「も・を・で」で振り返るデジタルマーケティングの9年とこれから【ad:tech tokyo 2017 ABM vol.2】

ad:tech tokyo 2017 Advisory Board Member インタビュー特集, Marketing

2009年の第1回から、企画やボードメンバーとして長くad:tech tokyoに関わっている、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 常務執行役員 三神正樹氏に、ここ数年のデジタルマーケティングの変遷について詳しく話を伺いました。

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 常務執行役員 三神正樹氏

——デジタルマーケティングはどのような変遷をたどったとお考えですか?

あらためて振り返ってみると、「デジタルも」「デジタルを」「デジタルで」という三軸で相対的に考えると面白いことに気づきました。言うなれば、「デジタルの『も・を・で』」ですね。

——その、「デジタルの『も・を・で』」について詳しく教えてください。

ad:tech tokyoで例えるならば、日本初上陸となった2009年は、まだ「デジタルも」という時代でした。つまり、「マス広告が主流だが、なにやらデジタルが伸びているらしいので『デジタルも』やっておいたほうが良さそうだ」という考えで取り組む企業が多かったように感じます。それから数年後には、デジタルの必要性への理解は広まり「デジタルを」どう活用するか、つまりデジタルそれ自体について考えるようになりました。

——たしかに、2013〜2015年ごろは「マーケティングにデジタルをどう活用するか?」というテーマのパネルディスカッションが多かったように思います。

そうですね。そして「デジタルを」の次に、「『デジタルで』何が実現できるのか、『デジタルで』何をするのか。」が注目されはじめます。もはやデジタルが血液のようにマーケティングに不可欠で当たり前の存在になると、「デジタルを」の先にある「デジタルで」を考えるようになるのです。最近のad:tech tokyoはこのフェーズにあると感じます。

もちろん、すべての業界がこの「も・を・で」の順番で進むとはかぎりません。たとえばEC業界やソーシャルゲーム業界の場合は、その性質上、最初は「デジタルで」からコミュニケーションが始まり、その後「デジタルも(=それ以外も)」という文脈で、テレビCMやリアルな施策に取り組んでいます。つまり、先ほどとは真逆の「で・を・も」の流れです。
また、一つの企業の中に、この3つのフェーズが混在することもしばしあります。したがって、私の考えるこの「デジタルの『も・を・で』」は、自分のビジネスの、現在の立ち位置を相対的に知るためのものさしとして使えると考えています。

——では、私たちがこの「も・を・で」を指標としてマーケティング・コミュニケーション考える上で、気をつけることは何でしょうか。

やはり、常に次のフェーズを見越すことではないでしょうか。私にとって、一番衝撃的だったこれまでのad:tech tokyoのキーノートは、当時Mondelez CMOだったBonin Bough氏のプレゼンです(※注釈1)。彼のプレゼン内容などは、いま振り返ってみると、確実に時代の一歩、二歩先を示唆していたと思います。当時、我々の大半がマス広告に加えて「デジタルも」と考えていたときに、彼は「デジタルを」を通り越して「デジタルで」という、デジタルが中心の話をしていました。同じマーケターとして、あれはとてもセンセーショナルで、忘れられません。

——それらを踏まえて、ad:tech tokyo2017へのコメントをお願いします。

最近業界で特に騒がれている Ad Fraud(アドフロード)(※注釈2)については、しっかりとしたファクト得て、それを業界横断で共有することが重要だと思います。例えば、人が病気やケガをしたら、最初にレントゲンを撮って状況を把握してから治療の手立てを考えますよね。それと同様に、まずは何が、どうなっているのかというファクトを調べて課題を明確にし、それに基づいて業界全体でどうすべきかを議論することが重要です。今年はアドテックがそうしたオープンに議論できる場になるといいですね。

最後にもう一つ。ad:tech tokyoでは、もはやアドテクノロジーの域を越え、デジタルマーケティング全般のとても幅広いテーマを扱っていますね。ですので、私は個人的にはad:techは名称を一刻も早く変えたほうがいいと思っていたりします(笑)。最近は、「どんな名称ならしっくりくるのだろうか?」などと考えながら、セッションに参加していますよ。

——改名案募集中です(笑)ありがとうございました。


※注1. ad:tech tokyo 2013に登壇したキーノートスピーカー。現在はCNBCのTVホストなども務めている。
※注2. インタビュー中「Ad Fraud=広告詐欺」の日本カタカナ名ついて三神氏より指摘があり、注釈を加えた。「アドフラウド」表記が通称となりつつあるが、発音としては「アドフロード」が近しいはずである。今後、本インタビュー記事も「アドフロード」に統一したいと思う。

【ad:tech tokyo 2017 Advisory Board Member (ABM) Interview Vol.2】(特集一覧はこちら


三神正樹氏
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 常務執行役員

1982年博報堂入社。IT部門、事業・プロモーション領域の部署を経て、96年日本の広告会社としては初のインターネット専任組織「博報堂電脳体」の設立に関わる。 以降、統合マーケティングやデータドリブンマーケティングなどを実践し、デジタル分野をけん引。マーケティング効果における顧客企業への説明責任、広告コミュニケーションの最適化などに取り組む。2010年博報堂執行役員。11年博報堂DYメディアパートナーズのi-メディア領域担当の執行役員。13年「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」でメディアライオンの審査員を務める。 2016年4月博報堂常務執行役員 兼 博報堂DYメディアパートナーズ常務執行役員。 16年「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」でイノベーション部門の審査員を務める。

【ad:tech tokyo 2017 概要】
日時:2017年10月17日-18日
場所:東京国際フォーラム
参加人数:15,000+
詳しくはこちらから

Interview & Text: 古市優子

古市 優子

古市 優子

Content Manager - ad:tech / iMedia at Comexposium Japan
慶應義塾大学法学部法律学科卒、University of Utah演劇学科への交換留学を経て、在学中は電子手形の研究。サイバーエージェント新卒入社と同時に、スマートフォン黎明期のCyberZへ出向、MVP通算6回、通期新人賞受賞。退職後はサンフランシスコへ渡米、翻訳などフリーで活動。2013年よりdmg::events(現Comexposium)に入社、iMedia News Summitなど新イベントの立ち上げ、ad:tech tokyoではコンテンツを担当。最近の趣味は新居のスマートホーム化とワイン。じっとしていられないのが悩み。
古市 優子

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