非効率をなくす印刷比較.com=無給の仲間と世界目指す【東京CAMP】【宮崎洋史】

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※ラスクルで検索してこのページに訪れた方。正しい名前はラクスル株式会社です。

[読了時間:1分]

東京CAMPを取材したゲストブロガー、宮崎洋史さんから原稿をいただきました。取り上げたのは印刷比較.com。印刷通販を比較するというネット的なサービスなのですが、宮崎さんはその企業家精神や仲間で支援するという枠組みに興味を持ったということです。前回のTwiRecoの記事もそうですが、宮崎さんの記事には宮崎さんらしい温かみがあふれていて、個人的に好きな文章のスタイルです。【湯川鶴章】

非効率をなくす印刷比較.com=無給の仲間と世界目指す


宮崎洋史

 IT系スタートアップ企業が集う東京CAMP。出展者は、ブースを構えて自分の独創的なアイデアを世に問うのが一般的なスタイルです。

 そんな中、ラクスル株式会社の「印刷比較.com」というサービスは少々異質。社長の松本恭攝さんは、起業の目的が「自分が楽しいことをするのではなく、世の中の非効率を直すためだ」というのです。

 楽しませるのは自分ではなく他人。

 そんな印刷比較.comを詳しくみてみましょう。


▼サービス内容
 印刷業界には数年前から「印刷通販」という新しい受注形態が広まっています。
 それは発注者がネット上から紙のサイズ、納期、部数などを指定し、印刷用データも発注者側で制作しネット上から送るというもの。印刷会社側には営業マンはおろか、デザイナーさえ不要なので低コスト運用が可能となり、発注者には低価格というメリットが生じます。

 印刷比較.comはこの印刷通販の比較サイトで、10数社に及ぶ印刷通販の比較をワンストップで可能にします。IT家電製品に価格コムがあるように、印刷通販には印刷比較.comがあると言うとイメージを持ちやすいでしょうか。

 想定ユーザーはデザイン会社、広告代理店、同人誌、学生サークルなど。収益の柱は広告収入で、サービスインから2ヶ月で既に今年度黒字(※)を確定したそうです。

▼目的は、世の中の非効率を直すこと
 松本さんは、起業前まで、ATカーニーという経営コンサルティング会社に勤務し「経費削減プロジェクト」を数多く経験したそうです。そこで気がついたのは「各種コストの中で印刷コストは削減幅が大きい」ということ。削減幅が大きいと言うことは、つまり、非効率が放置されてきたということでもあります。

 印刷業界は縮小しつつあるとはいえ今でも6兆円を超える巨大市場(※2)です。その巨大市場で非効率がまかり通っているということは、見方を変えれば、ビジネスチャンスでもあるわけです。実際、全体では縮小を続ける印刷市場の中で、印刷通販は成長を続けているといいます(※3)。

 松本さんが、印刷通販を「更に効率的」にする印刷比較.comを立ち上げたのにはそんな背景があります。

 僕はこの起業背景に興味を惹かれました。ITを駆使したサービスが増えると人間は単純作業から解放されると思うからです。

 松本さんによれば、多くの印刷通販サイトを「個別に」訪れて比較検討すると数時間かかるそうですが、印刷比較.comを使えばそれは一瞬で済みます。同じ値を何度も入力するという単純作業がなくなるわけです。

 効率化によって空いた時間は「別の仕事」で埋められ、人間はますます忙しくなるだけだという反論が聞こえてきそうです。

 でも、うーん、そうでしょうか。

 部分的な効率化は別の単純作業へ人を追いやるでしょうかが、もし、全ての単純作業がITによって代替えされてしまったら…。
 そんな世の中に残るのは「単純でない作業」、つまり都度人間が知恵を働かせないといけない仕事で、それって「面白い仕事」に違いありません。

 松本さんの視野にはどのくらい先の未来が映っているのかわかりませんが、少なくとも僕はIT起業家への期待を大きくしました。

▼「ぬるい会社」でくすぶる人材に活躍の場を
 印刷比較.comは9人のメンバーで運営されていますが、そのうち社員は2人のみだそうです。残りの7人は、他社で働く各分野のスペシャリストで、彼らは本業外の時間を使って松本さんを手伝っています。ネット系企業で働くメンバーはSEOを担当し、広告代理店で働くメンバーは広報を担当する、といった具合です。

 注目すべきは、社外メンバーへは金銭的報酬を一切支払っていないということ。代わりにメンバーは「出資」という形で印刷比較.comに参加しています。

 松本さんは言います。優秀な人材ほど「会社はぬるい」とくすぶっている。そんな人材が能力を100%発揮出来るように、雑務は全て自分が引き受けている、と。

 「自分が楽しいことをするのではない」からこそ可能な運営スタイルです。天才的な社長がグイグイ引っ張る会社もあってよいですが、「みんなの力を合わせて方式」の方が、成功確立は高いかもしれません。

▼アジアナンバーワンの印刷会社に
 松本さんには野望があります。それはアジアナンバーワンの印刷会社になり、海外でIPOを果たすこと。

 印刷通販は伸びているとはいえ、全体では縮小が続く国内印刷市場。無報酬で能力を提供してくれたメンバーへの恩返し。松本さんが海外へ飛び出しIPOを狙うのは当然でしょう。

 「自分が楽しいことをするのではない」と言った松本社長。その心に嘘はないのでしょう。
 ただ僕には、メンバーと力を合わせ非効率を直すことを松本さんは「楽しんで」いるように見えました。

※1 ラクスルの会計年度は8月締め
※2 経済産業省 工業統計より
※3 ラクスル調べ

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