飯野賢治がくれたもの「悪いところは直さなくていいんだよ」 R.I.P eno kenji 【世永玲生 @reosucker】@maskin

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[読了時間: 2分]

さよなら 飯野賢治さん
編集チョのmaskinこと増田真樹です。
2013年2月20日夜、ゲームクリエイター 飯野賢治さんが亡くなられました。42歳だったとのことです。ゲーム「Dの食卓」で世界の知る人となり、それ以外にも小説や音楽などでも優れた創造性を発揮されました。
僕は数年前、自分で制作した音源を海外のサイトで公開した際、飯野さんから直接「いいじゃん」と評価してもらった時からのゆるいつながりです。ノイズは入ったままだわ、サンプリングは途中で切れるは、転調はおかしいは、よくまあこんな音源をアップしたものだわと反省していたので、正直に「お世辞でも嬉しいです」と応えたのですが、飯野さんは非常に厳しい口調で「俺はお世辞なんて言わない」とおっしゃいました。その時、思ったんです。彼は本当にいいものを見い出し、深く理解し、伸ばす人なんだと。
そんな彼のことを振り返ろうと、ゲーム業界に長く 彼と親交のあった世永玲生さんに本日も登場して頂きましたが、タイトルにその人柄が現れているように思います。ドラマティックでリアリティあふれるテキストに思わず目がうるみます。

素晴らしい人は、いつも先に進んでしまうのですね。R.I.P. 心からご冥福をお祈りいたします。

飯野賢治がくれたもの「悪いところは直さなくていいんだよ」 R.I.P eno kenji 【世永玲生 @reosucker】

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 「オレらみたいな人間は、悪いところは治せないんだよ。だから良いところをおもいっきり伸ばせば良いわけ」。

 憧れの人に、「オレら」と「ら」って言ってもらった僕は舞い上がってしまって、実はあんまり他に何を話したか覚えて無い。

 一緒にカメラアプリを作る約束をして、「近いうちにまた打ち合わせよう」って言われて、そのまま連絡がつかなくなって、僕は『ゲーム Super 27 Years Life』を読んで、「27歳の時の僕の方が大人じゃんか」とか意味不明の強がりをして、拗ねて、寝た。

 話の相手は故飯野賢治氏。僕のヒーローだった天才ゲームデザイナーだ。


 一昨日の飯野賢治氏の通夜は、彼と言う存在を象徴するように「ゲーム」、「出版」、そして「音楽」色々な業界の人が居て、僕にとってもまるでタイムカプセルの様だった。

 10年振りに合う人、先週あった人、来週会う予定の人、皆、早すぎる出来事に現実感も無く、ただ目を赤くしていた。

 僕にとっての彼は、スーツを着たいなって初めて思わせてくれた人で、美味しいとんかつ屋を教えてくれた人で、僕がコンシューマー業界を辞めて、iPhone業界に行くきっかけを作った人で、「人間、飯野賢治」で人生に大きな影響を与えてくれた人だった。

 多分、最初に飯野さんを認識したのは、タイかインドで見た英語版のNewsWeek。

 ものすごい眼光で写っていた飯野さんは、僕より4つ年上だから多分25歳とかそれくらい、日本人なのに、NewsWeekに乗っている目がギラギラのビジネスパーソンに全く見劣りしない彼に、ひと目で憧れた。

 それから、Dの食卓、風のリグレット、エネミーゼロ。全部買ってたけど、真似をしちゃいそうで一個も封も切ってなかった。『ゲーム Super 27 Years Life』も敢えて読んで無かった。

 当時の僕を知る人はオールバックの長髪で、黒スーツの僕を覚えていると思うけど、服装と髪型だけ真似してた。黒スーツで格好いいなと思う人が飯野さんともう一人いたから。

 体型もだんだん似てきて「飯野賢治みたいだね」ってたまに言われるともの凄く実は嬉しかった。

 TOKYO FMの渋谷スペイン坂スタジオに彼が来てた時は張り切って見に行った。

 ゲストが微妙なヒントを与えてリスナーが答える曲当てクイズを、飯野賢治は机を叩きながらビートを含め完全に再現し、コーナー自体を破壊していた。初めて見る生飯野賢治に興奮した。想像通りだ。

 「プログラムも、シナリオも、音楽も全部ご自分もやられているんですよね?」

 というDJの問いに

 「だって、会社で俺が全部一番出来ちゃうんだもん」

 って答えてて

 「これは凄い人だけど、スタッフで働いたら大変だよな」

 とか思いながら苦笑いして見てた。

 そこから数年後、僕は水口哲也氏の下で「ミュージックインタラクティブ」ジャンルのゲームを作るゲームデザイナーになっていた、で、交友関係は飯野さんと、重なり、何度も顔合わせはしてたけど、緊張してあまり話しかける事が出来なかった。Qエンタテインメントの立ち上げ時には良くオフィスに飯野さんも来てたけどなんかタイミングが合わなかった。

