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国内外で活躍する若手女性ファウンダーによるウェブサミット2019 セッションレポート

世界160ヵ国以上から7万人が参加する世界最大級のテクノロジーカンファレンスウェブサミットがポルトガルのリスボンにて開催されました。今年は日本からの参加も増え、富士通やJ-startupなどが出展したりと日本のプレセンスも増えてきました。ウェブサミットの発祥地ダブリンに在住しながら、国内でリゾート開発などを手掛ける菊川万葉氏によるセッションレポートをお届けします。

データ収集と監視への警鐘。エドワード・スノーデン氏によるオープニング・キーノート

スピーカー:
Edward Snowden:President of Freedom of the Press Foundation

米中央情報局(CIA)の元職員。米国の個人情報収集活動を暴露し、ロシアに亡命。彼の人生で、彼がどのようにしてその政府のシステムを作るサポートをしたのか、そしてそのシステムを終わらせようとしたのかの動機を詳細に語った。「彼ら(企業や政府を指す)を信用する必要がない理由を彼らに示してください。 あなたが話している人だけが信頼出来ます。自分たちを守ることが出来るのは自分自身です。 それを実現するためには、全員が自分の身を守りお互いを守り合う必要があります。」と会場へ訴えた。またGDPRなどの規制に対しても、「問題はデータ保護ではなくデータ収集です。現在存在するデータの規制と保護は、そもそもデータの収集が適切であり、適切であり、脅威や危険を表していないことを前提としています。」と課題が多く残ることを指摘した。こちらからインタービューセッションをみることができる。

5G + Xが新しいスマート時代を作る

スピーカー:
Guo Ping:CEO and Chairman of Huawei Technologies

中国のテクノロジー系大企業の将来を語った。5Gの到来により、新しいスマートの時代がやって来る。AIやビッグデータがこれにより大きな進歩を遂げる。その例として同社のイベントで発表したデモンストレーションを紹介。異なる場所にいる2つのグループがライブ配信しながら同じ音楽を同時に演奏するというもの。5Gによってより高速なやりとりが可能になり、遠隔デュエットもリズムをずらすことなく奏でることができるという。5Gの可能性として、スマートヘルメットの開発等で工事現場での安全性向上についても言及。今後の同社の次の展望としては、モバイルデバイスで何にでも繋がるFully Connected World(コネクテット・ワールド)を目指すこと、デベロッパーへの大きな投資をすると語った。

ブランドの安全性と責任感のあるメディアとは?

スピーカー:
Raja Rajamannar:CMO of Mastercard

現代は誰でも自由に情報を流すことの出来る時代になったがゆえ、米国YouTuberによるローガン・ポール事件を含め数々のメディアに関する問題が起きている。ブランドの安全性とメディアの責任とは、なんだろうか。MastercardのCMOであるRaja Rajamannar氏は、デジタルプラットフォームの繰り返しの悪用、現在あるソリューションの非効率性、およびマーケティング担当者とその代理店が知らずに悪者に資金を提供している収益化ポリシーが問題であり、それに対策を講じていくことが必要だと述べた。具体的な施策としては、共有された普遍的な安全基準と対策ガイドライン、業界全体で共通のブランド保護ツールをつくる、 相互の説明責任と独立した検証機関の設定をあげた。

2020のマーケティングとは

スピーカー:
Fernando Machado:CMO of Burger King
Katia Bassi:CMO of Automobili Lamborghini
Gail Heilmann:President & CEO Weber Shandwick
モデレーター:
Marty Swant :Forbes

広告無しの戦略をとっているランボルギーニ。ラグジュアリーブランドは広告で不特定多数へのアプローチより人と人とのコネクションと深い関係作りが大切、と同社のCMOであるKatia氏は語る。現代の若者は、顧客データの一部ではなく自分が特別な存在と認められることを強く望む傾向にある。そのため、「インフォーマルラグジュアリー」という位置付けでブランディングをし、コミュニティを作り、VRなどの最新技術を使用しリアルに近い体験を再現することで、ターゲット顧客から共感を得ているそう。
バービーやバドワイザーの広告を担当してきたWeber ShandwickのCEO Gail Heilmann氏は、一瞬で人の心と感情を掴み動かすアイデアは最も重要であるということは、昔も今も変わらないと語った。登壇者に共通していることは、ブランドそれぞれのBrand Purpose(企業目的)を大切にしていること。例えば、inclusion(すべての種類の人が認められること)やサステイナビリティーなどが挙げられる。Burger KingのCMO Fernado氏は、それらが口だけではなく、社内で日々実践されている必要がある、語った。

