揺れる動画広告、ネット広告の先駆けが挑むインストリーム型動画広告のプライベートマーケットプレース「QSTO Movie PMP」

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米コカ・コーラやウォルマート・ストアーズ、ゼネラル・モーターズAT&Tやジョンソン・エンド・ジョンソン、Pモルガン・チェースといった巨大企業がこぞって米Aphabet傘下の動画プラットフォーム「YouTube」への広告出稿を見合わせるというニュースが世界を駆け巡りました。理由は、テロやヘイトを推進するような社会良識に反する内容の動画コンテンツとあわせてそれらの会社のCM動画が再生されたからでした。

この波は米国のみならずBBCやガーディアンといった英国のメディアや英国政府系機関、ロレアル、などにも波及し、現在もその波が収まる気配がありません。YouTubeは悪質コンテンツの削除に注力し、広告がどの動画に掲載されているかを広告主が確認できる機能を搭載するなどしていますが、そもそも自動で広告枠を買い付ける仕組みの上で大量に露出先を獲得しているわけで手作業で対応できるはずもありません。

ネット広告の黎明期1996年、電通とソフトバンクの合弁会社として立ち上がったサイバー・コミュニケーションズ社の第一号社員として会社の立ち上げから2014年の退任までの18年に渡って役員などを歴任した桜井賢 氏はいいます。

「ネットの世界で動画は必ずくると2002年から動画広告に注目してきました。いよいよ、市場が盛り上がってきたところですがさまざまな問題があります。テレビCMが数十年に渡り視聴者に受け入れられたといえるのであれば、同じようにネットでも効果的な動画CMを展開できるのではないかと思うのです」。

桜井氏が注目するのは、動画プレイヤーで流れる一連の動画の中に動画広告を挿入する「インストリーム型」桜井氏は2016年、インストリーム型動画広告の配信ネットワークを展開する「クエスト・コミュニケーションズ」を起業。動画のプライベートなマーケットプレース「QSTO Movie PMP」事業の展開を開始しました。


「テレビにCMを打っていたナショナルクライアントはインストリーム型でネットに動画広告を出したい。しかし、それができるのはYouTubeとニコニコ動画くらいしかないという状況。そして今回の騒動のような理由で広告の在庫がさらに少なくなっているのです」と桜井氏は言います。

そこで桜井氏率いるクエスト・コミュニケーションズが挑むのは、独自のインストリーム広告配信ネットワーク構築です。「QSTO Movie PMP(プライベート・マーケット・プレース)」では、F1層(20歳〜34歳の女性)、F2層(35歳〜49歳の女性)をターゲットに、高いニーズのあるハウツーなどの動画コンテンツを3000タイトル以上用意し、媒体社に提供。この独自に展開するネットワーク上で広告出稿に対応する計画です。広告出稿は、オープンオークションではなく、限定された売り手と書い手が自動取引に参加する形態を目指すそうです。

F1/F2層にフィットしたハウツー動画3000本が無料で利用可能

コンテンツはプロが制作するタイトルもしくはプロの指導によって制作されたものに限定。誰が作ったかわからないコンテンツに広告が掲載されることはありません。長さはスマートフォンでの閲覧を想定しほとんどが2~3分の尺(長さ)になっているほか、いずれも字幕付き。動画コンテンツで最も人気があるハウツーに絞り、F1/F2層の視聴者の嗜好に合致したいわば定番の内容で構成されています。

たとえば、メイクアップハウツー動画1600本以上、1~2分でヨガのコツをわかりやすく解説するコンテンツが600本以上。カリスマ美容師によるヘアアレンジ講座が300本以上、ローカル局アナウンサーによるご当地グルメ紹介が300本以上と合計で3000本以上が用意されています。

動画再生は英国のLoveLive社の動画プレイヤーのシステムをアレンジしたものを採用。掲載媒体側は、JavaScriptのコードをサイトの任意の部分に貼り付けるだけ。PCはもちろんタブレット・スマホに対応無料で指定したジャンルの動画を再生することができるほか、挿入された動画広告からの収入を得ることが可能です(月間再生回数500万回以下=ネット収入の25%、501万回以上=ネット収入の30%)。

また、媒体サイトが独自の動画コンテンツを所有している場合は、「QSTO Movie PMP」のコンテンツ・マネジメント・システムに登録することで、このプレイヤー上で再生することも可能です。もちろん、インストリーム型広告の出向も受けられるため、既存コンテンツでマネタイズすることが可能になります。ターゲットを絞り、効果あるコンテンツを選び展開していることから、CPMは2000円から4000円という、従来動画広告ネットワークの数十倍というパフォーマンスが期待されています。

