「目指すは製造業の野茂」テラモーターズ徳重徹氏 第2回メイカーズ・サミットから【高野元】

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  いま時代の先端を行っているビジネスパーソンの間で最もホットなキーワードの1つになっている「メイカーズ革命」。書籍Makersで一気に火がつき、東京ではメイカーズ革命に関連するイベントが乱立している状態。その中でひっぱりダコの講師がテラモーターズの徳重徹氏。その徳重氏の講演をテック系コンサルタントの高野元さんがレポートしてくれました。(湯川鶴章)


高野 元 (たかの はじめ)

1/21に開催された第2回メイカーズ・サミットでは、テラモーターズの徳重徹氏が基調講演に登壇し、集まった約150名の聴衆に対して「時価総額1000億円を超えるスーパーベンチャーの創出は日本でもできるはずだ。テラモーターズは、日本で企画しアジアで作ってアジアで売る、日本発ベンチャーの新しい成功モデルを目指す。2013年はモノづくり革命元年、心構えから変えて、共に変革の担い手になろう!」と語った。


徳重氏はまず、メイカーズ・ムーブメントは「製造業が個人の手に渡った」のであり、個人が好きなデザインを小ロットで生産する環境になりつつあるとした。規模の経済を生むためには、品質向上・供給体制・製品保証・資金調達・人材確保、など数多くの課題がある。しかし、最も優秀な人材がベンチャーに来るようになったことと、優れたビジョンがあれば資金調達が可能となったことから、大企業でなければできなかった製造業にもベンチャー企業のチャンスが生まれていると語った。

シリコンバレーでは、テスラ・モーターズやSquare(スマホ決済)など、ハードウェア分野でも時価総額が1000億を超えるような「スーパーベンチャー」が出現している。「ワクワクする」優れたビジョンのもとに良い人材が集まり、潤沢な資金調達が行われているからだ。資金調達は日本だけでなく、アジアでもシリコンバレーでも可能であり、こうしたスーパーベンチャーの創出は日本でも必ずできる、と徳重氏は力説した。

いまやグローバルでビジネススキームを最適化する時代であり、最適配置をした結果として、企画・設計・製造・市場がばらばらになる事例も増えている。例として挙げられた中国の太陽電池メーカーであるサンテックは、中国で設計・生産してドイツで販売してきた。グローバル最適化は、社内事情にとらわれずにリスクを取る大胆な意思決定が必要であり、日本の経営者がこれを苦手としていると指摘した。また、日本が誇る高品質は新興国では過剰品質であり、7割の品質で十分であるとして、この点でも意識改革が必要ということだった。

テラモーターズが挑戦しているEV分野は、部品のモジュール化が進んでおり、結果として部品点数が大きく削減されている。モジュール設計は優秀な人材が集中して取り組めばよく、これまで日本企業が強みを発揮した「すり合わせ」の苦労が不要となる。さらに一定の規模になると、水平分業のほうが利益率が高くなるという調査結果もあるそうだ。

部品点数の削減は労働者の解雇につながり、水平分業はグローバル再配置の意思決定が求められるため、大企業ではどうしても対応が難しくなる。市場の変化に追随できるスピード感がより必要な、これからのエレクトロニクス産業は、EVも含めて大企業よりもベンチャー企業にチャンスがあるとした。

この10年はグローバルブランドが大きく入れ替わった。10年前のトップブランドにはソニーやコダックが入っていた一方で、現在トップブランド入りしているAppleやSAMSUNGは、10年前には影も形もなかった。台湾の鴻海は25年前には25億円程度の売上だったが、製造業が垂直統合から水平分業へとシフトする産業構造の変化を捉え、いまや10兆円企業である。「ベンチャー企業が産業構造の変化を捉えて、将来の大企業になる可能性は十分にある」という説明には説得力があった。

テラモーターズは、すでに電動スクーターでは国内シェアトップだが、創業3年弱で社員も15名足らずだ。しかし、熱いビジョンを語って投資家から6億円を超える資金調達を果たし、日本で企画設計してアジアで生産する体制を着々と築いている。TOEIC850以上で新興国にチャレンジするマインドを持った優れた若手社員を抱えるようになり、スマートフォンとの連携が可能な特徴ある新製品を準備するところまで来ている。

また、とくに台湾や東南アジアで日本以上に評価が高いことにも触れた。そもそも日本人・日本の会社に対する信用が高く、そのうえで日本市場トップシェアのEVであり、トップが迅速に意思決定することが理由ということだ。

徳重氏は、日本人として初めて大リーグに挑戦し、下馬評を吹き飛ばして活躍した野茂英雄氏を例にとり「テラモーターズは日本の製造業の野茂を目指す」と宣言した。さらに「今年はモノづくり元年である。新市場の創出は情熱と狂気が必要だ。心構えから変えて、共に変革の担い手になろう!」と熱いメッセージを送って、講演を締めくくった。