顧客中心主義を超えた挑戦

スピーカー:
Barbara Martin Coppola :Chief Digital Officer at IKEA

「サステイナビリティ(持続可能性)」は今年のウェブサイトのホットトピックの1つでもある。展示会場にも、コカ・コーラなどがサステナビリティのメッセージを打ち出したブースを出展していた。今や企業として無視できないこの課題について、IKEAのデジタルオフィサーは、同社がサステイナビリティを促進するビジネス界でのリーダー的存在になり、長期的に地球環境について考えているという熱意を語った。IKEAは太陽光発電パネルも現在すでに商品化されていて、2030年までに「Climate Positive」つまりは環境を元のままに戻すだけでなく更にエコシステムを改善し、全ての製品をリサイクル材料で作ると発表。

来るAI時代への備えとは

スピーカー:
Jean-Francois Gagne :Co-founder of Element AI
インタビュアー:
Tim Stevens:Editor in Chief of Roadshow, CNET

あと2年ほどで、AI市場やテクノロジーが成熟し社会的に準備が出来る状態になるといわれている。顧客のニーズに柔軟に対応し、低価格でアップデート出来るのはどのAI企業か。AI市場での競争はここからが勝負である。社会やビジネスがAI導入を推進すると同時に、競争の激化により一部の企業はコピーキャットを避けるため、自社の最新鋭のAIテクノロジーを隠したいと考えるだろう。しかしそれでは社会的にAIの進歩が遅くなってしまう。AIは、良い競争環境と協力体制によって、効率性よく改善されたサービスを生み出す。故に、企業がコラボレーションし続けることで市場レベルを上げ健全な競争を産むことが理想的であると主張していた。
また、今後実用化するにあたりスケール拡大可能なAIを作成するためには何が必要かという問いに対し、AIが使用されるPoC(Point of Contact)と現実世界の違いを把握し、企業側と顧客側でテストを何度も行いAI信号を改善する必要があるとJean-Francois氏は述べた。AIはアップデートを必要とするスピードが早く、頻繁に新規対応が求められる。その際に、AIが対応しきれない場合には対応出来る人材を用意する必要があり、企業がAIに精通した人材を確保する必要性が出てきたという大きな課題がある。また、AIについての意思決定を会社の誰が責任を取るのか、という問いに対する答えを探ることが企業にとって新しい課題として挙げられると述べていた。

小売は体験の時代へ

スピーカー:
Annia Spiliopoulos :Global CEO of Links of London
Annastasia Seebohm : Group CEO of Quintessentially
Alex Deane:Senior Managing Director of FTI Consulting Strategic Communications

デジタルプラットフォームが増える中、小売店は生き延びることが出来るのか?ラグジュアリーブランドの場合は、実際に顧客に会いそブランドについて深い理解をしてもらう必要があるため、物理的な場所が必要であるが、それ以外においては店舗が必要がなくなる可能性がある。昨年、英国ジュエリーブランドLinksのCEOに抜擢されたAnnia Spiliopoulos氏。同氏は、この1年で英国内で5店舗、米国内15店舗の閉店を決めた。オフラインのショッピングは「体験」であり、その体験をオンラインでも再現することが出来るのががポイントとなる。ソーシャルメディアなどで顧客へきめ細やかなサービスを提供することに成功しているのが、会員制コンシェルジュサービスやマーケティングエージェンシー業と営むQuintessentially。2018年夏、USのトップであった当時32歳のAnnastasia Seebohm 氏がグループCEOに大抜擢された。同氏は、過去のインタビューでも現代は、プロダクトよりサービスが重要であると述べている。情報過多の中でキュレーションされた情報の提供、アドバイス、インサイトをもとにしたパーソナライゼーションなど商品にとどまらない顧客へのサービスが重要と述べている。ただ「良い商品」を売り出すだけでは顧客を勝ち取れない。最近のショッピング経験の変化としては、人がコミュニティに属したいという傾向が強い。キーワードは、「Connectivity = 繋がり」; 自分や他人との繋がりが重要視される時代が来た。

