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スマホーアプリ&サービスの企画に携わる人のためのイベント「スマホデザイン会議」が6月28日、東京・銀座のリクルートメディアテクノロジーラボで開催された。
登壇者はバスキュール号 プロデューサー西村真里子さん、「miil」のFropApps 代表取締役社長 中村仁さん、日本テレビさん(カリスマCGクリエイターとして有名な藤井彩人さんと編成局メディアデザインセンター メディアマネジメント部 加藤友規さん)という超豪華布陣。TechWaveで告知してから2日でのべ90名以上の参加表明があり、会場は立ち見の方が出るほどの盛況となった。
企画経営層のためのDesign Thinking
「スマホデザイン会議」は、スタートアップ企業「inno-beta」が、デザインへの関心を高めるべく啓蒙活動の一環としてスタートしたイベントで今回で二回目。
今回は私 TechWave副編集長 増田(maskin)真樹が企画段階から関与させて頂くコラボ型で開催。一回目は主にデザイナーを中心とした幅広い層を対象としたが、今回は「デザイナー中心」→「企画経営層」向けに軌道修正し、およそ95%が企画側という異例のデザインカンファレンスとして実施した。
一般的なデザインカンファレンスとの違いは、実務テクニックではなく「デザインの考え方」や「デザインを巻き込んだチームビルディンングやマネジメント」に主眼を置いている点。業界先端を走る3社はビジネスモデルこそそれぞれ違うものの、デザインという領域に深く切り込んで頂いた。
「新サービス企画とデザイン」株式会社バスキュール号 プロデューサー 西村真里子氏
トップバッターは-国内広告賞を受賞しまくっているバスキュール号からプロデューサーの西村真里子さん。バスキュール/バスキュール号と言えば「Nike Id」や「mixi Xmas」などソーシャル広告で大きな成功を納め、多様な分野に圧倒的なクリエイティブで挑戦をし続けている企業。
本セッションでは、サムスンGALAXY SIIのプロモーションとしてソーシャルメディアの投稿が宇宙船に乗せられたGALAXYの画面に表示されるという「SPACE BALOON」やユニリーバAXEのプロモーションとして男性目線を活用した「DRY HOTANGLE」などの事例を紹介。それらの企画時における大切にするポイントについて述べられた。
「例えば、SPACE BALOONでは “宇宙”への夢、「DRY HOTANGLE」では “男性目線” という誰もが共感できる、いわば「共感装置」として活用できるポイントを発掘して、ユーザー目線で徹底的に追求していってるんです。ダウンロードしただけで、あまり使わないのもだめ。ソーシャルメディア時代なので、友達と共有したくなるか?というシーンのディテールをUI/UXファーストで考え抜きます」(西村氏)
後半は、企画を詰めていく中で、デザインディレクターである社長の朴さんの「ちょっと違うなぁ」という感性レベルのするどい指摘と協調しつつ、刻々とデザインが成長/変化するプロセスなども具体例を使って説明。共感ポイントを模索しながら、数十万という利用者を獲得する手法に注目が集まった。
「デザイン変更による成功と軌跡」 株式会社FrogApps 代表取締役社長 中村氏
美味しい料理を共有するアプリ「miil」の開発・運営を行なっているFrogApps の中村仁さん。「豚組」を筆頭とする人気飲食店を経営する彼は「外食内食に限らず、全ての食を網羅した一大プラットフォームを構築する」として「miil」の開発をスタートするが、実は当初、親睦の深いアルファブロガーらの反応は極めて悪く「止めようかとも考えた」という。
その画面が上の写真の左側のもの、写真は大きく機能が効率良く並んでいて “スマート” ではある。反応の悪さに対し、デザインをゼロから考え直してできた現行のデザインが右のもの。中村さんは「オーガニックなデザイン、つまり意味不明な余白が全くないホスピタリティー重視のものに変更したんです。過去のデザインは機能的だけど、これが仮にお店だとすると行きたくない。やはり、「行きたい」と思わせる美しい絵があって、そこに対話があって、利用者との関係性を構築して盛り上がり続ける世界を作りた。それには「デザイナーのやり過ぎ」くらいがちょうどいいんです」(中村氏)。
「ウェブやアプリは、お店の商売と近いのでは?」という問いに、中村さんは「全く同じですね。今回、miilをやってみて料理人とデザイナーの考え方やプロセスが全く同じだおいうことに気がつきました」と応えた。
「ソーシャルTVが目指す新時代のユーザー体験」
最後の登壇者は、日本テレビ放送網株式会社から編成局メディアデザインセンター メディアマネジメント部 加藤友規氏、 技術統括局 コンテンツ技術運用部 CGデザイナー 藤井彩人氏。藤井さんは、「ayato@web」を運営するCGクリエーターで、知る人ぞ知るカリスマ的存在。会場からは「生、藤井さんに会えるなんて」とどよめきも。
