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音声コンテンツの復権 ー ポッドキャストに再び注目集まる Spotifyも参入・中国4.5億ユーザーの事業も

「PodCast」(ポッドキャスト)を知っている人は意外と少ないかもしれませんが、今後日本でも大きなブームとなる可能性がでています。

「ポッドキャスト」はラジオ番組などをブログのように配信しアップルの音楽プレイヤー「iPod」等で視聴するコンテンツ配信のスタイルです。ブログのように誰もがコンテンツを配信できるとして10年ほど前にとして注目を集めましたが今はすっかり聞かなくなっていました。

世界最大音楽配信サービスSpotifyが参入

世界で最も大きなシェアを誇る音楽配信サービス「Spotify」は2018年1月19日、「Spotlight」という新しい音声プログラムを発表しました。

BuzzFeedとRefinery29を含む8つの企業から毎日4分から7分くらいのニュース放送を行うというものです。例えばBuzzFeedの番組は音声だけですが、順次インフォグラフィックなどの視覚効果も追加していく計画。音楽ビデオの舞台裏などのコンテンツなど多様な試みを展開するとのことです。「Spotlight」は米国内でスタートしますが順次拡大する計画です。

このプログラムは音楽再生中の広告収入に依存するSpotifyに新たな活路をもたらすと考えられます。YouTubeやライブ動画に注目が集まるものの、Spotifyはもともと「聴く」プラットフォームのため声のコンテンツの多様化は事業拡大の契機に直結しているのです。

ポッドキャスト復権の火付け役

こうした音声コンテンツ復権のきっかけとなった作品として思い出されるのが、2014年にシカゴの公共ラジオ局KBEZが制作した調査報道ドキュメンタリー番組「Serial」です。

「Serial」はこの放送局の「This American Life」という作品のスピンオフ番組としてポッドキャストで配信されたもの。1999年に米国内で女子高生殺人事件を同局プロデューサーが再取材して、12回連載の1時間番組で検証していくというもの。この事件はえん罪の可能性があったこともあり、短期間で数百万ダウンロードされるなど大きな反響を呼び、それが切っ掛けで2015年に裁判所が再審開始を決定したということで社会問題になりました。

こうしたヒット作が続々続いたというわけではありませんが、コンテンツの在り方に再び注目を集める切っ掛けになったのは間違いなさそうです。

中国4.5億人ユーザーを抱えるシマラヤが日本参入

音声コンテンツが最も活気を帯びている国は間違いなく中国です。2012年8月に創業した「Ximalaya.com」が運営するヒマラヤFMは2017年11月現在ユーザー数は4.5億人。国内シェアの73%(2017年8月時点)を持っています。

驚くのはユーザーあたりの一日平均利用時間が128分というところ。車の通勤時間著しく長いということもありますが、それに限らず通勤や散歩、運動中、就寝前などあらゆるスキマ時間にヒマラヤFMが使われています。また、コンテンツはエンターテインメントなどではなく、著名人の講演などが主体というのも驚かされます。無料・有料・ストリーミングとビジネスも着実に拡大しています。

ヒマラヤはすでに日本に参入済み。まだ、有料コンテンツなども展開されておらず、拡大フェーズにいたっていませんが、500人規模の著名人とコンテンツ制作の取り組みをスタートするなどしています。

日本はどうか、スマートスピーカーとの関係は

こうした動きは、日本ではどうなるのでしょうか? 日本はSpotifyにしても、すっかり世界のトレンドに乗り切れない状態です。声のコンテンツといえば、日本国内でスマートスピーカーで使われる機能のトップにが入っています。そう考えると日本でもポットキャスト型のコンテンツの可能性はあるといえますが、そもそものスマートスピーカーもLINEが2017年夏に動き出したことを受けて、国外勢があわてて追従した状態であり、北米のように数百万デバイスが稼働しているレベルに達するにはまだ時間がかかりそうです。

ではKBEZの「Serial」のような音声コンテンツはどうでしょう? この部分の可能性はまだ未知数です。もしかすると、地に落ちたコンテンツが再び力をえるきっかけになるのかもしれません。

【関連URL】
・TechWave | スマートスピーカー
https://techwave.jp/tag/スマートスピーカー

蛇足:僕はこう思ったッス
 音声コンテンツで夢中になっているものがある。NHKラジオのオーディオドラマだ。今でこそラジオに触れる機会が少なくなっているもののカーラジオで聴く機会が多い。その一つ「青春アドベンチャー」などは1992年からずっと放送を続けている長寿番組。オーディオドラマのいいところは、読み手(演者)とコンテンツの一体感があるため、目で見るよりも想像力が働き夢中になれる点。ドラマでなくても、ニュースや朗読でも読み手が介在することで、情報が洗練される印象がある。少なくともウェブのニュースのように人が作ったコンテンツを知ったふりしてリライトするような内容にはできない情報密度がある。また、声のコンテンツの触れ方が変わってきたと感じている、本文でも述べたがスマートスピーカーでラジオを聴く回数が自分の周りでも増えている。ラジオや流しっぱなしが基本だから他の作業で使うアプリやPCで聴く気にはならないのは当然の話で、もしかするとデバイスを普及させることで一気に拡大するのかもしれない。

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