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「仕事というもの」の定義について考える 【@maskin】

TechWave編集チョの増田真樹です。2年半ぶりに新しい取り組みを進めています。その一つ「Re:Work」チャネルに関係する蛇足的記事をお届けします。

仕事をする環境の中で、大きく2つのタイプの人がいると感じています。

一つは「顧客に価値を与える人」、そして「そうでない人」です。

その差は明確です。

状況の違いはあれど、顧客に対し価値を提供することに貪欲になっているかどうか

それが仕事というものの質を決定づけるを僕は思っています。

身近なところでいうと、顧客に対する「出来かねます」と言わざるを得ないシーン。ひどいパターンとして「仕様です」といって会社の都合で顧客を一方的に突き放す乱暴なケースもあります。

企業としての体を維持するため、一定の条件に満たないリクエストには応じることができないこともあるでしょう。クレーマーみたいな存在に、毅然とした態度でNOをいう必要が出てくるかもしれません。受託業務契約の内容によっては、契約主からの一方的な要望に応えざるを得ず、双方合意の良質なプロダクトづくりに到達できないこともあると思います。

ここで注意したいのは仕事の種類や利害関係、業界業種の差などではない点です。所属がどうだとか、会社がどうだとか、いろいろな意見はあると思いますが、その人本人が「顧客に対して何らかの価値を与えるマインドセットを持っているか」という部分にフォーカスしています。

たとえば「顧客の安全よりも効率化」「プロダクトよりもプライド」「品質よりも金」「前進よりも保身」「会社のルールを優先」「気に入った仕事だけする」といったことと真っ向から反する意識と態度がある人を僕は大切にしています。

なぜなら、仕事は顧客に対して何かを与え、その対価としてお金をもらうということになるからです。

顧客に対する何らかの価値提供を追及できているか

ヴァージングループを率いるリチャード・ブロンソン氏は著書「ライク・ア・バージン」でこんなエピソードを紹介しています。お客様がリムジンバスの発車時刻を間違え、予約した便に乗り遅れるかもしれないとパニック状態になっていたときの話です。

「空港で最初に声をかけたヴァージンのスタッフが、すぐに事態を収拾した。怒る乗客をなだめ、何度もお詫びをしながら飛行機は絶対に間に合うと請け合った。そして自分の財布からタクシー代を返還すると、乗務員用レーンを通らせ、出発の10分前に搭乗口まで案内した」。

こうした意欲的で誠実な対応を受けたことがある人はいると思います。こうした対応は、サービスやブランドの価値につながる大きな要素ですよね。しかし、このエピソードどには続きがありました。

「だが上司はファインプレーともいうべき行為を褒めるどころか(中略)怒って叱りつけた。「領収書がなけりゃ、返金なんてできない。次はもっと気をつけるんだな!」」

リチャード・ブロンソン氏は「仲間の模範的な行為に、上司が馬鹿にしたような態度を取るのを見た従業員は、同じような臨機応変な対応をしなくなるだろう。それは顧客にとってマイナスであり、ひいては会社全体にとってもマイナスだ」と語っています。

もちろん、経理のルールや会社のポリシーやらクリアしなければならないことはあると思うのですが、顧客と対峙せず、会社の都合を押し付けるだけの人は、根本的な問題を抱えていると思います。それは「なぜ、会社が運営され、なぜ、そこで仕事をしているか」という課題に対する答えが不在であるという点です。結局、この上司は「会計の厳格さを、顧客より尊重した」というわけです。

別のケースですが、数年前、ある中規模の会社で、社員が夏休み中の子供にを会社に連れてきての1階ロビーのミーティングスペースで夏休みの宿題をさせているのを見たある従業員が「コンプライアンス的に問題だ。どう考えているんだ」とソーシャルメディアで延々と苦言を呈しました。小学生がスパイするとでも思っているのか、それとも業務として定義されていないもの以外はすべて排除するのが仕事だとでも思っているのでしょうか。ただ、一方で、家族ケアが手薄になる夏休み中、子どもたちを良い形で受け入れることに賞賛する声が多数をしめ、苦言は自然鎮火していったはよかったと思います。

