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「テレビCMが効かなくなる」であるとか、「宣伝メッセージを一方的に流すだけでは効果がないようになる」という予測はずいぶん前からあった。「次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの」の中で取り上げた「Total Access」という本の中で著者のレジス・マッケンナ氏は次のように語っている。
「商品やサービスが必ずしも消費者の記憶に鮮明に残るものである必要はない。製品やサービスは単に、満足を得るのに十分であり、購入可能な価格帯であり、アクセス可能であり、便利であればいいだけである」
また「情報を流す仕組みや売るための仕組みはプラットフォームのようなものになる」という予測も早くからある。
電通総研の元社長の藤原治氏は著書「広告会社は変われるか」の中でそのようなプラットフォームを「eプラットフォーム」と呼んでいる。
ネットとメディアが融合すると、媒体は1つになる。いままでのマス媒体もネットも融合するので1つの媒体の出現と相成るのである。その融合の結果生じる新しい媒体を何と呼ぶか。著者はそれを「eプラットフォーム」と呼ぶ。
レジス・マッケンナ氏は、マーケティング側の視点でこのプラットフォームを次のように描写する。
POSだけではない。情報ネットワークの一部とは思われていないものまでつながってくる。例えば店頭に設置されたカメラで顧客の流れのパターンを認識できるようになる。車や携帯電話の位置情報もつながってくる
次の10年で、CRMはよりインテリジェントなネットワークに進化するだろう。より使い勝手がよくなり、リアルタイムのリポートを作成でき、分析、シミュレーションのモデル作成、顧客ニーズを事前に予測し対応する機能なども備えていくだろう。コンピューターの高性能化と通信の大容量化で、こうした顧客中心のアプリケーションが経営陣の高度な代理の役割まで果たせるようになる。CRMは、いろいろなデータベースや、機能、アクティビティと接続されるようになり、そのことによって新しい製品やサービスを顧客に提供する流れを効率よく管理できるようになる
このように本のタイトルにあるような「広告、マスメディアの地位が奪われる」という指摘や、「マーケティングプラットフォーム」という概念でさえ新しいものではない。多くのビジョナリーは、マスメディア、広告に代わってこうしたプラットフォームがいずれ台頭するであろうことを早くから見通していたのだ。
では「次世代マーケティングプラットフォーム」という本の価値はどこにあるのか。読みどころは、どこなのか。それは、そうしたビジョンがどの程度実現しているのかを取材、調査し、1つの流れにまとめたところにあると思っている。
取材してみると、米国ではビジョナリーたちが指摘したようなプラットフォームが実際に形成され始めていた。ただビジョナリーでさえ見通していなかったような事実も幾つかあった。
1つは、CRMだけではなくウェブ解析がプラットフォームの中核になっているということ。
もう1つは、各プレーヤーとも共存共栄、相互連携をルールに急速な技術革新を推進しており、グーグルでさえ1社でプラットフォームを牛耳ることが不可能な状況になっているということだ。
このようなプラットフォームが現実のものとなりつつある中で、われわれは新しい時代にどう対応すればいいのか。
コンピューターがかなりの部分のマーケティング施策を自動で実行するようになる中で、その仕組みの設計部分は、今後も人間が行わなければならない。その設計を行うための仮説作りが広告、マーケティング担当者の仕事になるだろう。
また現在存在するプラットフォームにどのような形で連携していくのかを模索するのがテクノロジー企業の仕事になるだろう。
とはいうものの、対応を決める前にまず世界の最前線で起こっていることを把握する必要があるのだと思う。
次世代マーケティングプラットフォームは9月27日発売予定。現在予約受付中!