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主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。
▼競争の形は個人戦からテクノロジーを使った団体戦に
表現物の価値を計る物差しが、「芸術性」「質」というものに加え、「共有」「つながり」というものが台頭してきているが、表現物を取り扱うビジネス間の競争のルールにも変化が生じている。
過去を振り返っても競争のルールは大きく変化した。国家化の局面の中で、最初は武芸の達人同士の争いだった。そうであるなら、個人の技量が決め手になる。
それがやがて軍隊同士の衝突になった。軍隊同士であれば、鉄砲、戦車などの武器が勝負を決める。個人の技という人間の力ではなく、武器というテクノロジー
を利用した組織の力が重要になる。
工業化社会の局面でも、同様だった。1人1人が手作業で靴を作り上げるのではなく、テクノロジーを使った大量生産で低価格の靴を作った企業が勝った。ここでも個人戦ではなく、テクノロジーを使った団体戦に、競争のルールが繁華している。
表現物の競争の形もまた変化しようとしている。人間の力が勝負を決める個々の表現物の間の競争ではなく、テクノロジーの力が勝負を決める無数の表現物の集
合の勝負である。国家化の時代も工業化の時代もそうであったように、情報化の時代にも、新しいテクノロジーを使った新しい形の団体戦が重要になるのであ
る。
もっといえば、大きく成長するのは、テクノロジーを使った団体戦に向いた組織であり、個人の力に頼った個人戦に向いた組織が活躍できる場は、縮小傾向にあるのだ。
▼ロングテール時代でもビジネスに変化なし
最近のテクノロジー系の流行の言葉に「ロングテール」というのがある。書籍という表現物を使ってこの言葉の意味を簡単に説明してみよう。一番よく売れてい
る本から順に並べたグラフを作ったとする。X軸に過去1カ月に売れた本を最もよく売れた本から順番に並べる。Y軸は販売部数とする。
インターネット普及以前ならX軸に並ぶ本の数はそう多くなかった。書店の店頭に並べられる本の数には限りがある。売れなくなった本は店頭から次々と姿を消し、一度店頭から姿を消した本が再び売れ始めることはほとんどなかった。
ところがインターネット上の書店なら、在庫がなくならない限り、売れない本でも販売され続ける。ユーザー一人一人の購買履歴から、そのユーザーが好きな本を推薦する仕組みなどもあって、古い本でもわずかながら売れ続けることが多い。
過去1カ月に売れた本を並べたグラフでみると、X軸が長く伸びる。まるで長い尻尾のように。ゆえにネットの普及後にみられるようになったこうした現象がロングテールと呼ばれるようになった。
あまり人気がなく細々と売れている商品のことをロングテールと呼ぶこともある。一方で売れ筋のヒット商品をヘッドと呼び、ヘッドとロングテールの中間に位置する商品をミドル、もしくはマジックミドルと呼ぶことがある。
さてロングテールの時代になり、一見ビジネスが変化したように思われがちだが、作家や出版社のビジネスには何の変化もない。これまで同様に、目指すはヒッ
ト商品である。ヒットしなかった商品でもネットのおかげでわずかに売れ続けるようにはなったが。売り上げとしては微々たるものである。ロングテール効果な
どほとんど無意味であり、ヒット作を出すことがこれまで同様に最も重要なのである。作品を作るという人間の力を使ったビジネスでは、相変わらず競争は個々
の表現物間で行われるのだ。これまでと、ビジネスにそう変化はないわけだ。
一方で変化があったのは、テクノロジーの力が勝負を決める集合の競争部分である。
ネット上の書店アマゾン・ドットコムは、1つ1つの利益は小さいものの、非常に多くのロングテール商品を無数に集めることで全体として大きな収益を上げることに成功した。
▼オンデマンドで儲からないのは当たり前
同様にオンデマンド放送は儲からないと嘆くテレビ局関係者や製作プロダクション関係者がいるが、儲からないというのもまた当たり前の話である。
データ転送の形に「プッシュ」と「プル」があるといわれるが、通常の放送というものは「プッシュ」である。視聴者は、受け身でも番組を見ることができる。
中には、それほど強くその番組を見たいと思っていない視聴者もいるのだろうが、その視聴者にも取りあえずその番組は届く。
一方、オンデマンド放送は「プル」である。視聴者がその番組を見たいと明確に意思決定しない限り、その番組は視聴者に届くのである。
視聴者がどれだけ真剣にその番組を見たかどうかは別にして、番組が届くという意味の視聴率では「プッシュ」型の放送のほうが数字は上だろう。
オンデマンド放送にはロングテール効果があり、昔の映画などもある程度の資料率は稼げるのだろうが、やはりその効果はそれほど大きくなく、「プッシュ」と「プル」の差を埋めることは、到底期待できない。
そこで「オンデマンド放送は儲からない」という嘆きになるわけである。
しかし「番組」という人間が作った表現物、人間の力が勝負を決める個々の表現物の間の競争というのであれば、昔と競争のルールが何も変わっていないのは当たり前。オンデマンド放送にしたからといって、個々の製作プロダクションが急に儲かるようにはならない。
ではだれが儲かるのか、といえば、新しい競争の分野での勝者である。インターネット普及により、競争のルールが変化しつつあることは先に述べた。人間の力
が勝負を決める個々の表現物の間の競争から、テクノロジーの力が勝負を決める無数の表現物の集合の競争が、新たな競争の分野となった。
そして今、テクノロジーで勝負を決める集合の競争は始まったばかりだ。USENグループの動画配信サービスGyaoの人気が高まったかと思えば、米国の動
画共有サービスYouTubeが急速に普及した。ネット調査会社ネットレイティングスは2007年3月22日に、「YouTube、“史上最速”で利用者
1000万人に到達」という発表文を出している。これで動画サイトの分野でYouTubeの王座が確定したのかと思えば、日本の動画共有サービス「ニコニ
コ動画」が彗星のごとく登場した。ネットレイティングスの2007年9月21日の発表文によると「ニコニコ動画」、8月の総利用時間は前月比52%増加と
ある。前年比ではなく前月比で、である。2007年12月19日の「テレビ局サイトの総利用時間が3カ月連続のマイナス」という発表文では、
YouTube、ニコニコ動画の総利用時間の推移もグラフに入っているが、このグラフをみても、ニコニコ動画がもの凄い勢いで普及、利用されていることが
分かる。
こうした動画サイトの運営で最も重要なのが、無料で動画を蓄積、配信できるようにどれだけ低コストでシステムを構築するのか、ということになる。テクノロジーの力が勝負を決める新しい形の団体戦の競争はまだまだ激化しそうだ。
序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5
アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6