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中国北京で開催された2010 China Social Game Summitに参加してきた。
とにかく熱気はものすごい。共催者のInfinity Venture Partnersの小林雅氏によると参加者は400人ほど。日本からは70人ほどが参加していたという。
ソーシャルゲームとは、FacebookやMixiなどのSNS上でプレーできる簡単なゲームで、SNSの友人関係を通じて一気に広がる可能性があることが特徴。ゲームを通じたバーチャルグッズなどの売り上げも好調で、最近でこそ状況が少し厳しくなったというものの、ほとんどマーケティングコストをかけなくてもアイデアと開発スピードだけで巨額の富を得る可能性があるゲーム開発者にとって夢のような領域だ。
またSNSにとってもソーシャルゲームはありがたい存在で、ソーシャルゲームのおかげでSNSがさらに活気づく結果になっている。下のグラフは今回のイベントに参加したモバゲータウンの守安功氏が講演の中で表示したスライドだが、昨年秋ごろからページビューが急速に増えていることが分かる。左側のグラフが会員数の伸びで、右側が月間のページビューだ。
なぜソーシャルゲームがこれほどのパワーを持つのだろうか。
今までのインターネットは「巨大な図書館」だった。ところがソーシャルメディアの普及でネットは今「巨大な公民館」になろうとしている。公民館という建物を作っただけでは人は集まらない。そこで将棋や碁を常備し、公民館の利用を促進させることが必要だ。公民館の将棋の役割をソーシャルメディア上で果たすのがソーシャルゲームだ。
オンラインで他のユーザーと対戦するゲームはこれまでにもあった。そうしたオンライン対戦ゲームとソーシャルゲームの違いは、前者が対戦を目的に見知らぬユーザーとプレーすることが多いものであるのに対し、後者はもともとの友人、知人とゲームを楽しむことが多いということ。ゲームが主で人間関係が従なのか、人間関係が主でゲームが従なのか、という違いだ。ソーシャルゲームは人間関係が主なので、ゲーム自体はシンプルなものでいいのだろう。友達とするから楽しいわけだ。
もちろん中にはゲーム自体が目的でSNSのゲームを利用するユーザーもいるだろうが、きっかけはゲームであってもゲーム以外の活動につながる可能性がより大きいのがSNS上でのソーシャルゲームの特徴だ。実はこの部分がソーシャルゲームの持つ可能性の最大の部分である。
将棋が目的で公民館にきた人の間で、今朝新聞で読んだニュースが話題になって雑談が始まるかもしれない。俳句の会や読書会、音楽会を開催しようという話になるかもしれない。公民館からの帰り道の商店街で買い物をしていこうという話になるかもしれない。ソーシャルゲームがきっかけになってゲーマーでもない普通の消費者がソーシャルメディアを頻繁に利用するようになり、ソーシャルなメディアコンテンツ消費、ソーシャルショッピングにまで活動が拡大する可能性があるわけだ。
またソーシャルゲームを通じて仮想通貨でバーチャルグッズを売買する人が増えれば、仮想通貨による売買が一般的になる可能性がある。今回のイベントで知り合った中国人経営者にちょっとした理由で小銭を貸したのだが、少額決済手段として米国などで普及しているpaypalを使って返済したいと言ってきたので少し驚いた。ソーシャルゲームの業界ではpaypalでの支払いが一般的になりつつあるからなのだろうか。こうした少額決済手段や仮想通貨が普及すれば、パソコンを使ったウェブ上でなかなか構築できなかったコンテンツの少額課金の仕組みが普及する可能性が出てくる。
一般ユーザーの間でのソーシャルメディアの普及と、ペイメントの仕組みの普及ー。これがソーシャルゲームが果たすかもしれないウェブ進化の未来に対する貢献の可能性である。果たしてソーシャルゲームはこの2つの役割を現時点でどの程度果たしているのか、今後果たす可能性があるのか。この視点を通じて2010 China Social Game Summitの様子を報告していきたいと思う。
【修正】モバゲータウンがオープン化したのは今年1月27日でした。昨年10月からページビューが急速に拡大しているのは、モバゲータウン自社開発のゲームに注力したからだそうです。訂正します。