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相変わらずメディア企業がオンライン事業に躍起になっている。どこかとどこかが共同で新しいコンテンツ配信に乗り出した。どこかが斬新なオンライン事業を始めた・・・。
もしこれらの試みの目的が、まっとうなコンテンツ製作コストを上回る収益を上げることにあるのであれば、残念ながらすべて失敗に終わるだろう。断言してもいい。こうした事業にはある視点が欠如しているからだ。
ケータイの機能に関する技術革新は行くところまで行った。これ以上、どのような機能を追加できるというのだ・・・・という議論。この議論にも大事な視点が欠如している。
2009年、消費者のメディア消費の形を激変させるようなテクノロジーはどういうものが登場するのだろう・・・。というメディア業界内で交わされる議論。同じくある視点が欠如している。
確かにインターネットは、消費者のメディア消費の形を激変させた。だれもがその変化に必死に追いつこうとし、その変化の先を読もうとしている。そして変化に合わせた事業に乗り出す事で、収益を上げることができるのではないかという根拠のない夢を抱いている。
しかし消費行動を激変させるような技術革新はそろそろ終わろうとしている。もちろんまだ幾つかでてくるかもしれないが、それよりも大きな変化が消費者向け以外の領域で起ころうとしている。
広告主企業の周辺領域だ。
拙著「次世代マーケティングプラットフォーム」は最初、情報感度の高い広告関係者に広く読まれた。一部広告関係者からは批判的な書評もいただいた。既に
情報感度の高い広告関係者にはほとんど読まれたようで、今は一般企業のマーケッターに読者層が広がりつつあるようだ。一般企業のマーケッターからは、非常
に高い評価をいただくことが多い。一般企業関係者は従来型の広告に対する特別な思い入れはないようで、消費者との距離を縮めるのに効果のある施策ならなん
でも積極的に関与していきたいようだ。
このことからも分かるように、広告主企業が積極的にテクノロジーに関与し始めようとしている。特に今回の景気後退はこの傾向を強めている。消費者向け領域以上の技術革新が広告主企業向け領域内で進む。これが2009年からの新しいトレンドである。
メディア企業や広告会社は、消費者向け技術よりも広告主向け技術により注目すべきである。
中でも注目すべきはソーシャル広告である。信頼する友人からのお勧めは、どんな広告よりも効果が高い。この友人からのお勧めに対して、どのようなテクノ
ロジーを使って効率よく自動的に企業からのメッセージを付加できるのだろうか。Facebookもdiggもmeboも、この領域の技術革新に躍起になっ
ている。この領域がホットな技術革新の領域であり続ければ、いずれそれなりの技術が登場するだろう。もし効果的であることが判明すれば(ウェブ解析を使う
ことで効果はリアルタイムで分かる)広告主企業は、検索連動型広告の登場時同様に、いやそれ以上の勢いでソーシャル広告に乗り出すだろう。そのとき広告、
メディア産業は、グーグル登場以上の衝撃を受けることになる。
そのときに備えてメディア企業は何をすべきか。
その技術が機能するようなメディア環境を作るべきである。コミュニティビジネスに注力すべきなのである。それがメディア企業の唯一の進むべき道である。
「コンテンツを流して終わり」・・・。この発想から脱却できないメディア企業は、メディア企業ではなくなる。コンテンツプロバイダーになる。そして同じ
ようなコンテンツを提供するコンテンツプロバイダー間の価格競争は熾烈になる一方で、多くが脱落し需要供給のバランスがとれるところまでコンテンツプロバ
イダーの収益率は低下の一途をたどるだろう。
メディア企業、広告企業ともに、広告主企業の変化を追いかけるのではなく、変化の先読みをして迅速に動くべきだ。
注目すべきは新しいメディア技術ではない。広告主周辺の技術革新にこそ注意を払うべきだ。