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廣田達宣
(@TatsunoriHirota)
TechWave読者の皆様はじめまして、SpinningWorksというスタートアップでエンジニアとして新規事業開発に携わる廣田達宣です。先日、スウェーデン発のWrappというソーシャルギフトサービスの創業者・Carl Fritjofssonと渋谷でランチをする機会がありました。近々日本に進出するこのWrappはユーザーとして、またサービス開発者としても非常に興味深いものです。TechWave読者の皆様にもご紹介したく思い寄稿させて頂きます。
Wrappとは
Wrappは友達の誕生日等のイベントにギフトカードを贈る事が出来る、Facebook連携のWEB・モバイルアプリケーションです。有名ブランド洋品店からピザレストランまで多岐に渡るギフトカードは発行元からスポンサーされている為、贈り主は無料もしくはリーズナブルな値段で素敵な贈り物をする事が出来ます。昨年の11月にスウェーデンで始まって以来、アクティブユーザー約18万人、贈られたギフトカード150万通以上、欧州で約60契約ブランドという爆発的な成長を遂げてきました。これまでに8ヶ国に進出し、近日中に日本版がローンチします。
Wrappのスゴい所その1:O2Oマーケティングの革命児
市場規模80兆円とも言われ、近年世界的に注目を集めているO2O(Online to Offline、オンラインからのリアル店舗来店促進)サービス。つい1-2年程前にスタートアップ界隈を席巻した共同購入クーポンもその1つと言えます。しかし記憶に新しいおせち問題や来店後のリピート率が低い等の課題が浮上し、以前ほどの盛り上がりを見る事は出来ません。そんな中、ある意味共同購入クーポンの亜種とも言えるこのWrappは、O2Oマーケティングに革命を起こすと言っても過言ではないでしょう。
想像してみてください。あなたの誕生日に大学時代の恋人からメッセージが届きます。同封されているのは代官山あたりの小洒落たセレクトショップのギフトカード。あいつからの贈り物だし、次の休日にちょっと足を伸ばして久々のショッピングでも…となるのは想像に難くありません。
また、安さだけを目当てに購入する共同購入クーポンとは異なり、 “大切な人からの贈り物” というストーリーが付与された購入体験は、高いリピート率を実現しているそうです。ユーザー、贈られた相手、クライアント企業、Wrappと、4者全てがWin-Win-Win-Winとなる素晴らしい事業だと思います。
Wrappのスゴい所その2:創業メンバーがハンパない
Wrappは、華々しい経歴を持つスウェーデンの起業家達によって創業されています。
- Hjalmar Winbladh: 1997年にIPOし、その後Microsoftに買収されたモバイルインターネットのSendit創業CEO、2006年にはモバイルVoIPのRebtelを創業
- Andreas Ehn: 無料音楽ストリーミングサービスSpotify初代CTO
- Magnus Hult: 同じくSpotify初期メンバーのエンジニア
- Aage Reerslev: モバイルブラウザデベロッパのSquace創業者
- Leo Giertz: スウェーデンの著名iPhoneアプリデベロッパBarefoot Hackers創業者
- Carl Fritjofsson: グルーポン・スウェーデンの元戦略アドバイザー
- Fabian Mansson: H&MとEddie Bauerの元CEO
また、その他のボードメンバーもハンパないです。LinkedIn共同創業者のReid Hoffmanや、Skype共同創業者のNiklas Zennstromが取締役会に名を連ね、日本支部の立ち上げメンバーはかつてSkypeのローカライズを経験しています。これだけ豪華なメンバーが揃っているのであれば、爆発的な大ヒットにもうなずけるというものです。
Wrappのスゴい所その3:迅速な海外展開とその為の資金調達
Wrappは昨年11月の創業から2ヶ月後の今年1月、8億円近いシリーズAのファイナンスを行いました。それらを元手にノルウェー・イギリス・フランス・ドイツ・オランダ・アメリカ・台湾・トルコなど既に8ヶ国に進出し、現在も急速に海外展開を続けています。これはスウェーデンが人口1000万人にも満たない小国である事と無関係ではないでしょう。端からグローバル展開を見据えた事業を展開しなければ、大きなビジネスを作る事は出来ないからです。
筆者の思ったこと
正直、僕はCarlと話していてすごく悔しい気持ちになりました。Wrappの生まれたスウェーデンは、ITベンチャーの聖地・シリコンバレーではありません。何故これほど面白いサービスが日本からは出てこないのでしょう?色々な理由があるとは思いますが、実際に彼と話して日本のITスタートアップに必要なのは、次の4つの要素ではないかと思うようになりました。みなさんはどう思われますか?
