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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本もいよいよ深刻な状況になってきました。教育現場も今とても厳しい状況だと思います。私は、GKCorsという未就学時から英語で伝える力を養うための幼児教室を運営しています。普段はスクールで様々なアクティビティを子ども達と行っていますが、東京都知事の外出自粛例、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、子ども達と講師の安全を第一に考え、4月より全クラスをオンラインで実施することにしました。
当スクールでは今までオンラインレッスンは一度もやったことがありませんでしたが、先だってオンラインレッスンを始めた米国の学校運営事情(主にプレスクール、小学校)を当初から追ってきました。今、国内で多くの学校、教育施設が休校となっています。一部オンライン対応もしているようですが、欧米に比べると非常に少なく、対応できている教育機関はほぼないと思います。もちろん、色々な制約もあり現場の方も大変かと思います。ただ、今大切なのは子ども達の学びを止めないことです。そのために何ができるか、米国式のオンラインレッスンをいち早く取り入れ実行している経験談をシェアできればと思います。
米国オンラインレッスンについて
米国ではロックダウンが始まった当初から、すぐにDistant Learning (オンラインでの遠隔授業)になりました。GKCorsの卒業生や提携校の先生達から日々のレッスンでどんなことをやっているのか聞いて回りました。ある学校では、州が外出禁止を出したその翌日からオンラインになります、と学校からすぐに案内があり、次の日には日々の時間割が送られてきていました。細かく〇時から〇時までリーディング、その後は算数など。その翌日には学校のシステムに先生がスマートフォンで撮影したと思われるレッスン動画が全クラスの生徒に送られました。翌週にはさらにレベルアップしていて、1週間分のプリントや課題、個別面談のスケジュールなどが共有され、ものの2週間でオンライン運営をある程度形にしていました。他にも、スイスの現地校に通っている小学校5年生の話ですが、オンラインになってからも通常時と全く同じ時間割、授業量をこなしているそうです。一方で、3歳以下のプレスクールでは、米国も課題が多くZoomなどを用いたグループレッスンはクラス統制をとるのが難しく、まだ課題があるようです。
なぜ米国はいち早くオンラインレッスンに切り替えることができたのか
ロックダウン後すぐにオンラインに切り替える事ができた米国の教育機関と、休校1ヶ月近くたった今でも宿題を出すことで対応している日本の教育機関の違いはなんでしょうか。理由は沢山あると思いますが、私は主に3つあると思います。まずひとつめは、ベストエフォートでの対応をしているかどうかだと思います。教育現場に限らず、日本では何か新しいものを作ったりするとき、欠陥が少ない完璧なものを作ろうとします。この考え自体は悪いわけではなく、確かにその先には質の高いものが約束されています。しかし、今回のように急激な社会情勢の変化に合わせ、自身も柔軟で素早い変化を求められる時にはこの考えにこだわっていると大きなゴールを見失いがちです。今、教育現場で一番考えなければいけないことはなんでしょうか。私は子ども達の学びを止めないことだと思います。それを解決するためには、完璧なものを求めてその間学びを止めるより、今できる最大限の努力をし子ども達に学びの場を提供し続けることだと思います。
もう一つ米国でオンラインへの切り替えが上手くいった理由は、政府の後押しもあったと思います。米国教育長官のベッツィ”・デヴォス氏は、4月に入ってからオンラインレッスンに移行するにあたり必要なリソースを補填する予算案を発表しました。この発表には、オンラインレッスンに伴う機材の追加、オンラインレッスンに対応するための実践的なトレーニングシステムなどへの対応が盛り込まれています。