この場合、直接顧客との関係線上にある話ではないですが、発想そのものが「価値提供を考えていない」といえます。

スタートアップブームの中、しばしば「俺たちは世界一になる」「シェアは○○%、売上は○○億円」と宣言するプレゼンが見受けられます。あるスタートアッププレゼンコンテストの審査員グループとの会話で「数字の話ばかりで、No1になるとか、自分のプライドの話しかしてない。じゃあそれだけのシェアをとって、この業界に何を貢献するんだ、顧客に対しどんな価値を提供するのか。大切なことがすっぽり抜けていて、自分のことしか話をしていない」という辛辣な意見が飛び出しました。

投資家向けの利益主張を重視するコンテストではなく、目的が明確(業界に貢献する)だったコンテストだけあってそのような意見が出たのだと思いますが、それにしても「自分たちはすごい」「自分が儲かる」と自分のことばっかりいうスタートアップ系プレゼンターはとても多いと感じます。その前に、その顧客は本当に価値を感じているのでしょうか?価値を与えることができるのでしょうか?

こうした、事例は日常的に溢れるほど存在しています。個人のレベルではなくても、フランチャイズ・チェーンなどのシステムそのものが、こうしたファインプレーを排除するマインドセットで構築されているケースもかなり目につきます。

「価値提供」を仕事の根幹にしない限り、事業というのはおかしなことになってしまうように感じています。
安定的にルーチンワークをする必要もあるでしょう。トラブルが起きないように、リスクを排除するような仕事も必要です。ただ、先に述べたように、そもそも「顧客への価値提供のため」というマインドセットがない人は、価値提供ではなく仕事や保身を仕事だと思い込んでしまいます。つまり自分よがり。自分の価値、自分の利益、自分への利点ばかり考えるようになってしまいます。これはとても哀れなことだと思います。

「優秀な人は喧嘩しない」 価値提供を追う人たち

元LINE社長の森川亮氏の著書「シンプルに考える」の中で、とても興味深いエピソードがありました。

彼はLINE社内に、言いたいことを率直に言えるカルチャーを浸透させる中で、優秀な人は喧嘩をしないということを発見しました。

優秀な人というのは、顧客に対して貪欲に価値創造をする人を指します。

あれこれ粗さがしをするも、結局、自分のための仕事であって、何も与えていない人は、保身のために延々と誰が悪い、あれが悪いと訴え続けますが、顧客のために良いサービス・良いプロダクトを作り上げようとする人は、それを無駄なことだと考え、余計な係争を回避し本当の仕事に集中すると言います。

本質を捉えているなと思いました。

世の中にあふれるほとんどのプロジェクトは「まず金だ」として、企画書が練り込まれ、手垢だらけになった時点で「さあ、いいもの作れ」と始まります。何が「いいもの」なんだろう?疑問を感じるもすでに手遅れ、「いいものを創るのはお前たちの責任だ、成功しろ」と押し付けられ、想定通りの失敗を迎えることになります。

売上を「顧客に対する価値提供」ととらえるならば、まずは、何が提供できるかを考え尽くすのが妥当です。LINEプロジェクトもそもそもがそういう考えで生まれたものでした。どういった価値をどう提供することを考え尽くして、初めてそれに対する価値を考えることができる。お金をむしりとるビジネスも世の中にはあふれていますが、顧客が払いたいと思える仕事をしていくことで、各位の経験になり、チームの成長につながり、社会を活性化することができるようになると僕は思います。

どんな仕事をするか。そんなことを考えている人は、一度「自分はどんな価値を提供できるだろう」と考えてみてください。働くということの意味が少しずつ変わってくると思います。



【関連URL】
・「Re:Work」チャネル
http://techwave.jp/category/rework

蛇足:僕はこう思ったッス
日本に限ったことではないのですが、日本に必要なのはこの部分ではないかと感じています。特にITは、日本発で世界にイノべーショーンを与える価値がLINEくらいからしか生まれていない。IoTやMakersがブームになっていますが、製造分野は他の国が主役になっているし、販売面でもプラットフォームがない。すべての突破口は企画=「価値提供のスキーム」になってくると思います。昔はよく日本の消費者は世界一と言われていました。今はどうかわかりませんが、繊細さがあるのは間違いないと思います。それを世界の人が理解できる形で価値にすることができたら、第二第三のLINEのようなグローバルサービス・プロダクトを生むことができるようになると思います。というわけで、これからもRe:work関連ポストを積極的に展開していこうと思います。
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