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「思考の足跡」さんに「いままでの思考の点が線に繋がった」と評していただいた。こういう書評をいただくのが一番うれしい。テクノロジーの1つ1つの事例を羅列しているのではなく、それらのテクノロジーがつながり始めたということが「次世代マーケティングプラットフォーム」のテーマであり、それを理解していただいたことが何よりうれしい。
「思考の足跡」さんは、マーケティングプラットフォームとしてのウェブは主に以下の3つの領域から構成される、として「ターゲットされた広告」「解析」「CRM」を挙げている。本の内容を正確につかまれていると思う。
ただもう1つ、僕自身その存在に気づきながらも、この本の中であえて詳しく取り上げなかった領域がある。それは消費者と従業員の直接対話である。なぜ取り上げなかったのかというと、まだマーケティングプラットフォームとのつながりが明確に形成されていないからだ。
マーケティングの大部分が自動化されるようになるのは間違いない。それが未来の方向であることは間違いないのだが、それではあまりに寂しい。消費者は企業と、人間らしい対話を望んでいるのではないだろうか。
つまり大部分のやりとりを自動化されたシステムが担うのだとしても、いや自動化システムの役割が大きくなればなるほど、人間同士の対話が重要になるのではないだろうか。そんな風に考えている。
消費者と企業の人間らしい対話はどのように促進されるのだろう。消費者同士はインターネット上で対話し始めた。企業の従業員同士はイントラネット上で対話し始めた。こうした対話は今後盛んになる一方だろう。
ところがインターネット上の消費者とイントラネット上の従業員との間には、ほとんど対話が存在しない。企業が両者の真ん中に立ちはだかり、許可した情報しか行き来させないからだ。ほとんどの企業は今日、ブログなどのソーシャルメディアを通じた企業の従業員としての情報発信を禁止しているか、はっきりと禁止していなくても、すべきことではないという暗黙の了解がある場合がほとんどのようだ。従業員がばらばらに情報発信すれば企業として情報の整合性が取れないからだろう。
しかしそうした情報統制はいずれ不可能になるだろう。そして消費者は従業員との直接対話をより強く望むようになる。企業との人間らしいつきあいを望むようになる。企業は自動化されたロボットではない。人間の集合体だからだ。
そうした思いが強くなり、いずれインターネットとイントラネットの間に立つ「ベルリンの壁」が崩壊する時期がくるのだと思う。広報パーソンの今の仕事は「ベルリンの壁」の守衛だが、そのときがくれば守衛自らが壁を壊そうとするだろう。それが広報の仕事になる時期がくるのだと思う。
つまり下の図のグレーな領域、テクノロジーを使って多くの人の力を引き出す部分の領域の構成要素は、ターゲット広告、解析、CRMという「テクノロジー」に加え、「人間同士の対話」になるのだと考えている。
一方でコアの領域、個人のスキルによって成立する領域の構成要素は、多くの広告パーソンや広告本が指摘するように、「テクノロジー」と「クリエイティブ」になるのだと思う。