代表取締役兼CEO)はその垣根を越えて最初から世界を見る重要性について語っていました。「ポイントは3つ。市場規模、規制、多様性。僕たちが開発した電動車いすは、米国やヨーロッパの方が日本より市場が大きいということがあり、初期段階から世界を舞台に取り組んできました。でも、規制という観点からみると、ヨーロッパはさほど魅力的ではなかったんです。電動車いすは医療機器とみなされてしまうので、なかなか実用化が厳しいんですよね。調べて行き着いたのがシンガポール。現在は、製品の実験などはシンガポールで行っています。」杉江氏は、日本の超高齢化社会はひとつの魅力であるといいます。「世界をみてこれまでに超高齢化社会が進んでいる国はありません。他の先進国もそのうち高齢化社会が進むと考えると、日本は最先端」自国に当てはめようとするだけではなく、自社の製品やサービスの需要がどこにあるかを知り、そこに出向いていくという発想。あまり今の日本では主流ではないかもしれませんが、今後重要な視点かもしれません。

ポイント4:(難しいけど)スピードUP、投資額UP
日本のスタートアップ発展にやはり資金は不可欠。そう述べるのは、FiNCの溝口氏。「日本経済の活性化にメガベンチャーの存在が重要と考えていますが、日本はメガベンチャーが生まれる重要な要素は資金だと思います。世界の投資額と比較すると、日本は今年3000億円に近づくほど。中国は3兆円で、アメリカでは9兆円。日本のスタートアップが最初からグローバル展開をしたくても、資金が規模からして結局日本からの展開を余儀なくされることもしばしば。グローバル展開できることには、他国に先を越されてしまいます。」溝口氏は、具体的にはCVCの額を増額、また短期ではなく中長期でのサポートしてもらえたらと述べていました。

【関連URL】
・[公式] J-Startup

蛇足: インタビュアーあとがき
個人的に政府プロジェクトは時間がかかるイメージがありましたが、スピードを感じ素敵だなと思いました。J-Startupは、今年11月にリスボンで開催されるWeb Summitにも参加予定です。今世界で一番勢いのあるテクノロジーイベントに日本組織として初の大規模出展することもあり、世界からの注目も期待されています。Web Summitでも、まさに世界有力企業や投資家が政府と一緒になって、この会で話されていた課題について議論しています。今年はJ-Sartupも出展するので、この会に参加していらっしゃった方々にもぜひ参加していただき、日本のトップ企業、トップスタートアップのプレセンスを世界に知ってもらえたらいいなと思いました。日本にもたくさんいい企業やいいアイディアがあるんだと世界にアピールしていくことも日本の発展につながるのではと思いました。

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