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Facebook Placesはあらゆるモバイル機器への対応を進めるようだが、まずは対応済みのiPhoneアプリの新バージョンがリリースされた。日本語のアプリでも「スポット」のアイコンが表示されるようになっているが、この原稿執筆段階では実際のサービスはまだスタートしていないようだ。
Places(スポット)ボタンはトップ画面の真ん中に位置しており、Facebookがこの機能に力を入れていることが分かる。
なぜFacebookは位置情報に力を入れるのか。
トップページの真ん中にアイコンを置くほど、力を入れるのはなぜだろう。
それは今後急成長する広告市場がそこにあると思われるからだ。
イノベーションは最初から業界の中核部分を狙ってくるものではなく、まずは周辺に変革をもたらすものだ。Googleは、大手広告代理店が手掛けるような大規模広告主のマス広告を狙うのではなく、大手が無視するような中小、零細広告主の広告をテクノロジーを使ってかき集めることに成功した。大手が相手にしないような小さな広告もかき集めれば巨大市場になり、Googleは世界一の広告会社になったわけだ。
街のレストランや商店の広告も、大手広告会社にとってみれば一つ一つ取り扱っていては売り上げの割に手間がかかる。なので手を出さない。それをテクノロジーやユーザーの力を使ってかき集めようというのが位置情報サービスだ。これもまたかき集めれば巨大市場になる可能性がある。
このことには早くから多くのベンチャー企業が気づいている。先日Yahoo! Japanが買収したシリウステクノロジーズなどもそうだし、三橋さんが記事にしてくれたサンゼロミニッツや、日本人に人気のfoursquareなどもそうだ。
(関連記事:ヤフーがシリウステクノロジーズを買収【湯川】、エリア×ランチでいつでも最新情報が楽しめて共有できるサンゼロミニッツ。CEOの谷郷さんにインタビュー。 【三橋ゆか里】、foursquareが1億チェックインを記録【湯川】)
そこにいよいよ巨人が乗り出してきた。5億人のユーザー数を誇るFacebookが位置情報機能を搭載したのだ。
のっしのっしと迫ってくる巨人の前を逃げ惑う小動物たちの運命はどうなるのか。
あくまでもプラットフォームを目指すFacebook
意外にもFacebookは先行ベンチャーを踏み潰そうとはしなかった。
Facebookの本社で行われた発表会には、先行ベンチャーのfoursquareやGowalla、Yelp、Booyahなどの幹部が招待された。Facebookはこうした先行ベンチャーを含めあらゆる位置情報系サービス事業者に対しFacebook上のチェックイン情報などのデータを無償で提供するという。Facebookはインフラ、プラットフォームになるわけだ。
ネットビジネスには、プラットフォーム事業者と、その上で事業を展開するサービス提供者という2つのビジネスモデルしかない。プラットフォーム事業者はサービス提供者に必要な機能や仕組みなどのインフラを無償もしくは低価格で提供する。そのインフラを利用することでだれもが低コストでビジネスを展開できるし、中には大成功して巨額の富を得るケースだってある。一方でプラットフォーム事業者は個別には少額課金でも無数のサービス提供者を集めれば大きなビジネスになるし、サービス提供者に対して圧倒的な影響力を持つようになる。
Facebookは、自ら位置情報サービスを展開するのではなく、プラットフォーム事業者を目指すわけだ。
サービス提供者は、プラットフォームが提供する仕組みにどう付加価値をつけるか、他のサービス提供者とどう差別化するかが重要になってくる。チェックインできる、チェックインした友人の情報が見れる、などといったFacebookが提供する基本的な機能と同程度の機能しか提供できないのであれば、そのサービス提供者に存在価値はなくなる。ユーザーは離れていくだろう。
付加価値はアイデア次第。拡張現実(AR)機能を付加価値にし、iPhoneをかざせば、その方向のお店にチェックインした友人のアイコンが空中に浮いてみえる、というようにチェックイン情報を応用してもおもしろいかもしれない。
foursquareの運命は
発表会にはfoursquareの幹部も招待されていたようだが、foursquareはFacebookというプラットフォーム上のサービス提供者の道を歩むということなのだろうか。
三橋さんの記事によると、foursquare自体もプラットフォーム戦略を推進している。(FoursquareのAPIを使って作られたアプリいろいろ22選 【三橋ゆか里】)
このことに関して米Business InsiderがfoursqareのCEOのDennis Crowley氏に対してメールで質問している。
それによると、foursqareは今後もプラットフォーム戦略を継続する考えのようだ。Dennis Crowley氏によると、Facebookが提供する位置関連機能はチェックインなどの基本的な機能だけだが、foursquareでは関連情報の表示やゲーム的要素なども取り込んだプラットフォームだという。
foursquareのチェックイン情報はFacebook上のNewsの欄に既に表示されるようになっているし、いずれFacebookからのチェックイン情報もfoursquareに取り込むようにするという。
プラットフォーム対プラットフォーム。どちらが勝つのか。
それはユーザーの支持を得たほうだろう。foursquareは今後も情報感度の高いユーザーの間でのプラットフォームであり続け、Facebookはより一般的なユーザーの間のプラットフォームになる、という住み分けも可能かもしれない。もちろんFacebookが圧倒的に強くなる可能性もある。
位置情報をめぐるFacebook対Googleの戦い
位置情報サービスがホットな領域であることは、当然Googleも理解している。奇しくも同じ名称のGoogle Placesというサービスを提供している。Google Placesは、街のレストランや商店などが、自分の店の情報を自ら入力できるサービスで、こうすることでGoogleで検索したときに正確な情報が表示されるという仕組みだ(日本ではGoogleプレイスという名称)。
店舗に自らの情報を提供してもらうGoogle Placesと、店舗に加えユーザーにも提供してもらうFacebook Places。どっちの情報のほうが便利になるのだろうか。
もちろんまだ分からないが、人間関係をベースにしたFacebookのほうが有益な情報が集まるような気はする。