- M&A市場の整備とそれによる経験豊富なシリアルアントレプレナーの増加
- 巨額の資金調達を可能にするベンチャーファイナンス市場の活性化
- 最初から世界市場を見据えた事業開発
- 世界的に成功したITベンチャーや起業家というロールモデルの存在
というわけで、まもなく来日する注目スタートアップ・ソーシャルギフトサービスの “Wrapp” のご紹介でした。まだまだ未熟ですが、自分もサービス開発者の端くれとして、将来的に日本からこんな熱いサービスを生み出す事が出来ればと思っています。少しでも早く使い始めたい方の為に、Wrappの事前ユーザー登録はhttps://www.wrapp.com/jp/から。
【参考】
Wrapp Prepares for Introduction of Social Gifting in Japan
http://finance.yahoo.com/news/wrapp-prepares-introduction-social-gifting-000000263.html
Wrapp Brings Social Gifting to U.S. with Major Merchants
http://www.businesswire.com/news/home/20120430005620/en/Wrapp-Brings-Social-Gifting-U.S.-Major-Merchants
オンライン・ツー・オフライン(O2O)コマースに1兆ドルの可能性がある理由
http://jp.techcrunch.com/archives/20100807why-online2offline-commerce-is-a-trillion-dollar-opportunity/
慶應義塾大学経済学部4年/株式会社SpinningWorksエンジニア/NPO法人アイセック・ジャパン元慶應支部代表
1988年生まれ。大学生活の前半は海外インターンシップを運営するアイセックにて活動、崩壊寸前の慶應大学支部を立て直し2年間で事業成果700%増に導く。
その後各種ビジネスコンテスト優勝・入賞、スローガン株式会社広告営業、ひきこもり、北インド放浪、2度の留年を経験。現在はスタートアップ立ち上げに向け、気合いでプログラミング&デザインを勉強中。趣味はサイクリング、ヨガ、半身浴、アニメ鑑賞、RSS購読など。
Twitter: @TatsunoriHirota
ブログ: http://tatsunorihirota.com
蛇足というか補足を少々。
日本ではまだ使えず実感が掴めない部分もあるが、FAQを見る限り、以下のような操作・体験になるようだ。
・iPhoneやAndroidアプリを用い、Facebookアカウントと紐付けられる。
・表示される友人から、ギフト(無料・有料)を贈りたい相手と内容を選ぶ。
・贈られた相手にはFacebookメッセージなどで通知が来る。
・また、送り主が共有を許可すれば、他の友人もそれに乗せてギフトが贈れる。
ギフトには、オンラインで使えるもの、オフラインで使えるものがあるが、店で使う場合には、スマホアプリ上で”Wallet”タブから”Use in store”をタップし、表示されるバーコードをレジで見せる。
また、日本進出に関する質問にWrapp側は以下のように返答してくれた。
Q:日本進出はいつ?
A:まだ具体的には公表出来ない。
Q:日本でのローンチ時にはどのようなギフトが贈れるのか?
A:これもまだ言えないが、例えばUSではH&MやSephoraなどを扱っており、日本展開時にもグローバルブランドを入れたい。
Q:取引数や目標
A:日本でのギフト系アプリのスタンダードを目指す。発祥地スウェーデンでは、たった3ヶ月で同国のFacebookユーザーの3.5%を獲得した。
Q:gifteeとの違いは?
A:gifteeが小規模のローカルビジネスをターゲットにしているのに対して、Wrappはグローバルブランドを扱っている。また、Wrappは無料でギフトを贈ることが出来る。これがここまで急成長した理由だ。
Q:日本支社を設立?
A:現在3名のメンバーがいる。
Q:台湾やトルコなど、欧米とは異なる文化圏での進出経験がどう日本進出に活かされているのか?
A:Wrappの核は贈り物をしたいという人類共通の行動で、そのニーズに国境はない。日本市場は、やはり小売りのエコシステムがヨーロッパのそれとは異なることが大きいと感じている。