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日本のスタートアップのグローバル展開には大きく2つの特徴があります。一つは「日本国内の特定市場を狙い、それから海外展開を考える」というものと、「はじめから国境越えを狙っている」もの。どちらが成功確率が高いのでしょうか?
世界で活発に投資育成活動を続ける500 Startupsの日本代表であるJames Riney 氏が「Venturing Beyond Borders(国境を超えるベンチャー)」という講演を行いました。2017年1月31日から2月1日にかけて福岡で開催されたスタートアップ国際イベント「FiSH」の基調講演での内容です。James氏は投資家のキャリアのほかStory.jpでスタートアップを成長させた経験がある人物。本邦初公開のストーリーとのことで、短くシンプルながら強いメッセージが込められています。
500 Startupsについて簡単なおさらい
まず、500 Startupsについておさらいしましょう。500 Startupsは2010年にアメリカシリコンバレーに設立された投資および育成をする投資会社です。50か国以上でシード期(概ね創業前後)のプロジェクトに1700回以上の出資を行っている、世界でも稀有な存在です。
最大の特徴は、300名を超えるメンターおよび3000名以上の起業家ネットワークが世界に広がっている点。M&A先の大手企業や次のステージの投資家などへのネットワークも豊富で、スタートアップが成長した際にも次への資金調達などがしやすい傾向があるといいます。
以下は投資先の一例。幅広いジャンルへの投資活動を行っています。
500 Startups Japanについては、2016年2月に30億円規模の日本向けファンドの組成し活動をスタートしています。投資規模は初期に1000万円から5000万円、追加投資で5000万円から1億円とのことです。
アーリーステージのスタートアップに告ぐ
500 Startups Japan 代表兼マネージングパートナー James Riney氏
James氏は強く主張します。「初期の段階でチームと企業文化をどのように構築するかを考えてください。後で変更することは不可能です」。
どういうことなのでしょうか?
グローバルに展開を考えるスタートアップという前提で「日本語を話す企業」「英語を話す企業」それぞれの「良い点(pros)」「悪い点(cons)」を挙げたのが以下のスライドです。
まずは良い点
・「日本語を話す企業」の良い点
より多くの人材が獲得できる
人件費が比較的安価
早い時期にすばらく動くことができる
・「英語を話す企業」の良い点
“グローバル”がDNAに刷り込まれている
世界中の人材を獲得できる
海外展開がより容易になる
次は悪い点です。
・「日本語を話す企業」の悪い点
海外の顧客に売っていくのは難しい
海外オフィスとの連絡や管理が難しい
グローバル情報へのアクセスが少ない
・「英語を話す企業」の悪い点
日本にいる人材が少ない
バイリンガルのスタッフは人件費が高い
このように英語を話せる会社であればグローバル展開がしやすくなるのは明白です。ただし日本においては人材を獲得するの難しい。これらのことから「早い段階で英語を話せるような企業文化を選択することが大切」とJames氏は言います。
はじめに挙げられるのが「(海外展開では)本社がフルコミットすること」というものです。「これをしてない企業は、すべて失敗に陥る」とJames氏はいいます。
良い例としては、Facebook Japanが挙げられます。Facebook HQ(本部)は、日本ローカルチームのフィードバックを信頼し、最も優秀なエンジニア達を日本に送り、日本エリアにおける適切な提携を実現しました。
「コミットするということは、各地域のチームを降るエンパワーメントするということです。彼らがパフォーマンスを発揮することにフォーカスしてください。
エンジニアリングリソースと資金でチームを武装させる準備をしてください、それで実行に移すことができるようになります。もしこれができないのであれば、何もやっちゃいけないんです。
それができたらあとはスピードです。地元のプレイヤーと戦う可能性が高いので、そのマーケットにフォーカスしすみやかに適応します。彼らを打ち負かすには迅速に行動することなんです」(James氏)
海外でスタートアップを成功させるには、ミッションを効果的に実行することができるカントリーマネージャー(対象となる国や地域を立ち上げる担当マネージャー)が必要です。
「強いカントリーマネージャーに必要な能力は、組織の上も下も見てマネージできること」とJames氏はいいます。
「カントリーマネージャーは、素晴らしい地元の人材を雇うことができないといけません。また、同時にHQからのサポートを効果的に得られるようにする必要があるんです。
また、言語や文化の壁を乗り越える能力が必要です。かつ、海外オフィスの設立もスタートアップと同じですから、混沌とした状態を乗り越えるチームづくりが必要です。起業家精神は不可欠ですね」(James氏)
次はビジネスパートナーです。「必要不可欠なわけではないですが、あるにこしたことはない」とJame氏はいいます。
「ビジネスパートーがいれば、迅速に信頼関係を構築することができます。その地域で強いブランドと信頼を持っている人や企業とパートナーシップを組むことができれば、現地に展開するスタートアップにとって門戸が開かれた状態になります。
それは流通のためのチャネルや意思決定者とのコネクション、パートナーが持つセールスやエンジニアの力を借りることができる可能性もあります。
ただ注意点もあります。排他的独占契約をしてしまうとその先の展開が描きにくくなる場合もあります。またコンサルタントなどとのパートナー契約については過去の実績などを確認した上で進めたほうがいいこともあります」(James氏)
最後の項目は「買収」です。ときによっては効果的に海外市場参入することができると考えられます。
良い点は
・その企業の人と製品、顧客を獲得できる
・競争相手を連れてくる
・迅速に活動できる
悪い点は
・合併後の統合リスク(企業カルチャーの衝突、製品の互換性が担保できないなど)
・コスト
「買収は、その企業のリソースを獲得し、相手のマネジメントチームをよく知り信頼するということ」とJames氏はいいます。
以上4つのポイントがJame Riney氏による「国境を超えるスタートアップの作り方」の内容です。
【関連URL】
・500 Startups Japan
http://500startups.jp
・福岡でスタートアップ国際イベント「FiSH」開催、一過性ではなく地域に力を与える野心的取り組み @maskin
http://techwave.jp/archives/fish-fukuoka-startup-hub-24770.html