 僕のパートナーだったM君が飯野さんとずっと作業をしてて、無茶苦茶羨ましかった。

 そして、それから数年。

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「Newtonica」(https://itunes.apple.com/jp/app/newtonica/id288799326?mt=8) と言うiPhoneアプリが出る。ゲームデザイナーの西健一さんと、飯野賢治の合作。
(※このアプリは西健一さんの意思により、現在無料になっている)

 このアプリは、iPhoneプラットフォームに興味は持っているけど、何もしてなかったゲームデザイナー達に衝撃を与えた。

 で、僕は勝手にバトンタッチされたと勘違いして、会社を辞めてまでして1本のメディアアートアプリを作った。

 勘違いして受けたバトンで、作ったアプリにはスペシャルサンクスに飯野賢治の名前を勝手に入れた。もちろん一方的なファンだから、許諾なんて取ってない。

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 このアプリはその後2,009年のApple Rewindで有料アプリベストで1位となって、、、、、

 それがキッカケで飯野賢治から連絡が来た。

 「一緒に何かやろーよ」

 って。

 ソニー・ミュージック時代に、エピック・ソニーのビルで階を間違えて、飯野さんのオフィスに間違えて入ってしまった時も大興奮したが、この時は本気で大興奮した。

 僕はモノづくりって、勝手に感じた使命感で、誰かに勝手にバトンタッチされたと勘違いしてやるものだと思ってたし、フリーになって、地べたを這いずりまわって、それこそ全国回って、やっとこさ開発パートナーを見つけて作ったアプリを、飯野さんが見てたってのが何より嬉しかった。

 「貴方と西さんから渡されたバトンですからこれ。」

 心の中でそんな事を言いいのをぐっと抑えながら、色んな事を話した。主に取り留めもないことを。

 そんな取り留めもない話をしてる最中に、飯野さんから出てきた言葉が

 「オレらみたいな人間は、悪いところは治せないんだよ。だから良いところをおもいっきり伸ばせば良いわけ。」

 「悪い所をね、直した所で伸びしろなんてたかが知れてるわけ、だから悪い所なんて無視して、得意な所、良いところをぐーっと伸ばせば良いんだよ」

 「だから昔見たいにスタッフを怒らない、イイトコロを伸ばすように褒める。本人も気づいていない様なイイトコロを特に。」

 その言葉は、ずっと大切にしてきて、僕の言い訳にもなっているし、何かを限界まで頑張る糧にもなっている。

 一昨日の、とても行きたく無い通夜で生まれて初めて喪服を買った僕は。
 今度「飯野賢治はうん十万もするスーツを着ている」という言葉にビビって買えなかった、ヒューゴボスを買いに行こうと思う。
 値段も全くわからないし、自分に合うかもわからないけど、一番飯野賢治っぽいのを買おうと思っている。

 で、最近の僕は、半分ビジネスマンっぽい事をやりながら、半分クリエイティブな事をやっているけど、「バトンタッチされた」と言う勘違いを元にもう少し何かを作ることも続けてみようと思った。

 自分の作った何かだったり、言った何かで、バトンタッチされたと勘違いした人と会うまでには。

 飯野賢治さん、貴方のバトンは、色んな人に渡されて、これからも輪廻していくと思います。
 ファンの一人として今後も、僕も何か、しばらく作り続けます。

 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

【関連URL】
・クラウドファンディング第二章。「MotionGallery」で行われた大成功事例を分析する 【世永玲生 @reosucker】@maskin
http://techwave.jp/archives/51781887.html
・AppStore 4週連続でトップ25入りを果たして見えて来た、 2013年「5つのトレンド」 【世永玲生 @reosucker】@maskin
http://techwave.jp/archives/51778963.html

著者プロフィール:世永玲生 a.k.a reosucker

エデュテインメントコンテンツのディレクターを志しソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。デジタルコンテンツ部にて数百のWebコンテンツリリースのディレクション/プロデュースを行い、その後セガへ。音楽と映像の連動した「ミュージックインタラクティブ」ジャンルのゲームの原案・ディレクションを行いファミ通ゴールド殿堂等複数のアワードを獲得。その後メディアアートアプリのMatrixMusicPadの原案・ディレクションからiPhone業界へ。2009年の年間ベストの有料部門1位を獲得。現在はGMOインターネットにて特命担当として各種サービスの分析をおこなう。アプリ開発者としては、同人サークル「東京検定研究所」のプロデュースに2012年8月より参加。ゲーム総合1位やカテゴリ1位を複数回達成する。

大手出版社・テレビ局・配信会社等のバイラル設計&マーケティングのコンサルティングも行い、インタビュー記事・分析記事は掲載多数。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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