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ケータイの中心はアジアだ
と、よく言われるけれども本当にそうなのだろうか。
ケータイ産業と言っても幾つものレイヤーに分かれる。
まずは、ハード機器としてのケータイ端末の製造業のレイヤー。
このレイヤーで圧倒的に強いのがフィンランドのノキア。米調査会社IDCによると、2008年10ー12月期の世界市場シェアの39.1%を取得している。ただ前年同期の40.4%から1.3ポイントのダウン。一方で2位の韓国サムスンが18.3%(前年同期比4.3ポイント増)、LGエレクトロニクスが8.9%(同1.7ポイント増)と、じりじりと追い上げている。日本のメーカーは世界市場での存在感はほとんどない。
一方でその上のレイヤーであるOSのレイヤーでは、オープンプラットフォーム化の動きが盛んだ。主なものはLiMo、symbian、アンドロイドなど。特にアンドロイドはグーグルが無料で提供するOSなので、開発費の高騰に悩む端末メーカーの多くが採用する可能性がある。日本でも今年後半にはアンドロイド搭載の端末がお目見えするのではないかといわれている。
このOSのレイヤーでも特にアジアが特に強いわけでもない。
では「ケータイの中心はアジアだ」といわれるのは、なぜなのか。
1つは、アジアでのインターネット利用は、相対的にPCよりもケータイを通じたケースが多いらしい、ということ。そしてその傾向が続けば、巨大な人口を抱える中国を核にアジアがケータイの中心になる、という論理だ。恐らく発展途上国のユーザーにとってパソコンはやはり高額なのだろう。コストパフォーマンスを考えれば、パソコンより日々の生活に直接メリットがありそうなケータイに軍配が上がる。そして普及したケータイをベースに、インターネット利用もケータイを通じて広がっていくということなのだろう。
IVS 2008 Fallのパネル討論会に参加したクッキー・パンダのリチャードさんによると、例えばインドネシアのケータイユーザーとPCユーザーの比率は5対1だという。
また中国モバイル検索大手YichaのBin Liuさんは、「ユーザーの多さはパワーの大きさになる」と言う。アジアでのケータイユーザーの多さが新しい動き、新しいサービスを生む、と言うのだ。例えば、中国ではケータイ向けウイルスが登場している。そしてケータイウイルス専門のセキュリティ事業者も登場している。NetGという会社だが、ケータイ専門のセキュリティ事業者では世界最大だという。ケータイユーザーが多い中国だからこそ、こうした新しいサービスが世界に先駆けて成立するわけだ。
ケータイの中心がアジアだといわれるもう1つの理由は、世界に類を見ないアプリケーションが特に日本で真っ先に普及しているからだ。i-modeや写メールもそうだし、最近では米mahaloのジェイソン・カリカナスさんが「日本って名刺にまでバーコードが印刷されていて、それをケータイで読みこんでいるだぜ!」ってポッドキャストで興奮気味に語っていた。電子マネーやGPSを搭載したケータイも、日本ほど普及している国はない。こうした先進性という意味で、アジア(というより日本だが)が世界のケータイの中心、ということになる。
つまり最初の問いの答えとしては、アジアはあるレイヤー(先進性、ユーザー数、将来性など)では世界の中心ともいえるが、別のレイヤー(ハードやソフト)ではとても中心とは呼べない、ということになる。
もちろんいろいろなレイヤーごとにリードするプレイヤーが異なるというのは当然だとしても、どのレイヤーが、収益性、成長性という意味で最も重要なのか。どのレイヤーがケータイという事業分野の核になるのか。花形になるのか。
パソコン産業の中核部分は、以前はハード機器のレイヤーだった。しかし技術革新の中心がソフトウエアのレイヤーに移動すると、ハードはコモディティ化し、収益性、将来性ともに多くを期待できない事業領域になってしまった。そしてさらなる技術革新が、産業の中核部分をソフトからインターネットのレイヤーに移動させた。そしてそのレイヤーで力を持ったグーグルが各種コンテンツ事業を無料で提供することで、戦場をコンテンツから広告、マーケティングのレイヤーに変えてしまった。
そのグーグルがケータイ向けOSを無料で配布し始めた。これによりケータイの事業領域の中でも、主戦場がソフトから1つ上のレイヤーに移行するのではないかと思う。つまりコンテンツ、サービス、さらには広告、マーケティングのレイヤーに移行するのではないか、ということだ。この辺りは、まだ自分の中では仮説であり、これからの取材を通じて本当にそのような変化が起こっているのかを確かめていきたいと思う。
もしこの仮説が本当であれば、世界のデジタル情報革命の主戦場は、アジアのケータイという領域になり、その領域の中でもコンテンツ、サービス、さらには広告、マーケティングのレイヤーになるのではないだろうか。つまり日本のモバイル向けの広告、マーケティングというビジネスが、世界をリードし、世界に貢献できる時代になろうとしているのではないか。そんなことをうつらうつら考えている。
注目はケータイ向け広告、マーケティングの技術革新を進めている日本企業。そしてその日本企業のアジア戦略である。そこを今後の取材の中心にしたいと考えている。