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「ブランド」という言葉の定義も難しいのだけれど、まあ信頼感みたいなものだと考えていいと思う。「このブランドの商品なら安心だから」ということで詳細が不明でも購入につながる。
ということで、信頼感を得るために、企業は広告などを通じてメッセージを発信してきた。
しかしそれは情報ルートが、マスメディアしかなかった時代の話。一方通行の情報発信しかできなかった時代の話だ。今は情報双方向のネットがある。当然、広告や広報のあり方は変化しなければならない。
無理やり例えていうのなら、生徒会長になりたい生徒の情報の発信を考えてみればいい。本当なら、一人ひとりと話をして、できるだけ自分の考えを話して、できるだけ相手の話を聞くことが望ましい。人間同士の信頼を勝ち取るには、基本的には話をいっぱいするしかない。できるだけ情報をやり取りし、お互いを深く理解する以外に、信頼関係を構築する方法などないんだ。
しかし学校の規模が大きければ一人ひとりと話はできない。そこで校内放送などを通じて自分の考えを発表する。マスメディアを使った一方通行の情報発信のようなものだ。
そこにインターネットという情報技術が登場した。非常に多くの人との情報のやり取りする方法が登場したわけだ。
確かに実際に一人ひとりと実際に会って話しするほど効果はない。それほどの効果はないが、双方向で情報をやり取りすることで、ある程度の信頼を勝ち取ることは可能だ。
マスプロダクション、マスセールス、マスコミなど、マスを対象にした行為によって失った物を、テクノロジーの助けによって部分的ながらも取り戻す-。これがインターネットに代表されるIT革命の本質だと僕は思っている。
つまり、できるだけ一人ひとりと情報をやり取りする形を構築することこそが、インターネットの可能性を最大限生かすことであるのだ。
そうであるにも関わらず、インターネットを使って今まで通りのマス向け情報発信の形を続けている企業、広告会社が多い。フラッシュを使ってきれいなウェブページを作ることばかりに注力したテレビコマーシャルのようなページのいかに多いことか。
ケータイのウェブページを見ても、この傾向が見られる。対照的な2つのケータイ会社のページを比較してみてほしい。ソフトバンクとauのページだ。
ソフトバンクのサイトにアクセスすると、最初は「now loading」と小さい表示が出て、データをダウンロードするのに少し待たされる。ダウンロードされたあとのページは確かにきれいにできている。しかしこうしたきれいな画像、映像を楽しみたいという目的で、サイトにアクセスするユーザーってどれくらいいるのだろうか。
反対にauのケータイ探検隊のサイトを見てもらいたい。派手なフラッシュはいっさいないシンプルな造りだ。その代わり「開発者の声」というコーナーがあり、メーカーの開発者が自分の開発したケータイについて語っている。開発者の話には、商品に対する愛着がある。それはそうだろう。自分自身の熱い思いを込めた商品なのだから。わたしは開発者を超える宣伝マン、広報マン、営業マンはいない、と思う。開発者の話ほど、その商品の特徴が分かる解説はないんだ。
そしてこのサイトには「コメント」として、ユーザーが投稿できるコーナーもある。購入を検討中のユーザーから質問が寄せられて、実際に購入したユーザーがそれに答える場面も見られる。
僕はケータイを買い換える際に、このケータイ探検隊のサイトを非常に参考にしている。ソフトバンクのケータイにも気になる機種があるので、ソフトバンクでもケータイ探検隊のようなサイトを立ち上げてもらいたい。またauのサイトもフラッシュのサイトばかりを前面に押し出さず、ケータイ探検隊をもっとフィーチャーしてはどうかと思う。
繰り返しになるがブランドという信頼感を得るには、情報を双方向でやり取りするのが最も効果的なのだ。そして欲しい情報を瞬時にアクセスできる使い勝手のいいサイトのほうが、信頼感、ブランド力が強まるのだ。
きれいな画像、動画で信頼感、ブランド力を向上させなくてはならなかったのは、インターネット登場以前の話。双方向の情報のやり取りが不可能だった時代の話だ。
より効果的に信頼感、ブランド力を向上できる方法が登場したというのに、前の時代のやり方から発想が抜け出せないのは、なんとも残念な話だ。