内容としては社内インキュベーション的事業として実証活動を続ける「JoinTV」と「WizTV」を中心とした事例紹介が中心。上の写真は地上波デジタルのデータ放送画面でソーシャルメディアと連動する「JoinTV」の構想を示すもの。「JoinTV」を使うと、同じ番組を視聴しているFacebookのフレンドが表示されたり、番組中の特定のポイントをFacebookウォールに番組情報付きで投稿することができるというもので、視聴者との関係を小さなグループによって構築しようとするというもの。
これまでのテレビ業界というと、コンテンツ重視でサービスとしては一世代遅れているような印象があった。藤井さんも「やっとUIが理解してもらえるようになりつつあるが、UXとかデザインの重要さはまだまだ理解されない」と語るものの、メディアデザインセンターの一連の取り組みは先端的といって良さそうだ。
特にWizTVは、ソーシャルメディアにおける番組の盛り上がりを表示するアプリで、なんと日本テレビだけでなく他のチャネルもカバーするようになっている。「WizにはWithという思いもあります。日本テレビ色は出さず、他チャネルもIT業界で同じようなサービスをやっているところとも協調して、テレビとスマートフォンを使うというスタイル(ダブルスクリーン視聴)の世界を盛り上げていきたい」と藤井さんは語る。
TechWave副編集長増田による「デザインという共通言語とシリコンバレーに学ぶ創造性」
トークセッションの前座として、筆者の過去数十件における創造型プロジェクトにおいて学んだことや、シリコンバレーで経験ことなどについてさらっと説明させて頂いた。これまで「全国民総プログラマー化計画」とか「DKP」とか「江ノ島でプログラミング」させたり「学生にリリース前のWindows8を開発してもらたり」無茶な企画をやっているわけだが、実は今回、企画経営層にデザインThinking企画を実施したもの同じ考え。企画側に作る視点を持ってもらうことで「デザイン」そのものをゴールや課題共有のための共通言語にしようと考えているわけだ。
また、ここではシリコンバレー発祥の地といわれる「The HP Garage」やスティーブ・ジョブズ氏の生家であるApple誕生のガレージの実写写真とともに「情報も金もない中で、貪欲に創造性を発揮しようとするシリコンバレーの精神」について触れつつ、現地で体験した「 “これで完成” はありえないデザインプロセス」について説明した。
このような雰囲気で、3時間超に渡り「スマホデザイン会議」は終了した。3社とも共通言語として「UI/UXファースト」があり、徹底した検証と感性をフル回転し、ユーザー目線での徹底した検証を続けているということがあった。会場提供の株式会社リクルート伴野智樹さんからは「Ambrotype×TechWaveラボメンの軌跡」として、ユーザーが開発に関与することで “開発中の霧が晴れてくる” というコメントもあり、今回の大きなメッセージとなったようっだった。
このような考え方は、ITのみならず成長企業には常に介在している。例えば、日産を再生させたカルロス・ゴーン氏は、初めにデザイン室を社長室付けにし「魅力的なデザインは、商品の成功を左右します。デザインは充分条件ではないものの、必須条件です。理由は、お客様が最初に目にするのはデザインだからです」と述べ、乗車した時はその見た目以上の体験を実現させるようにすることの大切さを述べている。
サイゼリヤの創業者 正垣 泰彦(しょうがき やすひこ)氏は、「「自分の店の料理はうまい」と思ってはいけない 。自分の店の料理はうまいと思ってしまったら、売れないのはお客が悪い。景気が悪い」と考えるしかなくなってしまうからだ」と述べている。
【関連URL】
・「スマホデザイン会議」6/28開催、企画経営層のためのDesign Thinking【増田 @maskin】on everevo
http://techwave.jp/archives/51751466.html
・InnoBeta
http://inno-beta.com/
登壇者の確定も直前、集客に実質2日間という緊迫した状況の中、多くの方に会場に詰めかけて頂いた。デザインというキーワードのイベントとしては異例な形で運営も問題山積みだったが、デザインというプロセスの大切さを再確認して頂けるようになるべく全神経を集中した。これを通じ、みなさんのチームの創出力アップにつなげることができれば本望。あと、アフォーダンス。これはスマホデザインにおいてはとても重要なので要チェックです。なお、花テックでも「出張版、スマホデザイン会議」をやる予定なのでお楽しみに。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveでは創出支援に注力。エレベーターピッチ絶賛受け付け中! (まずはAirTimeでどうぞ!)