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AIアナウンサー荒木ゆい(27歳)の野望、Specteeからデビューしたその技術と誕生の経緯について

テレビのニュース番組からアナウンサーが消える日がくるかもしれません。

報道機関向けニュース提供サービス「Spectee」は2017年11月7日、アナウンサーの発音により近い音声で原稿を読み上げられるAI技術によるアナウンサー「荒木ゆい」のβ版を公開しました。

報道機関内で速報を伝えるロボットとして誕生

AIアナウンサー「荒木ゆい」は報道の現場から生まれました。

開発元のSpectee社は、ソーシャルメディアなどの情報からニュースを発掘してテレビなどの報道機関向けに再利用可能な状態で提供する速報サービスを展開しています。

報道機関の利用者はダッシュボードから速報ニュースからのアラートを確認し、実際の報道へとつなげる仕組みです。

「音で通知する機能を導入したのですが、結局ずっと眺めているのと変わらない。見なくても簡単なサマリーを読み上げてくれる機能を付ければ、毎回見に行かなくても何が起きているのか分かると考えたんです」(Spectee CEO 村上建治郎 氏)

アナウンサーの音声10万件を学習

そうして生まれた「荒木ゆい」氏は、Spectee社が開発する人工知能エンジンを使って、アナウンサーが読んでいるニュース音声約10万件を機械学習し、より人に近い自然な発音、アクセントやイントネーションを習得し、自動で原稿を読み上げる能力を備えているといいます。

「音声読み上げのサービスはいくつかあるのですが、どうも機械音っぽい上に読み間違えも多い。また、当社のように毎日大量のニュースを読み上げているとなると不快になってくる」(村上氏)

そこで2017年2月、Specteeは同社独自開発の「Spectee AI」エンジンを使ってよりナチュラルで人間が読んでると間違うくらいのヴァーチャル・アナウンサーを作ろうというプロジェクトが始まったのです。

読み間違えを無くせるか

「実際にやってみると読み間違えの補正が難しいのです。予め事前に原稿を頂いて何日も補正すれば出来るのですが、速報ニュースの現場はそうはいかない。そうすると文脈を理解して自分で正しい読み方を見つけないといけない。

一般的な読み上げシステムを使った場合、例えば日本橋と言うテキストを投げるとそれを「ニホンバシ」としか返してくれない。大阪の日本橋を「ニッポンバシ」とは読んでくれないんです。

なので、Spectee AIでは、そのニュースの「日本橋」は東京なのか大阪なのかを理解して、読み上げシステムに投げるのです。日本橋だけでなく、三田は東京はミタ、兵庫はサンダですし、そんな同形異音語が日本にはたくさんある。それを都度都度読み分けるようにしているわけです。

さらば棒読み

「さらに、機械読み上げの棒読みをどうにかしたい。明るいニュースは、少しトーンを上げた音をちょうだいとか、くらいニュースは真面目に読んでいる音をくれ、とか、そういった判断をSpectee AIが行うようになったんです。

かたや、実際の現場で働くアナウンサーの仕事を見ると、ものすごく過酷なんですね。災害などが発生すると泊まり込みで延々と伝え続けているわけです。そんなアナウンサーの現場を改善できないか。AIアナウンサーなら24時間読み続けられる。人間のアナウンサーにしかニュースの核心を伝えることはできないと思いますが、事実を伝えるだけならAIアナウンサーにはできるかもしれない。

そう言う思いで、もっと長文を間違えずに正確に、より滑らかに人に近く、人が聴いても不快に思わない、そんなAIアナウンサーを作ろうと思うようになりました。実際のアナウンサーの音声を学習したり、息継ぎタイミングを研究したり、全国の難読地名データベースを作成したりとさまざまな研究開発を経てようやく使える段階まできたというのが今回のβ版提供です」(村上氏)

頭脳明晰な最強のAIアナウンサー

「荒木ゆい」氏は、Spectee AIの言語処理能力に加えIBM Watsonによる会話理解技術などを組み合わせた技術の集大成で生まれました。

「実は、荒木ゆいは簡単な会話が出来ます。人間が話しかけるとそれを理解して返答してくれます。将来的にはニュース番組内で出演者とのやり取りで使えないかなー、と思います。この部分についてはスーパーコンピュータ並のデータ処理能力が必要ですので、そこはIBM Watsonに任せています。

すでにSpecteeでは読み上げ以外に、ニュースを自動生成する技術も開発をしています。最終的に「荒木ゆい」がニュースの当事者に対してインタビューするようなことができればニュース制作を一気通貫で行える技術が確立できるかもれしれません」(Spectee 代表取締役社長 村上建治郎 氏)。

AIアナウンサー「荒木ゆい」は、テレビやラジオの報道現場だけでなく「ドキュメンタリーやバラエティ番組のナレーション、劇場や美術館などの館内放送、観光案内、結婚式やその他式典での司会など、今後様々なシーンでの活用を見込んでいます」(報道文より)とのこ。β版は12月末まで法人企業様向けに無償で提供するとのこと。

なお「荒木ゆい」さんは2017年11月15日から17日まで幕張メッセで開催される「Inter BEE 2017」でデモンストレーションを行う予定です。

【関連URL】
・Spectee
http://www.spectee.jp

蛇足:僕はこう思ったッス
 結構しびれる技術的トライ。AIの技術開発は学習させるための情報とマシンパワーがどうしても必要になるが、Specteeの支援者や投資家陣営の後押しがあってここにきて急成長できているようだ。Specteeは技術側からのいわば一方的なパワーだけでなく、通信社出身の記者や編集者などマスメディア側の知見もうまくバランスを取って取り入れているように感じる。
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