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ウェブがまたしてもパラダイムの転換期を迎えようとしている。パラダイムの転換期とは、これまで「常識」とされていた考え方が180度ひっくり返ることを意味する。そして今後、1,2年でひっくり返ることになるとわたしが考えるのは、ウェブ上のコンテンツはほとんどすべて「フリー」であり、コンテンツビジネスは「フリーミアム」が基本という「常識」だ。
「フリーミアム」とは、無料コンテンツで囲い込んだユーザーのほんの一部に対して有料コンテンツを販売するというビジネスモデルだ。このブログメディアTechWaveも、フリーミアムがビジネスモデル。ブログメディア上で収入を得ようとは思っておらず、読者のうちのほんの一部の方が参加してくれるセミナー、勉強会、ツアーで事業が成り立っている。今日のウェブ上のビジネスの多くは、このようにほとんどがフリーミアムを実践している。
このビジネスモデルが180度ひっくり返ると、思うわけだ。
なぜそう思うのかを詳しく説明する前に、前提として理解しておいていただきたいことが1つある。それは「ソーシャルの次の時代」とタイトルで書いているが、それは決して「ソーシャル」が一時的な流行だという意味ではない。ソーシャルにはものすごい情報の伝播力や説得力がある。長期的な関係を強化する力は、これまでのどのメディアよりも強いし、ソーシャル施策の結果、売り上げが上がったという事例も出始めている。特にネット上に自分の本当の人間関係(リアルソーシャルグラフ)が乗り始めたおかげで、今までにない情報の流れ方が始まっている。ネットの軸はリアルな人間関係になり、その周辺にネット上だけの付き合い(バーチャルグラフ)が存在するようになっている。(関連記事:(関連記事:Zyngaの新ゲーム“CityVille”が早くも“FarmVille”を追い越した 【三橋ゆか里】 : TechWave、ミクシィが動いた これがソーシャル広告のチカラ【湯川】 : TechWave)
リアルソーシャルグラフによって変わったネットの情報伝播の仕組みを取り入れることは、これからのメディア、ウェブビジネスを考える上で不可欠になっている。ソーシャルは、当然のインフラになりつつあるわけだ。それを前提とした上での「次の時代」という意味だ。
さてこの新しいインフラのおかげで、「フリーミアム」というビジネスモデルが今また大きな変化を迫られている。
どのような変化なのか。これまでのウェブの歴史を見ていこう。
ウェブが登場したころは、「ウェブには中抜きの力がある」と言われた。生産者と消費者が直接結びつき、仲介者、中間業者が不要になるという説だ。仲介者が不要になるので、消費者はより低価格でモノを購入でき、生産者はより大きな利潤を得ることができる。そんな風に考えられていた。
しかし実際にはそうはならなかった。もちろん時代の波に乗れない中間業者はすべて淘汰された。しかしAmazon、楽天、価格コム、Googleといった新しい仲介者、中間業者が登場した。オープンなウェブ上に出される情報、コンテンツ、商品は一列に横並びになり、激しい価格競争を迫られるようになった。確かに消費者は今までより安く商品を購入できるようになった。しかし生産者の利潤は徹底的に圧迫されるようになった。「もはやオープンなウェブ上でのビジネスは成立しない」ー。そう考えた生産者、特にデジタルコンテンツの生産者たちは、商品であるコンテンツの一部を無料で公開し、集まったユーザーのうちの一握りのロイヤルカスタマーに対しクローズドな環境の中で有料コンテンツ・サービスを販売するようになった。これが「フリーミアム」と呼ばれるビジネスモデルだ。
ネットのビジネスモデルは「フリーミアム」しか成立しない。そんな風に思われ始めた中、登場したのがAppleのAppStoreである。無料が当たり前になったウェブ上で、再び有料でコンテンツを販売できるようにした仕組みである。
ここで販売されるコンテンツの多くはアプリというカタチを取った。多くのアプリはデータの送受信が前提になっており、アプリ自体をコピーしてもデータを送受信しない限り使えない状態になっている。
フリーミアムは、コンテンツの完全コピー、配布が簡単にできるという状況の中から苦し紛れに誕生したビジネスモデルだが、コンテンツをコピーするだけで意味がなくなったわけだ。アプリを入手後にデータを送受信する権利を得るためにユーザーはアプリに対して代金を支払うようになった。