現代のCMOが必要なスキルとは

スピーカー:
Meagan Eisenberg : CMO, TripActions
Janine Pelosi:CMO, Zoom video communications
Tom Klein:CMO, MailChimp
モデレーター:
Katie Deighton:Senior Reporter, The Drum

・売る仕組みを作るためのストーリーテリング能力
・最新テクノロジーの理解と実践能力
・顧客の気持ちを理解できる共感力
・自分の仕事へのパッション:熱意のないCMOは、すぐに部下に気づかれる。
・予算管理能力&戦略立案能力:マーケティングはアートと数学の融合。テクニカルなスキルと創造力に富んだアイデア力が必要。
・CMOを選ぶ場合は、社外ではなく社内から既にリーダー的存在で行動力がある人を抜擢すると良い。

良いブランドコンテンツを作る方法

スピーカー:
Fernando Machado:CMO of Burger King
Sairah Ashman:CEO of Wolff Olins
Lindsey Turrentine:SVP of Content Strategy of CBS Interactive
モデレーター:
David Fischer:Founder and Editor in Chief of HighSnobiety

ブランドは独自のコンテンツを作成する上で、どんな点に気を配るべきなのか。Business Insiderによる最もイノベーティブなCMO25にも選出されている、バーガーキングCMOのFernando Machado氏は、「物を売るという短期的な結果のための施策ではなく、人々が関わりたいと思うブランドを長期的に考えて築き上げていく必要がある」と述べた。高品質のコンテンツを、適切なオーディエンスに、適切なタイミングに発信すれば、ブランド価値は上がる。また、コストとコンテンツ品質のバランスについては、優れたコンテンツであれば、より少ない広告コストで済むた​​め両立が可能。そのバランスを予測できるようになるには、沢山のコンテンツを作成発信し効果があるものを確認していく。

ブランドコンテンツを作る上で配慮すべきポイント
– 視聴者を知る
– コンテンツ発信はタイムリーに
– 自社ブランドの個性や本質を深く理解する
– 自分が購入して欲しいものを見せるのではなく、顧客が見たい内容を発信する
– ストーリーに焦点を当てる
– コンテンツレベルの基準を厳しく設定する
– 創造力を使い、ユーモアと共感を通じて、オーディエンスと心で繋がる
– 真正性を持つ 例)ソーシャルメディア上の人物が実は全く違う性格であった場合信頼を無くすのと同じ
– リスクはあるが、顧客が作成したポジティブなコンテンツが流行ることが一番良い。公式ブランドの発信よりも多くのリーチがあるという結果も出ている
– 一般的に人がしてはならならいことはブランドとしてもしない。例)一方的なコンテンツ発信は、パーティーで自分のことを延々と話す人と同じ

2020年 知っておくべきモバイルトレンド

スピーカー:
Mada Seghete:Co-founder of Branch

例年ウェブサミットでその年のトレンドや今後の予測データをシェアしている同氏。同氏が2019年現在知っておくべきモバイルトレンドとしてシェアしたのは以下。

1. モバイル上でSafariやgoogle chromeといったサーチエンジンで自分で何かを探すよりも、それ以外のアプリを使用しその中のコンテンツから発見する形にユーザーがシフトし始める。自分のブランドが顧客を獲得するのに最適なアプリやプラットフォームを定めてその中で勝負する
2. モバイル広告費はゲームアプリに注がれる
3. 新しいアプリストアのプラットフォームが出てくる (現在はApple store、Google apps、WeChat store主導)
4. 個人認識機能が2020の焦点となるため、質の高い個人認識システムを持っておく必要がある

レポータープロフィール


菊川万葉
Treeful Treehouse EcoResort共同創業者。国内外のマーケティングを担当。
元デジタルマーケティングカンファレンスオーガナイザーを経て独立。
instagram:@naturallymaha

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