違和感のない動画広告

「QSTO Movie PMP」と同じ枠組みを5年ほど前から事業展開しているのはイギリスのPERFORM社。スポーツに関する動画をネットワーク化し、そこにスポーツに関係した広告をインストリーム型で配信していく仕組みです。

PERFORM社が調査したところによれば(2015年12月)、動画広告だけを配信する場合(インリード型)の広告完全視聴率が10~30%であるのに対し、インストリーム型で動画コンテンツの再生を開始する最初の時点(プレロール)に内容に合致した広告動画を再生すると広告完全視聴率は60~80%に上るというデータを公表しています。

「QSTO Movie PMP」は、スポーツ領域で独自ネットワークを展開するPERFORM社のモデルをF1/F2層向けに展開すると考えると理解しやすい。また、「QSTO Movie PMP」の場合は、「プレロール」のみならず、再生途中(ミッドロール)、再生終了後(ポストロール)での広告動画を展開します。

「こうしたインストリーム型における広告完全視聴率の高さは、ファッションサイトにファッション動画を、コスメサイトにコスメの動画を置くことで、ユーザーは関連するコンテンツがあると認識して動画を閲覧している、それはいわばテレビ的な感覚で違和感なく広告を視聴していただけるのではないかと思っています。実際、「QSTO Movie PMP」の動画プレイヤーを設置することで、サイトの滞在時間がわずかなりとも向上するケースもあるような状況です」(桜井氏)。

広告が邪魔と思われるのは本末転倒

クエスト・コミュニケーションズ代表取締役社長 桜井賢氏

「そもそも、ユーザーさんは動画サイトに動画を観にきていると思うんですね。それなのに5秒後にならないと広告をスキップすることができません。それは広告効果的にどうなのだろう?ということを考えていました。広告が “邪魔”と思われるようでしたら本末転倒だと思うんですね。自分が観たい動画があるのに、関係ない広告が表示されたら不快に思うのは当たり前です。

某調査レポートでは、この5秒スキップを不快に思う人がかなりの数にのぼり、かつスキップすらできない場合は、その広告のクライアントの商品を買いたくなくなるというネガティブな反応があることがわかりました。動画の上にバナー広告を掲載する場合も、競合のバナーが表示されるなどの状況がしばしば発生しているのが現状です。

私たちの「QSTO Movie PMP」では、こうした問題を回避するために、広告主が安心して広告出稿できる信頼できるコンテンツだけがやりとりされる動画ネットワークを構築しようというものです。広告主側もクリックや表示回数よりも、ブランド訴求する広告主が増えてきているという背景もあります。

ただ、こういった効果は観られるコンテンツがあってこそという面もあります。動画制作は安価なメニューも登場していますが、スライドに音楽をつけただけという内容では成果が得られにくい。とはいえ、タレントを揃えると数千万からで、テレビ番組などへの掲載条件などを含めると億単位の予算が必要になってしまいます。ですから、当社では、キャスティングやメイクまでを含めて50万円(税別)〜で動画広告を制作できるメニューなども用意し動画広告に関心のある広告主さまを支援したいと思うのです。」(桜井氏)。

「QSTO Movie PMP」は2017年に1億単位の在庫を確保することを目標に据えると共に、動画広告の市場で多様な試みを展開していきたい考えです。

【関連URL】
・QSTO Communications|クエスト・コミュニケーションズ
http://QSTO.com

蛇足:僕はこう思ったッス
maskin-bit-2016 桜井氏は、Yahoo!JAPANの広告メニュー策定を筆頭に、RDBなど日本のネット広告シーンの先駆けとして活躍されてくる中で、高速インターネット網“ブロードバンド”がいよいよ普及するという早期から動画広告に注目されていたが満を持しての展開。日本の動画市場は2020年にかけて2000億円を突破するという予想も出ており、広告主側の動画広告に対する関心の高さもあり、あとは「どういう形か」というスタイルを誰よりも先行して作りあげればチャンスが訪れるという状態のように思う。興味深かったのは、レシピサイトだからといってレシピ動画を流すだけでなない可能性がある点。「サイトに情報が満載されているわけだから、同じ動画を掲載しなくてもいいのではないか」という多様性もある。だから、特定のジャンルの専門サイトというよりは、F1/F2向けの総合誌のような媒体に注目しているらしい。クエスト・コミュニケーションズの取り組みは、ネット動画広告、ひいてはネット上のコンテンツに少なからず影響を与えるのではないだろうか。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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