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「WebSummit」とは何か?世界最強のスタートアップイベントの秘密

5万3000人が熱狂。たった7年で世界トップ規模にまで成長したテックカンファレンスイベント「WebSummit」は最高のベンチャー系イベントとして世界で知られています。世界166か国のイノベーター達がポルトガルの首都リスボンに集合。1490以上の企業が出展。699のカンファレンスがあり、スタートアップと投資家、そして業界のリーディング企業がこの場所を有機的に盛り上げ、それらをきっかけにたくさんの価値が創造されていきます。日本からはこの数年LINEが登壇することでも知られていますが、日本における認知の高まりはこれからというのが現状です。

そこで2017年3月29日、「WebSummit」チーム APACの責任者Jimmy McGann氏が来日するのにあわせ、TechWave主催の招待制イベント「Web Summit / RISE RUNWAY in TOKYO」を開催しました。WebSummitおよび同社が展開するイベントの魅力を伝えるという内容です。スピーカーとしてJimmy氏のほか、2016年のWebSummitに参加したNTTレゾナント 経営企画部門 新事業担当マネージャー 松野重雄氏、モデレーターにはTechWave COOの森田正康が登壇しました。

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WebSummitの成長

テクノロジーと通信およびメディア領域の世界規模のイベントといえば、2016年に17万が来場した米ラスベガスで催のCES、10万人が来場したスペインバルセロナ開催の「モバイルワールドコングレス」、それに次いで5万3000人来場の「WebSummit」が名を連ねます。

特筆すべきは「WebSummit」がスタートしたのが2010年であるということです。CESはなんと49才、MWCは30才。そう考えると「WebSummit」はグローバルイベントとして驚異的な成長を遂げています。また、この間、香港で開催する「RISE」やアメリカの「COLLISION」などの派生イベント。今回、TechWaveが主催側に立った「RUNWAY」というPRイベントなどを世界14の都市で展開しています。

「WebSummit」の初回は「参加者400名のイベントだった」とWebSummit APACの責任者 Jimmy McGann氏は言います。なぜ「WebSummit」はテクノロジー系最大のビジネスイベントに成長できたのか?3つのポイントで説明します。

1. オーダーメードの行動解析技術が急成長を可能に

どのエリアにどれだけの人が滞留しているか、数万におよぶ参加者の行動データを分析するほか、「WebSummit」独自開発のイベント用アプリを来場者に提供しています。アプリはセッションの参加からメッセージ送信などさまざまな機能が搭載されており、なんと登壇しているロナウジーニョといったスーパースターにメッセージを送付することも可能です。

これらの利用動向は巨大な会場における人々の移動状況(会場中にカメラが設置され、どのエリアにどれくらいの人があいるのかを把握しているそうです)とあわせて分析されます。科学として盛り上がりと成長を狙っているのです。

2. 2014年から複数の国でイベント開催

また、あわせて2014年から複数の国でイベントを展開してきました。アメリカ・ラスベガスで「COLLISION」、中国・香港で「RISE」、インドで「SURGE」というように別ブランドでのイベントです。2016年は、アメリカとインド、中国あわせてのべ2万5000人以上が参加しています。

3. プラットフォームを横展開

こうした複数の領域・複数の国と地域における成長は、独自のプラットフォームの適用範囲を拡大していきます。

結果として2010年に400人から始まったWebSummitは、一連のイベントを展開することで、2013年には参加者1万人、2014年には2万5000人、2015年には4万3000人、2016年には8万1000人とのべ人数を成長させることに成功したのです。

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コミュニティとしてのWebSummit

では、なぜ「WebSummit」に人が集まり、グローバルリーダーらが積極的にイベントに絡もうとするのでしょうか。その秘密にWebSummitならではの「コミュニティ」観がありました。彼らは以下のような領域を見定め、それぞれを世界から集めることでスタートアップイベントとしての価値を高めようと考えているのです。

「破壊的技術/スタートアップ(Disruptive Tech/StartUps)」
「投資家(Investors)」
「パートナー(Partners)」
「メディア(Media)」
「政府(Government)」
「新時代のリーダー(Thought Leaders)」

こうしたTechスタートアップシーンのエコシステムを成立させるため前述した独自開発のプラットフォームを活用し、かつグローバルコミュニティとしての展開を推し進めているというわけです。これが驚くほどのスピードで成長しているため、このイベントとコラボレーションすることで、より早くイノベーション創造のプロセスをつかむことができると考えられているというわけです。

