- 「ソラコム」がスイングバイIPOを実現、東証グロース市場上場承認 - 2024-02-22
- (更新)結果速報 LAUNCHPAD SEED#IVS2023 #IVS #IVS @IVS_Official - 2023-03-09
- 「始動 Next Innovator 2022」締め切りは9月5日(月)正午ー経産省・JETRO主催のイノベーター育成プログラム #始動2022 - 2022-09-01
遅ればせながら新・データベースメディア戦略。オープンDBとユーザーの関係が最強のメディアを育てるを読了。
「すべてのメディアはコミュニティになる。すべてのコミュニティはメディアになる」と主張してきたのだけれど、この本の内容はまあそういうことである。コミュニティをビジネスとして支えるために、データベースをどう設計し、どう利用するかが重要になるわけで、この本は、その戦略を深く解説する実務書である。
インターネットの商業利用が始まってしばらくは、オンラインメディアはオフラインの従来型メディアをオンライン上で模倣しただけのものが多かった。まるでネットに空間的制約があるかのごとく情報を選別するエディターを置き、紙のメディアを作成する要領でウェブメディアに取り組むサイトがいかに多かったことか。一部サイトはいまだにそうだけど(苦笑)。
こうした本が出るようになって思うのは、ようやくネットらしいメディアサイト構築のコンセンサスが固まってきたのだな、ということだ。そのコンセンサスとは、ユーザーが発信、生成するデータベースこそが、メディアなのだということだ。そしてそれが正しい認識であるのなら、すべてのメディア事業者は、データベース戦略を持つべきである。その意味で、この本はメディア事業者の必読書である。
データベース戦略を持たないメディアサイトは、「人と人との間に立つ、情報と情報の間に立つ」という意味での「メディア(媒介者)」ではない。データベース戦略を持たないメディアサイトは、単なるコンテンツ提供者である。検索エンジンやRSSリーダー、他社サイト、ブログからアクセスが流れてくるだけの「コンテンツのストレージ」に過ぎないのだ。
本の最後に「どのようなデータベースを扱うのか。データベースをどう見せるのか。その答えのなかに、まだまだビジネスのチャンスはたくさんある」という一文が出てくるが、まさにその通りだと思う。
この本を読んでもビジネスのチャンスが見えてこないのであれば、これからのメディアビジネスでの勝ち目はない。この本の中でも議論されているが、1つのメディアのニッチ領域の中で勝ち残れるのは1社だけになるだろう。
そういう事業者はコンテンツ提供者としての戦略を突き進むのがいいと思う。
執筆者はデータセクションの橋本大也氏、ECナビの宇佐美進典氏、きざしカンパニーの潮栄治氏、エフルートの佐藤崇氏、ウノウの山田新太郎氏。
個人的に面白かったのが、宇佐美氏の章。コンサルタント出身だけあって、理路整然と現状を説明している。潮氏の章も非常に論理的だった。エフルートの佐藤氏とは面識がないのだが、一度取材させてもらいたいと思う。
佐藤氏の指摘通り、ケータイウエブとPCウェブでは特性が異なるので、米国のウェブ大手を相手に日本のベンチャーが十分に戦っていけるのだと思う。佐藤
氏の章を読んで、実際にエフルートのモバイル検索を試してみたが確かによくできている。今後ケータイでの検索はエフルートを使うことが多くなりそうだ。
山
田氏の米国先行事例の豊富さとその正確な認識にも感心した。日常の実務をこなしながら、よく勉強されているものです。
出版社はインプレスジャパンになっているが、この本はだれの企画なんだろうか。非常に優れた企画だと思う。最後の著者による討論は、司会者不在のためか、議論の焦点が絞れていないのが残念だった。
そのほか、参考になった部分を自分のメモ用に以下に書き出してみる。
・データベースメディアの成功の秘訣
1)魅力的な情報のデータベースを持っている
a 独占的な情報のデータベース
b 分野網羅的なデータベース
c フレッシュなデータベース
2)データベースをオープンな状態においている
3)ユーザー同士のコミュニケーションを活性化させている
4)適切なインターフェースとナビゲーションをもっている
5)データベース構造がビジネスモデルと直結している
・データベースのビジネスモデルの形
1)掲載料、登録審査料
2)ユーザーからのプレミアム利用課金
3)記号からのシステム利用課金
4)データベースの二次利用権の販売
5)広告費
・オープンデータベースの構築が新しいビジネスのカギになる
・ケータイの特性
1)個人認証がPCよりも深いレベルで可能である
2)セキュアな環境が整っている
3)パーソナルな端末である
4)決済システムが整っている
5)通信キャリアが率先してコンテンツ配信をうながしている
6)文字情報以外の情報入出力が可能な機器である
・可能性のあるケータイサービス
1)電話帳、スケジュール帳がつながるサービス
2)パーソナライズド検索
3)メタバースサービス
4)モノと人がつながるサービス
・モバイルデータベースメディアは、この数年の間に急激な成長が見込めるジャンルといえる。
・構築するデータベースの選び方
1)テーマを絞る
2)既存のデータベースをうまく利用する
3)組み合わせる
4)既存のアイデアを横展開する
5)従来のサービスでは囲い込めないニーズを取り込む
・データベースの見せ方
1)求めるデータに合わせたデータの集め方
2)モチベーションを喚起する
3)コミュニティ参加以後のアクションを簡単にする