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[読了時間:7分、「蛇足」含む]
米TechCrunchが「Facebookがケータイを開発中」と報じたことを受け、FacebookのCEO、Mark Zuckerberg氏は誤解を避けるためにTechCrunchのMichael Arrington氏などをFacebook本社に招き、Facebookのモバイル戦略について自ら語った。それによると、FacebookはiPhoneやAndroidケータイに対抗するようなケータイを開発することが目的ではなく、モバイル環境の中でのソーシャルなプラットフォームを開発しようとしているという。(インタビュー記事。英文。日本語訳が出た時点で日本語の記事へのリンクに変更します)
Facebookは電話を開発しているのか、していないのか。「『電話を開発する』という言葉の定義次第」とZuckerberg氏は言う。
確かに「開発メーカー」の定義は過去20年くらいで大きく変わった。AppleはiPhoneをデザインした。OSも開発した。チップもデザインした。しかし製造自体は、専門の製造業者に任せている。自ら製造するわけではないので20年前ならAppleは携帯電話メーカーと呼ばれなかったかもしれない。しかし専門の製造業者へのアウトソースが当たり前になった今日では、「AppleがiPhoneを開発した」としてもまったく問題ない。
一方でGoogleはAndroidケータイの次世代機種を開発する場合、ハードメーカー1社とスクラムを組む。密な協業を通じて次世代のケータイを作り上げている。この場合Googleは「開発メーカー」になるのだろうか。同じような時期に同じような協業体制で作られたAndroidケータイでも「Droid」はMotorolaが「開発メーカー」とみなされ、「Nexus One」は実際に製造したHTCではなくGoogleが「開発メーカー」とみなされている。違いは、Droidはモトローラがマーケティング、販売に責任を持ったこと、Nexus OneはGoogleが責任を持ったことぐらい。つまり定義次第で「Facebookがケータイを開発している」とも「していない」ともいえる、というのがZuckerberg氏の主張だ。同氏は、AppleやGoogleなどに比べて、Facebookの関わりは「より軽いものだ」としている。なので「ケータイを開発しているのではない」と同氏は強調する。ただ携帯電話プロジェクトを「Facebookケータイ」と社内で形容することもあるようだ。
「より軽いもの」とはブランディングの面においてあまりFacebook色を強く打ち出すつもりはないという意味だろう。「iPhoneやAndroidに対抗するつもりはない」とZuckerberg氏は何度も強調している。対抗するのではなく、iPhone上でもAndroid上でもソーシャルな機能を提供していきたいという。パソコン向けウェブサイトに「いいね!」ボタンを設置することでそのサイトがソーシャル化する。「友人が『いいね!』をクリックしているから記事を読んでみよう」「彼が『いいね!』しているからこの音楽を聞いてみよう」というソーシャル化のメリットを受けることができる。同様の効果をスマートフォンのすべてのアプリに広める、モバイルのソーシャルなプラットフォームを作る、というのがFacebookの目指すところだとZuckerberg氏は言う。
具体的には、iPhone、Androidともにアプリを提供するほか、OSとの連携機能も開発していくという。「iPhoneに関しては、iPhoneの連絡先とFacebookの友人リストの同期機能を開発した。Androidの連絡先はかなりシームレスに行われる」と同氏は言う。ただそれだけではなく「(OSの)もっと深いレベルまで立ち入っていけばどのようなことが可能になるのだろう。そういったことを真剣に検討している」という。
このOSの深いレベルまでに立ち入るというのは、iOSの場合、Appleとの友好的な協力関係がなければ難しい。Androidの場合、オープンソースOSなのでかなり自由にできるのかもしれない。実際にハードメーカーからFacebookの機能を根幹部分に取り込んだAndroidケータイ開発に関する提案なども受けているようだ。この部分の情報が漏れて「FacebookがAndroidをベースにしたケータイ開発中」という話になったのかもしれない。
つまりFacebookケータイと大々的に打ち出してiPhone、Androidに対抗するつもりはないけど、どこかのメーカーと組んでAndroidを改良したOSを搭載したFacebook機能を核にしたケータイの開発はあり、という話。ただそれをもってiPhone、Androidを駆逐するというつもりはなくて、iPhone、Androidにも引き続きアプリを搭載してもらいたいし、できればOSの改良に関してもソーシャルな機能が提供できるようにFacebookの意向も聞いてもらいたい。でもiOSは厳しそう。Androidは可能性あるかな。ざっくばらんに言えば、Zuckerberg氏は、こんなことを言っているのだと思う。
さすがにApple、Googleに正面からケンカを売ってモバイル事業に参入できない。なのでTechCruncchを呼んで「開発してるのはケータイじゃないよ、プラットフォームだよ」と主張した、ということだろう。
でもだれもハードとしての電話機の話などしてない。さらに言えばOSの話もしていない。今一番問題なのが、だれがモバイルプラットフォームの覇権を握るのかってこと。その上でアプリやサービスを開発するのに最もいいプラットフォームはどこになるのかっていう話。それがここ5年くらいのIT業界を占う上で、一番重要なテーマになるんだと思う。
だから「ケータイ作ってないよ、作ってるのはプラットフォームだよ」と言っても、AppleもGoogleも決して安心しないと思うよ。AppleやGoogleが作ったアプリのプラットフォームって、その上に人間関係や個人の趣味嗜好データを備えたソーシャルなプラットフォームが乗っかれば、メインはソーシャルなプラットフォームになる。だって情報も広告も製品もお金も全部、人間関係を通じて流れるようになるんだから。
それにしても、このZuckerberg氏のインタビューには重要なポイントが幾つも含まれている。また別のエントリーで取り上げてみたい。TechCrunch Japanが訳したら絶対読むべき。訳さなくても、辞書片手に読む価値はある。