3つ目の理由は、先生や保護者のITリテラシーの高さだと思います。米国に限らず海外の学校に行くと、学校施設や先生達のITスキルに驚くことが多いです。特にシリコンバレーの辺りでは、若い先生だけでなく、ベテランの先生達でも、パソコン、タブレットのみならずApple Watchも問題なく使いこなしています。保護者もパパのみならずママも働きながらテクノロジーを仕事で使っている人が多いので、Google Driveのみならず、オンラインプラットフォームの操作を無理なくできます。GKCorsでも専用のオンラインプラットフォームでのやり取りですが、オンライン決済、オンラインでのレポートのやり取りというと驚かれることが多いです。そんな状況を踏まえると、日本の学校でオンラインクラス全面的にやったら、授業内容より親向けのテクノロジー対応の方が大変なのではないかと思ったりします。
米国式オンラインレッスンのポイント
米国式のオンラインレッスンを調べていて、こういうところに気を付けたらいいかなというポイントをまとめます。
・グループオンラインレッスンの人数は最大10~15名※年齢による
オンラインでやるのには人数の調整がキーポイントになります。今の日本の教育システムではなかなか難しいと思いますが、1クラスを3つくらいに分けて、授業を3回やるなどすれば対応できるかもしれません。年齢が低くなればなるほど、人数が増えるとクラスの統制がとれなくなります。オンラインでのクラス統制はリアルより各段に難しいです。
・日々のスケジュール(時間割)を作る
子どもが家にいるときの最大の難点は習慣づけです。大人はある程度日々のスケジュールが変動しても対応できますが、子どもは今まさにその習慣を学んでいる最中です。お家にいても毎日規則正しい生活を習慣とする。そのためには学校が朝からの時間割を作って提供してあげるのが一番効果的だと思います。
・オンラインプラットフォームを入れて課題共有、連絡事項はそこで共有する
海外の学校では、入学試験、入学手続き、入学後の保護者への連絡等々全てプラットフォーム上で完結する学校が多いです。学校から保護者へのお知らせも紙ではなく、メールだったりということがほとんどです。日本の学校もこのスタイルにしたら先生達の負担が減る気がするのですが、気のせいでしょうか。個別メールやメッセージでやるよりは、システムを入れて全員が状況を把握できる状態にしておく方が1人の先生の負担も減らせるのではないかと思います。オンラインに移行すると初期は時に保護者とのやり取りが増えますので、その辺の負担をどう減らしておくかも事前に考えておいたほうが良いです。
・子どもと先生との1対1の時間を週1回は設ける
オンラインのグループレッスンでは、子ども一人ひとりときちんと向き合う事が難しいです。全員に発言させようとすると一人の発言量は必然的に少なくなります。子ども達の理解度も普段の対面でやっているときよりもわかりにくいです。そのため、オンラインに移行する際には個別の時間が必須だと思います。なかなかやるのは難しいかもしれませんが、10分でも子ども達と1対1で向き合う時間を先生達が作ることが重要と思います。米国でもグループレッスンのみならず、途中から個別でのミーティングをいれる学校が増えてきました。それはまさにグループではみきれないというオンラインの課題を反映しているものと考えられます。
子ども達の学びを止めない為に、今どうしたらよいか
この事態が早く終息することを切に願いますが、今の日本は欧米と同じ道をたどるか、それともここで落ち着くのかという先が見えない状態にいます。この状況が日本で長引いた時には、最悪夏休みまで学校が再開できない事態もありえるでしょう。GW後に再開できなかったときの準備がどれだけ進められているかわかりませんが、それに向けて今からオンライン移行を真剣に協議する必要があると思います。オンラインでのレッスンは、思っている以上にかなりの制限があります。リアルのレッスンをそのままやることは不可能に近いです。特に今まで一度も学校生活を送ったことのない新1年生や小学校低学年の子ども達へのアプローチは考えなくてはならないと思います。この話が、教育現場で日々試行錯誤なさっている方々に少しでも参考になればと思います。
寄稿者プロフィール
満木 夏子
GKCorsのCo-founder, Director を務める。
グローバルカンファレンスの主催企業で企画・運営責任者を経験。英国での就労経験、また前職での国内外のプロフェッショナルと関わる中で、次世代の子供たちには日本にいても世界に出ても自分の考えを英語できちんと伝えられるようになってほしいと2018年にGKCorsを立ち上げ。現在は、世界最大のテクノロジーカンファレンス、ウェブサミットの日本事務局代表としても活動している。
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