たとえば、2016年はFacebookがキーノートを2日間に行うほか、電子メールでWebSummitに関連するキャンペーンを配信したり(3回の実施でCTR9.7%)、ブースで延べ9000人の来場者から見込み客を獲得するなど。業界リーダーとしてのメッセージ発信のみならずブランド向上やリード獲得とかなり積極的です。

BMWも、業界リーダーとしてのスピーチを行ったほか、会場内で試乗会をするなどブランド向上にWebSummitを活用しています。

こうした企業における取り組みは多様で、飛行機でハッカソンを開催したり、バーバリーが開場近辺のモールで使えるクーポン配布するなど他のイベントでみられないような熱の入ったものが多数開催されていました。WebSummitチームは、こうした企業からの提案にオープンに対応していくことでコミュニティとしてのWebSummitをより有機的にしようと考えています。

主催国ポルトガルも例外ではありません。「WebSummit」は、2015年まではアイランドのダブリンで開催していましたが、数年周期で開場を変更する際、250億円のファンドを作って積極的にグローバルイノベーションに投資をしようとするポルトガルとの関係が成立したようです。ステージにはポルトガルの大統領が登壇し、大統領邸でWebSummitのイベントが開催されるなどの熱の入れようです。

これらの動きは著名スピーカー自らがソーシャルメディアなどで発信することで波及し、2000を超えるニュースメディアが12500本の記事を公開するなど、まさに巨大なコミュニティとしての「WebSummit」の熱気が爆発的に噴出する構造になっているといっても過言ではないでしょう。

2016年のWebSummitに参加したNTTレゾナントの松野重雄氏は興味深いことを話しています。

「会場には考えさせられる言葉で溢れている」。

セッションのほとんどが30分で区切られているから内容が詰め込まれているということもありますが、グローバルのリーダー企業のキーマンが会場全体の熱気に呼応していると考えてもいいのかもしれません。

投資家とスタートアップの出会いの場

前述したとおりWebSummitは、Techスタートアップ領域の成長機会を創出するためのコミュニティを構築しています。特にスタートアップと投資家との関係構築に注力しており、独自システムと外部サービスを連携させることでその後押しをしています。

また、スタートアップブースは投資フェーズによって色分けされており、一目でその企業がどういったフェーズにいるかがわかるようになっています。会場における構成比としては「体感値としてシードが60%、資金調達済みが25%、3億円以上調達済みが15%」(NTTレゾナントの松野重雄氏談)とのようです。

実際、「WebSummit」に参加後に巨額資金調達を成し遂げたスタートアップは多く、2011年のWebSummitに参加した「Uber」が37億円のディールがクローズしたのを皮切りに、2014年参加の「stripe」が70億円調達など。開催エリアEUを中心としたものではなく、グローバル企業のディールが主体となっていることからも、WebSummitがグローバルスタートアップの中心的存在になっていることが浮き彫りになります。

なお、「WebSummit」のイベントは、チケットではなくコミュニティ型。コミュニティに入るための参加費が一人あたり10万円という価格体系になっているのも特徴といえます。今後の「WebSummit」チームのイベントは、まず2017年5月2日から4日にかけてアメリカで「COLLISION」を開催。2017年7月11日から13日にかけて香港で「RISE」を。WebSummit本体は2017年11月5日から11日にかけてリスボンで開催する予定です。そのほか、インド・ムンバイで2017年12月に「SURGE」が開催されます。

TechWaveでは、「WebSummit」を支援すると共に、取材活動なども展開していきたいと思っています。

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【関連URL】
・WEBSUMMIT | LISBON 2017 | WHERE THE TECH WORLD MEETS
https://websummit.com

蛇足:僕はこう思ったッス
 TechWaveがかつて展開してきた「アプリ博」は、空間設計の実験場でもありました。限られたスペースの中で、いかに参加者全員がそれぞれのモチベーションを高め新たな価値を生み出せるかといういわば空間の編集メディアとして展開してきました。WebSummitは、イベントスタートアップという観点から見て最大級のリスペクトを感じるチームです。ただ、いかんせん日本人の参加はかなり少なくWebSummitにおける存在感がありません(2015年は日本からは4人しか参加してないとか)。ただ、Jimmyさんが来日したのは、それでも日本には素晴らしいコミュニティや企業があるからです。

現在、私たちが準備を進めている「TechWave Summit」は、WebSummitの影響を大いに受けています。グローバルという舞台で足並みを揃えていきたいと思っています。

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