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シェアリングデリバリーで勝負、出前館がスーパーアプリ化を狙うLINEと資本業務提携

レストランで調理した料理を配達する=フードデリバリー。都心などでは一般の人が配達員となるシェアリングデリバリー事業として「Uber Eats」などが目立つようになり、来月(2020年4月にはDiDiも参入することが明らかになっている。

そんな中、日本最大級のデリバリーサービスを展開する「出前館」とLINEは本日(2020年3月27日)、資本業務提携を締結したことを発表した。LINEと「未来 Fund」は出前館が実施する第三者割当により発行される新株式を引き受ける。これに伴い出前館 代表取締役社長に現 LINE株式会社 執行役員O2OカンパニーCEO 藤井英雄氏が就任する予定。かつLINEは役員やスタッフを出前館に送り事業の成長アクセルを踏む構えだ。

なお、出前館は第三者割当で300億円の資金を調達する。今後、LINE IDとの統合を皮切りとしたシステム開発やマーケティングのてこ入れを通じ、シェアリングデリバリー(配達代行)を含めたフードデリバリー領域の強化に注力する計画。

出前館 創業20周年からの旅立ち

出前館は創業20周年。これまでは受注代行事業者として事業を継続してきたが、LINEと2016年5月23日に業務提携契約を結び「LINEデリマ」などのサービスを展開。これを受け、2019年から昨年から地域密着事業としてラストワンマイルの配送まで手がけるようになった

「ピザやお寿司を2か月に1回注文するようなモデルに加え、どんぶり・餃子など日常食をラインナップしなければならないと考えており、配達代行のシェアリングデリバリー事業を新たに手がけている」(中村社長)。

アクティブユーザー数(前年同期比113%増)、加盟店舗数(前年同期比115%増)、年間オーダー数(前年同期比112%増)は純増するも「まだまだ未達というところですが、成長の課題であった、システムや資金面の問題が今回解消された」と中村社長は語る。

「シェアリングデリバリー」がフードデリバリーの焦点

シェアリングデリバリー事業は、2020年8月期(2Q実績)の売上高は38億2800万円のうち、5億4000万円。同年前期比1013%増とはなっているものの、人件費がかかり赤字事業。

ただ、現在の直営配達293拠点のうちすでに一部の拠点では黒字化しているところもあり、今後の拠点化拡充およびナレッジ共有することで全拠点黒字化は可能だという。登録飲食店2万1000店舗のうち自社配達可能なのは85%、シェアリングデリバリー15%はという利用率だが、今後数年で逆転させる考え。

フードデリバリー成長の鍵は「日常利用」。日常利用としてはフードデリバリーでやっていた最低1500円からという設定は高いため800円からという設定に変更。かつ注文から60分以内に商品を届けられる体制を構築。配達代理店も従来手数料を売り上げの36%としていたものを改め各地方の販売店と提携を拡大中。

また、新型コロナウイルス拡大などで、配達における公衆衛生やクオリティ向上のために、手洗い・うがい・アルコール消毒、検温実施などを徹底するほか、スマホオンライン決済などを駆使して非対面で商品を受けられる取り組みも展開。

LINEと出前館のシナジーは

出前館の300億円規模の資金、出前館の「LINE ID」連携、「システム開発」「マーケティング」のてこ入れを通じ「シェアリングデリバリー」を軸とした成長に向けて投資することになる。

これに伴い、LINE株式会社 執行役員O2OカンパニーCEO 藤井英雄氏が、出前館代表取締役社長に就任。出前館の外部取締役だったLINE株式会社 取締役 CSMO 舛田淳氏は出前館 取締役に、LINEのO2OカンパニーのCMOを務める藤原彰二 氏が取締役としてマーケティング体制構築の協力に関わることになる。

藤井氏は、世界のフードデリバリー市場と日本の状況を踏まえ「自前で配達網を持たない飲食店は、配達可能店と比較すると市場規模は約7.3倍で、ここをどうデリバリー対応にするかが重要」と説明。

「テイクアウトサービス「LINEポケオ」ではテイクアウト予約の強みがあり、出前館は各店舗に注文情報を伝える手段があるため、これを統合することで日本最大のフードデリバリーになる」(藤井氏)。

そのため、LINE側から50名規模の開発チームを派遣。デリバリーやテイクアウト、イートイン&モバイルオーダーをID統合やマーケティング分析、予約支援、クラウドキッチンなど将来を踏まええ、「日常利用できるサービスの一つとして」システム開発を今後行っていく。

「現在のLINEは、24時間日常的に利用できる「スーパーアプリ化」を目指して事業を進めている。フードデリバリーはまさのその核となる事業。出前館はポータル型に始まりさまざまなスタイルのフードデリバリーを展開してきた日本最大の事業者で、これをハイブリッド型でエリア毎に最適化して提供することになるだおう」(舛田淳氏・現 LINE株式会社 取締役 CSMO/株式会社出前館 社外取締役))

また、現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響などへも有効な対策がITと既存事業の融合で生み出されるという期待もあり、今後が期待される。

「スーパーなどで買い物ができないといった問題も出てきていますが、そういった意味でも出前館は価値を提供できる」(出前館 取締役に就任する藤原彰二(現 LINE株式会社 O2OカンパニーCMO/LINE Pay株式会社 CMO)。

【関連URL】
・[公式] 株式会社出前館の株式取得および新体制に関するお知らせ

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