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20世紀の日本の企業の競争力の源泉が改良・改善力だとすれば、21世紀の企業の競争力はデータ解析を通じたコミュニケーション力になる。経営者の経験と勘をベースにした企業経営から、顧客とのコミュニケーションの中でデータ解析を通じて顧客ニーズを把握するというデータ解析ベースの企業経営に移行していくからだ。なぜならデータ解析ベースの経営に移行可能なまでに情報技術は進歩を遂げたし、今後ますます進歩するであろうからだ。データ解析ベースの経営が今後、主流になるのであろうことは間違いないだろう。
顧客の声をくみ上げるデータ解析技術の導入は、まずはコールセンターによせられた意見のテキストマイニングという領域から始まった。多くの企業は当初、コールセンターを単なるコストセンターとみなしていたのだが、やがてコールセンターこそ企業の競争力の源泉になることに気づき始める。コールセンターに寄せられる意見をもとに改良を加えた商品が、非常によく売れるようになったからだ。
顧客の声マネジメントによると、一部企業はコールセンターに寄せられた顧客の声をテキストマイニングで解析し、そこで得た知見を社内流通させ、業務改善、商品改善につなげる体制作りを進め始めているという。
そうした企業が、次に目を付けているのがブログ解析だ。コールセンターには不満や疑問といったタイプの声は集まるが、ブログ解析ではもう少し日常的な意見を拾うこともできるからだ。
@コスメのようなコミュニティの声を拾おうという動きも出てきている。@コスメでは、同サイト上のコメントを解析した結果をメーカーに提供したり、コンサルティングしたりというビジネスが成長しているようだ。ネットメディアは儲からないといわれるが、それは広告収入だけを狙ったビジネスモデルだからだ。メディアがコミュニティに進化し、さらにはこうしたデータ解析のプラットホームに進化すれば、メディアビジネスは再び収益率の高いビジネスになるのだと思う。
ネット上の顧客の声を拾うために、米Bazzarvoice社のようなブログパーツを開発、運営し、さらには掲示板メンテナンスを請け負う企業も出てくるのだろう。
またウェブ解析も、こうしたテキストマイニングと併せて、顧客ニーズの把握のために利用される機会が増えてくるだろう。
これらの領域を手がけるベンチャー企業は、多くの企業がデータ解析をベースにした経営に移行していく中で、今後急成長を遂げることは間違いないだろう。
しかしテキストマイニング、ウェブ解析というツールが進化したとしても、これらはあくまでもツールである。ツールを使いこなすためには、利用者のスキルアップが必要なのである。
「顧客の声マネジメント」の著者、三室克哉氏、鈴村賢治氏、神田晴彦氏の3人は、野村総研のコンサルティング業務の中で、コールセンターに集まる顧客の声を活用するプロジェクトを多数実施した経験を持つ。何のために意見を集めるのか。どうすれば有効なデータに変化させることができるのか。それを社内各部署で活用するには、どのような体制にすべきか。こうした問いに答える具体的ノウハウを蓄積させてきた3人なのである。その具体的なノウハウが、この本の中に惜しげもなく披露されている。
こうしたノウハウは、ブログ解析、ウェブ解析、コミュニティマネジメントなど、新しいタイプのデータ解析をも取り込んだこれからの会社経営にも十分有効なノウハウである。
三室氏と鈴村氏らは野村総研をスピンアプトし、株式会社プラスアルファ・コンサルティングを創業。同社のテキストマイニングツール「見える化エンジン」を使って、データ解析をベースにした企業経営への移行の支援を始めている。「見える化エンジン」はこのエントリとこのエントリに利用させてもらっている。