コンテンツ販売が成立するようになった。「フリーミアム」以外のビジネスモデルが成立し始めたわけだ。
ただコンテンツ販売で成立するのは、非常に規模の小さいコンテンツ制作者だけだった。アプリを何万本も売って大儲けしました、という話は、ほとんどが個人、零細企業の話だった。AppleのAppStoreのようなアプリ市場では、コンテンツが横一列に並べられ、価格競争を迫られる状況はこれまでと変りなかった。それなりの規模の企業にとっては、やはりコンテンツ販売だけで事業を成立させることは困難な状況が続いている。
その状況を変え、新しい中間業者さえ不要にするような技術がHTML5である。
HTML5は、ウェブの表示言語HTMLの次世代バージョンで、この言語で作成したウェブページはまるでアプリのようにいろいろなことが可能になる。ゲームのように複雑な動きでさえHTML5を使えばウェブ上で可能になる。ブラウザーを使ってアクセスしたサイトが、アプリのような使い勝手になるわけだ。(HTML5に関しての詳しい情報はHTML5という言葉に圧倒され気味の方への、HTML5入門 | Ext Japan Blogをご覧ください。)
スマートフォンなどにダウンロードする「アプリ」に対して、プログラムのダウンロードを必要としないHTML5ページを「ウェブアプリ」と呼ぶようになってきているが、「ウェブアプリ」はスマートフォンの画面にアイコンを置くことも可能だし、ユーザーにとってはダウンロード型「アプリ」とまったく区別が付かない状態だ。見た目は同じなんだが、その仕組みの違いが業界勢力図に大きな影響を与える可能性がある。
というのは「ウェブアプリ」でコンテンツを作れるようになると、もはやAppleやAndroidのアプリ市場向けにアプリを開発する必要がなくなるからだ。アプリ市場の審査を受けることも、審査ルールの変更にびくびくすることもなくなる。何よりも収益の3割をアプリ市場に支払う必要がなくなる。横一列に並べられ価格競争を迫られることもない。コンテンツ事業者は、自分の思うようにコンテンツを販売できるようになるのだ。
ただアプリ市場には集客力と課金の仕組みがある。スマートフォンユーザーの多くは、スマートフォンのトップページに位置するアプリ市場のアイコンをタップしてアプリを探して購入する。アプリ市場にコンテンツを並べないと、なかなかユーザーの目につかないという状況が続いている。またアプリ市場は既にユーザーのクレジットカード番号など決済の仕組みが備わっている。ボタン一つで購入が完結するようになっている。この集客力と課金の仕組みがあるので、コンテンツ開発者はアプリ市場から離れられないのだ。
しかしその状況が変わりつつある。
1つがソーシャルの力だ。ソーシャルの仕組みを組み込んだコンテンツは、ものすごい勢いで普及していく。ソーシャルゲームがその好例だ。今後ソーシャルの仕組みを組み込んだコンテンツが増えていくだろし、そうなればアプリ市場の集客力に頼る必要がなくなるだろう。
もう1つの課金の仕組みも、スマートフォンが「おサイフケータイ」化する中でそう遠くない将来に、いろいろな決済方法が整備されていくだろう。アプリ市場の決済の仕組みに頼る必要がなくなるわけだ。
つまりアプリ市場に、アプリを並べる意味がなくなる。アプリ市場という仲介者も不要になり、今後こそ本当に中抜きが始まるかもしれない。コンテンツが再び「キング」になるかもしれない。今はそんな風に考えている。
自分でもまだまだ荒削りな議論だと思います。みなさんは、どう思います?ライブドアの新サービスANKERを使って議論しませんか?
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ただしHTML5を使って、タブレット、モバイルの可能性を最大限に引き出す工夫が必要だろう。タブレット向けコンテンツでは以下の電子書籍が最先端だと思うが、これを超えるようなコンテンツがこれから次々出てくるのだと思う。これにコミュニティーの要素も入っていくんだと思う。そうなればコピーする意味がなくなる。(関連記事:Facebookがまたしてもベンチャー買収 ソーシャルの次の主戦場はデザイン【湯川】 : TechWave)
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