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英IT関連民間団体BCS, The Chartered Institute for ITは、情報技術と人々の幸福度には相関関係があるとする報告書をまとめた。またその中の国際比較で、日本人は経済力の割には情報化によって幸福になっていないことが分かった。
この報告書は「The Information Dividend: Why IT makes you ‘happier’(情報の配当、なぜITは人々を幸福にするのか)」というタイトルで、このほど最終版がまとめられたばかり。
それによると、39カ国3万5000人を対象にして行われた聞き取り調査の結果を統計学的手法で分析したところ、情報技術が人々の幸福度を10点満点で平均0.1ポイント上昇させる効果があることが分かった。
また英国内でもより詳細な聞き取り調査を実施したところ、特に低所得者や女性の幸福度に情報技術が大きく貢献していることが分かった。
情報技術の恩恵として低所得者層の間では「価格比較サイトで商品を安く変えた」「自宅で格安のオンライン授業を受けることができる」「ネット上では肩書きも学歴もなく、平等に扱われる」などの回答が寄せられたという。
女性回答者の間でもITによって幸福度が増したという回答が多く、ある女性は「小さな子供を抱えて外出できないので、iPhoneでFacebookに毎日アクセスしている。(iPhoneで人々とつながることは)わたしにとって非常に大事なことなんです」と語ったという。
またBCSでは携帯電話やブロードバンド回線の普及率、ネットの利活用率などに加え、人生の自由度、自主性が確保できているかなど、個人の幸福感に関係すると思われる心理状況に関するアンケート調査の指数などを考慮にいれた「情報幸福度(Information Well-being Index)」を設定し、国際比較をした。
情報技術のインフラがどの程度普及し、それをどの程度利活用し、さらにはその結果、幸福度がどの程度向上したかを比較する指標のようで、それによると日本は39カ国中15位だった。
ただ経済大国は当然、携帯電話普及率、高速インターネット回線普及率が高い。普及していても十分に活用していない場合や、その結果生活が豊かになったと実感していない場合もある。一方で、途上国の中にも今ある技術インフラを最大限活かして、幸福度が増した人が多い国があるかもしれない。
そこでBCSでは一人当たりの国内総生産(GDP)をベースに、経済的豊かさに見合った情報技術インフラ普及度、その利活用度、およびそれからくる幸福度の期待値を推計し、その期待値と実際の情報幸福度との差異の大きさでランク付けした。
数字がプラスになっている国は、実際の経済的豊かさ以上にITを有効利用し、その恩恵を受けている国ということになる。反対にマイナスの国は実際の経済的豊かさにも関わらず、十分にITを活用できておらず、その恩恵を受け人生が豊かになったとは実感できていない、ということになる。
結果は日本はマイナス0.29ポイント。経済力を考慮した情報幸福度では一挙に32位に転落した。経済力を考慮に入れる前と後の順位の格差は17位で、調査対象国の間で最も大きな順位転落幅となった。
日本は経済力の割にはITの利活用が幸福度につながっていないということになる。
これはどういうことなんだろう。日本はSNSの普及率が低いということと関係あるんだろうか。
統計手法に問題があるのかどうかは専門的過ぎて分からないし。
やはり、梅田さんが指摘したように、まだまだ日本のネットは「残念」な状態ということなんだろか。
僕自身はITで幸福度が増したし、周りの人もそんな人ばっかり。でも一般的にはそうでもない人が多いんだろうか。うーん。
【追記】ずっとずっと昔からオンラインでつきあいのあるbroomさんから、この記事についてメールをいただきました。長すぎてコメント欄におさまらなかったそうです。相変わらずするどい考察なので、紹介させていただきます。Broomさん、ありがとうございました。
昨日の英国団体の調査のエントリー、面白かったです。自分でも関心があってご紹介のあったレポートを読んでみましたので、以下、呈されていた疑問への1つの回答案として、コメントさせてください。
・この調査でまず作成されている「ITで幸せになれたかどうか」の指標(仮にSimple IWS)は、世銀のWDIと、WVSの調査という、かなり性質の異なる指標を統計的に合成したもので、対象国のインフラ整備の側面と、文化や社会的な背景、という異なった側面が、それぞれどう指標全体に反映されているかが分かりにくい嫌いがあります。
・たとえば、元の指標の8番や9番(レポートのP.40参照)では、ある種の価値観からの「幸福」という色彩が感じられ、文化的な背景によって差が付きそうです。
・実際に、このSimple IWSをみると、既にこの段階で、北欧系・アングロサクソン系と、大陸系(フランス、ドイツ)、そして日本のそれぞれには、かなりの差が付いていますので、文化や社会的な背景の違いが、
Simple IWS全体にかなり反映されているのではないか、と思います。・そして、おそらく新興国と先進国を同じグラウンドで比較したかったからだろうと思いますが、Simple IWSから、1人当たりGDPのような経済的な要因を除いてみたのが、疑問を呈されていた『Adjusted IWS』です。
・さて、この「GDPの影響を除く」という処理ですが、単純に考えると、GDPの影響は、後者の文化・社会的な指標より、前者のインフラ指標に大きく出るはずなので、インフラの側面と、文化・社会的な面のどち
らでSimple IWSの得点を稼いでいたかによって、Adjusted IWSへの影響度合いが違ってくるはずです。・たとえば、インフラ指標でSimple IWSの順位を稼いでいた国は、この「GDPの影響を除く」ことによって、より大きく順位を下げる可能性があり、日本、フランス、ドイツはそういった影響を受けているのかも
しれません。・他方、北欧系やアングロサクソン系があまり大きく順位を下げなかったのは、文化・社会的な指標の側面、たとえば、上述の8番や9番などで、Simple IWSの順位を稼いでいたからでは?
・結果として、ザンビアが1位になるくらいですから、新興国と先進国の比較の点では、この調査はユニークな結果を提示出来ていると思いますが、最終結果において先進国間に現れている差異についてまで議論する材料としては、ちょっと不十分なのではないか、と思いました。説得力を増すには、別の観点からのAdjustmentも並べて提示してみればより良かったのではないかと思います。
IT以外のクラススタと付き合うことが多いが、IT業界に足を突っ込んでいる僕たちと、そうでない人のITに関する受けとめ方は、互いが想像できないほど違う。さらに、例えば音楽系でも、クラッシック系とクラブ系のクラスタでITの認識が違う、といったことも起っている。
大きな要因は「情報」。IT教育はやっていないも同然だし、米のように税申告や地域コミュニティでネットを使う必要にせまられていないので、多くは趣味や仕事上の利用に限定され、ITについての知識がまばらになっているのが現状。
日本のユーザーは、90年代の普及期を経て数年以上の経験を持っていると思うが、多くは米発の最新情報などは全く知らないし、その使用範囲は限定的で各人それぞれ異なっている。
ゲームサイトの「モバゲー」「グリー」の無料モデルに問題意識を持ち反対運動をする人がいたり、「仲間とのコミュニケーションはミクシィに決まっている」というヘビーユーザーも存在するが、IT業界のように「みんなTwitterやってると思いますが」みたいな共有項は存在しにくい状態にある。
つまり、互いが互いのIT活用を知らない状態。さらに雑誌などの情報は激減し、ネットインフラ普及のメリットは享受しても、IT界の断片だけに踊らされているようなもの。だから、「ITで幸せになっていない」という結果にはとても納得できる。