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3月に開催された米オムニチュアサミットで講演した調査会社ジュピター・リサーチのメディアアナリストのバリー・パー氏は、メディアサイトが今後3つの点において進化すると予測する。
その3つとは、「記事の双方向アグリゲート」「ソーシャルメディア化」「プラットホーム化」である。
▼記事のアグリゲートは双方向に
「記事のアグリゲート」は、他社のサイトの記事を集めてくることだけでなく、自社の記事を他社サイトに提供することも含まれる。アグリゲートし、アグリゲートされるということだ。
記事のアグリゲートては、日本でも既に始まっている。
オンラインマーケティングの専門サイト「MarkeZine」は、他社サイトやブログなどの記事、ブログ解析サービスのコンテンツなどをアグリゲートする一方で、自社の記事をヤフーやライブドアといったポータルに配信している。アグリゲートし、アグリゲートされているわけだ。
一方で、ポータル各社は、他社コンテンツのアグリゲートには熱心だが、自社コンテンツを他社にアグリゲートしてもらうことに関してはまだそれほど積極的ではない。新聞社サイトなど従来型メディアサイトは、他社コンテンツのアグリゲートにさえ消極的であるのが現状だ。
パー氏は、今後メディアサイトがMarkeZineのように双方向アグリゲートの方向へ進化していくと予測する。
数年前には、トラックバックを受けつければ他社サイトへアクセスが逃げるという理由でトラックバックを嫌がるサイトがあったが、今ではユーザーがサイト間を自由に行き来できる利便性を提供することのほうが結局はアクセス数が高まる、という認識をほとんどのサイト運営者が共有するようになっている。「ユーザーを抱え込もうとすることより、ユーザーに利便性を提供するほうがアクセス増につながる」ということをだれもが認識するようになったわけだ。
恐らく、これと同じ認識の変化がアグリゲートの領域でも進行中なのだろう。やがてどのサイトもコンテンツをアグリゲートし、アグリゲートされることになるのだろう。その際に大事なのは、メディアサイトのターゲット層がだれであるのかをきっちりと認識し、その層に向けた利便性を追求していくことだと思われる。
▼インターネットがメディアであるという誤解
さて2つ目の進化のポイントである「ソーシャルメディア化」とは、メディアサイトであってもコメント欄やトラックバック欄を設けたり、記事の最後にソーシャルブックマークのアイコンをつけるなどし、記事を核にしたコミュニケーションを促進することだ。サイトをコミュニティ化するわけだ。これは日本のヤフーなどのポータルサイトでも最近、力を入れている分野だ。
一方、従来型メディアサイトの中でも、産経新聞のiza!が早くからソーシャルメディアサイトとして事業を展開。一方的な情報発信が多いニュースサイトの中で、独自の立ち位置、ブランドを確保している。
パー氏は、メディアサイト運営者の多くは、インターネットを従来型メディアのようなものだと誤解していると言う。同氏によると、ネットの本質はコミュニケーションであり、コミュニケーションを促進することで、情報に「コンテキスト」を与えることができる、と述べている。この情報をだれがどのように受け止めているのか、という「コンテキスト」を把握することで、情報の価値が高まるというわけだ。
従来型メディア関係者の多くは、ソーシャルメディア化することでノイズが増え、記事自体の信頼性を低下させることにつながる、と考えている。確かにそういった問題は存在するだろうが、その問題をどう克服し価値あるコミュニケーションを活性化させるかが、今後の目指すべき方向である。コミュニケーションから逃げているメディアは勝ち残れないだろう。
▼勝手に好きなように利用してもらうプラットホーム
進化のポイントの3つ目は、プラットホーム化である。
パー氏は、「価値を創造するためのプラットホームに進化していくことが重要だ」と語る。とはいうものの概念的で分かりづらい話だ。同氏も、このコンセプトに関しては、グーグルマップがAPIを公開することでサードパーティに利用され、価値創造のプラットホームになっている、と説明するだけにとどまっている。米国でさえ、この「プラットホーム化」を実現しているメディアサイトの前例が少ないため、説明しづらいのだろう。
従来型メディアの概念に例えれば、従来型メディアは、情報流通という価値を創造するためのプラットホームだった、ということができる。情報を発信したい企業が発表文という形で発表したものをメディア企業が記事にしたり、宣伝文として寄せてきたものを有料で広告として掲載したりする。そこにそうした情報を入手したい読者が集まってくる。読者が集まるので、余計に情報が集まるという好循環が起こり、メディアは情報流通のプラットホームになる。情報を発信したい人、受け取りたい人が利用する「場」なのである。
パー氏の主張は、今後こうしたプラットホームは情報だけではなく、ソフトウエア的サービスをも流通させるプラットホームになっていく、ということなのであろう。
メディアサイトがソーシャルメディア化し、ユーザーのコミュニティーへと進化していけば、米Facebookで進展しているようなプラットホーム化の動きも出てくるだろう。Facebook上には、サードパーティが開発した「ウィジット」と呼ばれる小さなプログラムが数多く生まれてきているし、ユーザーの属性の一部を広告会社に公開することで、効果の高い広告配信も始まっている。サードパーティが勝手に好きなように利用できるようなプラットホームになることで、メディアサイトは栄えていくし、そういう形に進化していかないと、メディアサイトに将来はない、ということなのだろう。
日本のメディアサイトでも「双方向アグリゲート」「ソーシャル化」は進んでいるが、「プラットホーム化」をどのように進めていくかが、今後の成功のカギになると見られる。特に「ウィジット」の動向には注目すべきだろう。
「双方向アグリゲート」「ソーシャル化」「プラットホーム化」という方向でメディアサイトが進化していくということになると、今後メディアサイトの多くは特定のユーザー層に向けた情報、サービス、物販を提供するニッチサイト、ニッチなプラットホームに変化していくことが予想されるわけだ。