「イケてる」サービス企画についての雑感、突き抜けるスタートアップについて 【増田 @maskin】 #btcamp

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[読了時間: 2分]

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 ベテラン層などがサービスや企画、会社に対し、時々「イケてる」という言葉を使う。

 「かっこいい」とか「気が効いてる」といったあたりの意味ではあると思うが、「イケてる」からダメで、「イケてる」からイイ、お洒落で独奏的なのか、売上をガンガン上げているのか、何をどう指しているのか正直言ってさっぱり解らなかった。実際に、説明する人は少ないし、妙に求心力のある言葉なので注意して受け止めるようにしていた。

 そこである日、ネットイヤーグループの立ち上げやカブドットコム証券株式会社社外取締役、ミクシィ社外監査役等を歴任、最近ではスタートアップ支援組織「Femto Startup」を立ち上げた「起業のファイナンス」等の著書でも有名な磯崎哲也氏に直接聞いたことがある。彼は「イケてる起業家」「イケてるベンチャー」という表現をよく使っていたからだ。

「イケてる、って何ですか?」




 「イケてる、の言葉の定義を教えてください」という質問に対する磯崎氏の回答は明確だった。

 「会計がイケてる。つまり、数字の上で適切な経営をしている企業のこと」(磯崎氏)

 つまり格好いいわけでもなく、むしろシンプルにスタートアップが順調に成長するための諸行動とその結果を追っている彼ならではの「イケてる」である。

 先日の「Pitapat (旧Facematch)サービス終了」の記事の蛇足におけるTechWave編集長 湯川の「イケてる」はグリーの田中氏のコメントを引用しつつ、「マーケットにフィットしたサービス設計を」というパフォーマンス改善の指摘だった。

 一方で「なんでもいい、おもしろければいい」という人も大勢いて、結局のところ何をイケてるかと表現するのは、その人本人の視点によって変わるのである。

イケてる、を突き抜けろ

 ただ、「イケてる」ってよくわからないよね、注意した方がいいね、ということだけがこの記事で伝えたかったことではない。実は主張したいのは別のところにある。

 サービスやプロダクトを出す側の立場で考えたとき、「イケてる」という言葉は、サービス改善の重要なキーワードになる。うしろ「イケてる思考」をうまく活用することで、価値創造の武器にすらなるという話である。

 例えば、磯崎氏のイケてるは、上場する目的でスタートアップを成長させようとする人にとっては金言そのものになり、湯川編集長のイケてるは、サービスのマス浸透を目刺すのであれば一考すべきアドバイスである。

 「イケてる」は、主語と立場を明確にすることで価値が出るため、磯崎氏のケースでは、“ただ、好きなことをやりたい”、という企業にはフィットしにくい部分もでてくるし、湯川編集長の蛇足も技術ハッカソンにおいては的を少し外れた話になる。

 この「イケてる」のポイントをいかに絞り込むことができたプロジェクトは強い競争力を持つ。というよりは、自分達のサービスの「どこが、どうして、イケてるか」と明確にするプロセスは、マーケティング施策そのものに限りなく近いと言ってもいいだろう。

 逆に、開発している中の人たちだけで「これイケてるよね」「これおもしろいよね」というのは本末転倒であり、実際に、基礎的な競争力や成長力において勢いがつかない傾向にある。

 考えるべきは「誰に/どこに、何を、どうする上で、どうイケてるのか」という点。会計的にも成長戦略的にも、デザイン的にも、フィーリングにおいても「イケてる」を追求できた時、そのプロダクトは本当にイケてる状態になる。Pitapatのような若いチームが、いきなりそこに到達することは極めて難しい。ただ、そこに向かう力ことが求められる時代だからこそ、彼らのようなチームが脚光を浴びるのだろう。

 実は今日、昨年Pitapatが優勝を飾った学生開発コンテスト「ブレークスルーキャンプ2012」の決勝プレゼン大会がある。筆者は前年に続き審査員として参加するため、ある種のエールとしてこの雑記を残す。

 彼らを含め、「イケてる」という言霊を突き抜ける人達が沢山出ていって欲しいという願いを込めて。

【関連URL】
・Facematchが「Pitapat」として国内で正式ローンチ、チーム結成から1年 タコ部屋からCA子会社へ【増田(@maskin)】
http://techwave.jp/archives/51742877.html

蛇足:僕はこう思ったッス
20歳そこそこの僕がシリコンバレーや国内の敏腕エンジニア先輩とのやりとりで見た様々なドラマの中で、やはり強く印象の残るのは「極限までシンプルにした突き抜けたプロダクト」の存在だ。最近ではTwitterの初期もそうだろう。僕が覚えている中では「Ram Doubler」というプロダクトの印象が強い。あのソフトはメモリーが高額な時代に、ソフトをインストールするだけでメモリを倍にしてしまうというもの。開発した本人からほんの数時間で作りあげたという話を聞き衝撃を受けた。誰にでも考えられそうだが、そこに落し込み競争力を持つ製品にしていったのは、強い信念と意欲があったからに思えた。自分の創出プロセスの中でも短期間にメッセージを一つに絞り込めた作品は今だに評価が高い。それと、数名で想いを詰め、一人で作りあげ大成功したサービスとしてはfacebookやmixi、greeなど数え切れない。
参入障壁が極限まで低く、もはや誰でも起業できる現代。しなければならないのは「1メッセージの創出」だ。それは「イケてる」という言霊とのペアで強力な力を持つ。もちろん、「シンプルな一つ」を導き出すのは、どんなクリエイティブ活動よりも大変で時間がかかる。それを肝にすえ是非、みんなで突き抜けていければと思う
著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveの活動タグは創出・スタートアップ・音楽・表現・ミディアム・子ども・日本・世界・共感。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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