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世間一般的には僕と佐々木俊尚さんて同じような考えを持っているように思われている。それはまあ正しい。ただし微妙に意見が異なるときがある。
- 佐々木さんは2006年4月にグーグル—Google 既存のビジネスを破壊する
という本を書いている。僕は2007年3月に爆発するソーシャルメディア セカンドライフからモバゲータウンまで グーグルを超えるウェブの新潮流 という記事を書いた。ウェブはGoogle全盛期のあとに必ずソーシャルの時代に向かうという主張だった。 - ある電子出版のセミナーに佐々木さんとともにパネラーとして参加したときのこと。会場から「動画や音声が電子書籍に搭載され、よりソーシャルなものに進化すれば、普通のウェブページと変わらなくなるのでは」という質問が出た。僕の反応は「よく分からない。確かに電子書籍という形態が過渡期のもののような気がする」というものだったが、佐々木さんは「そんなことはない。個人の思考の表現物としての書籍は残る」というものだった。そのときは佐々木さんの自信たっぷりの反論に圧倒されてしまったのだが、その後いろいろ考えた結果、やはり究極の未来には電子書籍もウェブも境界線がなくなるという考えに自信を持つようになり、電子書籍は紙へのノスタルジア=いずれウェブに同化するというブログ記事を書いた。
- そして少し前の記事蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】を掲載したことで、佐々木さんから批判をいただいた。そのことに対する思いは、記事の「蛇足」に「追記」として加筆したし、ソーシャルの未来を僕がどう考えているかに関してはソーシャルの次の時代と通貨になる個人データという記事などにこれまでに書いた通り。
これだけじゃ僕の主張が分かりづらいかもしれない。でもここに今存在しないことを思い描くのだから、だれにでもわかる形で書き表すことは非常に難しい。Twitterや一本のエントリーで分かりやすく書くことはほぼ不可能だ。時間のある方は、これまでの僕のエントリーを順に読んでいっていただければなんとなく理解していただけるかとは思うが、そんな時間とエネルギーのある人はまずいない。こういうときこそ本の出番だと思う。日本のウェブにとってソーシャルの時代を読み解くことは非常に重要なことだと思うので、これは本にしたいと思っている。
さてこうして振り返って見ると、基本的に同じような意見を持っているのに佐々木さんと僕の意見に違いが生じるのは、未来のどの時点に焦点を当ているのかが原因になっているのだと思う。佐々木さんは近未来を、僕はより先の未来を読もうとしているのだと思う。僕のほうが先を読めていると自慢しているわけではない。究極の未来を読むのは実はそう難しいことではなく、近未来を自信をもって語ることのほうがよほど大変だということは、堺屋太一氏が指摘する通りである。