蛇足:僕はこう思います

徳重さんは「シリコンバレースタイルの世界最先端追求」と「勃興するアジアへの積極参加」という異なるタイプの挑戦をグローバル視点で捉えて一度にやってしまう、新しいタイプの「ハイブリッド・アントレプレナー」だと思います。日本人がこういう挑戦をしていることに、まず心躍らされます。さらに日本悲観論に与することなく、「日本でもできる、日本発で世界に挑戦する」と力強く語ってくれます。著書「世界へ挑め」も出版され、講演の機会もまだあるようです。テラモーターズの今後に期待するだけでなく、ぜひ徳重さんの熱いメッセージを体験して、共に変革の担い手になりましょう!


著者プロフィール:高野 元 (たかの はじめ)
創発計画株式会社 代表取締役 / サービス開発コンサルタント
R&Dエンジニアとしてキャリアをスタートし、NECにてインターネット・サービス技術の研究開発に10年間従事。そのなかで、スタンフォード大学客員研究員としてシリコンバレーの息吹を体感。その後事業部門にて、Googleとのアライアンスなど検索サービスの立ち上げと収益化に貢献。40歳を目前にして転職したアクセス解析サービスのベンチャー企業では、サービス開発・運営の担当役員を務め、中国大連でのシステム開発子会社の立ち上げと経営経験も持つ。2011年7月に独立し、顧客開発モデルを軸とした新規事業立上げのコンサルティング活動を行なっている。顧客開発の実践に必要となる、技術戦略立案や組織改革の支援も手がけている。ポスト・スマホビジネスの流れだけでなく、社会変化の兆しとしてのメイカーズ・ムーブメントに着目している。
蛇足:オレはこう思う

 社会を生産者と消費者に分断させたのが近代という時代の1つの特徴だと思うけど、今また生産者と消費者が1つに回帰しようとしているんだろうと思う。情報の分野では、ブログやソーシャルメディアの普及で、多くの人が読み手でもあり書き手にもなってきた。これと同じことがモノづくりの領域でも起ころうとしているわけだ。いずれすべての人の中に眠るクリエイティビディが解き放たれ、多くの人をクリエイティブな生産者に変える。これがMakers革命の本質の1つだ。

 その方向に向かう中で、まずは多様化するニーズに応えることのできる動きの速いメーカーが今後大きく成長していく。その1つの例がテラモーターズなのだと思う。今後、ウェブビジネスを理解する小規模製造業ベンチャーが数多く誕生することだろう。そしてこれまでウェブ技術だけでは変革を起こすことのできなかった業界に対して、ウェブとハードを組み合わせることで、大きな揺さぶりをかけていくことだろう。iPhoneに小さな器具をつけることでクレジットカード決済ができるSaureはその好例。クレジットカード業界に大きな変革を迫っている。

 このように先進国に新しいタイプの製造業が生まれ、グローバル主義からローカル中心主義へと流れが変わっていく。ウェブを超えた大きなうねりが今起ころうとしているのだ。

 「最近のITって行き詰まってないですか」「ネット上のイノベーションって出尽くした感じがするんですけど」「ウェブ制作やってる僕たちは、これから何をすればいいんでしょうね」という相談を受けることが増えてきた。僕のこれまでの経験では、ものごとが停滞しているように感じるときこそ、次の時代に向けた動きが始まっていることが多い。多くの人が自分の領域を自分で規定してその領域の外には目を向けないときこそが、変化のときだと思う。その油断の隙に乗じて別の領域から新しいイノベーションが攻め込んでくる。実を結ぶイノベーションとは、そういうものだと思う。

 さあ、おもしろい時代になってきた。

 僕が主宰している少人数勉強会TechWave塾の14期「Makers革命の本質に迫る」のカリキュラムは、実は高野さんと一緒に作ったんです。この領域に関して高野さんは知識、経験が非常に豊富。なんで、一緒に本を書こうかという話もしています。また塾だけじゃなく、シリコンバレーや中国深センなどにもツアーを組んでいって調査に行きたいな、とかも話しています。日本にとってのMakers革命の今後であるとか、どの辺りにビジネスチャンスがあるのかなどをより具体的に掘り下げて行きたいと思っています。

お知らせ:そんな高野さんと僕がカリキュラムを組んだTechWave塾14期は、塾生を絶賛募集中です。また海外ツアーも詳細が決まりましたら、お知らせしたいと思います。乞うご期待。

トーマツベンチャーサポート、Skyland Ventures主催のMakers Summit 福岡の開催が決まったという連絡を受けました。九州地方の方はぜひご参加されてはどうでしょうか。
(TechWave副編集長 湯川鶴章)

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