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Facebook、mixiめぐる2つの誤解と、新しい指標の必要性【湯川】

[読了時間:4分]
 最近よく耳にする2つの誤解がある。1つは「Facebookは実名制なので日本で伸び悩んでいる」という説。もう1つはそれと正反対の「mixiユーザーはFacebookに移行したので、だれもmixiで交流していない。mixi内は閑古鳥が鳴いている」という説。

 どちらも間違いだったことはループス斎藤さんのFacebook国内ユーザー300万人と堅調、mixiも際立つ活性化【ループス斉藤徹】 : TechWaveという記事で明らかになったことと思う。

 前者の説は、New York Timesが先週、実名制が理由で日本ではFacebookが苦戦しているという論調の記事を出してから、よく耳にするようになった。特にマスコミを情報源にする人の間でFacebookに対してこのような誤解を持っている人が多いようだ。

 日本でFacebookがナンバーワンSNSでないのは、以前から国内に強力なSNSが複数存在していたことや、昨年になるまでFacebookが日本での普及に力を入れてこなかったことが原因だと思う。

 下のグラフを見ても分かるように登録者数は問題なく伸びている。


 そしてもう1つの説「mixi内は閑古鳥が鳴いている」というのが間違いであることは以下の表で分かる通り。

 誤解する人が多い理由は、業界風の表現を使うと「リアルでクローズドなソーシャルグラフなので外から可視化できない」から。もっと平易な言葉で言うと、「mixiは実際に仲のいい友人同士の空間で、しかも友人同士の交流は非公開設定されることが多いので、外からどの程度活発にやり取りしているかなかなか見えないから」ということになる。

 外からはなかなかうかがい知れないので、「自分の周りでmixiを使っていない」ということがイコール「mixiは流行っていない」という誤解につながるわけだ。

 今年のソーシャルメディアの特長は、「リアル」で「クローズド」な空間が急速に広がること、とこれまで何度も指摘してきたが、この「外から可視化できない」ということが、大きな戦略的ミスにつながる可能性がある。特にPVなどといったソーシャル時代以前の指標に頼っていては、今起こっていることが読めなくなってしまうだろう。

なぜならmixi、Facebookはサイトではなく、インフラである【湯川】という記事でも書いたが、mixiやFacebookといったインフラ事業者はPVなどという指標にまったくこだわっていないからだ。ページを見たかどうかよりも、ユーザーの交流が活発に行われているかどうかが重要だからだ。

 今後、mixiやFacebookの収入源がサイトのPVと連動するような広告収入ではなく、ソーシャル時代ならではのマネタイズ手法に傾けば傾くほど、PVなどといったこれまでの指標は意味を持たなくなるだろう。

 なのでソーシャルメディア関連の比較を行うときはどの指標を使うのか注意深く検討したい。

 ネットレイティングはFacebookのユーザー数は308万人としているが、Facebookは自ら登録ユーザー数185万人と発表している。ネットレイティングのほうが多いのは、Facebookのサイトにアクセスする未登録のユーザー数まで計算に入れているからだ。

 どちらの指標のほうが重要だろうか。

 PVと連動する広告収入が主な収入源のビジネスモデルにとっては、前者だろう。アクセスする人が多いほどPVは上がり、PVが多いほど広告収入が伸びるからだ。

 しかし、親しい友人同士の交流を通じて情報、広告が流れ、購買意欲が掻き立てられるようになれば、後者のほうが重要な指標になっていくことだろう。ソーシャルな時代のビジネスモデルが確立すれば、交流を目的としないユーザーの数は無意味になるからだ。

 さらにいえば「利用時間」などという指標も今後は重要度が低下するだろう。動画を見たりゲームをすれば滞在時間は当然伸びる。しかし滞在時間が長いからと言って、友人に自分が感銘を受けた本を勧める確率が高まるわけではない。購買意欲を促進するような交流が深まるわけでもないのだ。「滞在時間」という指標は、友人同士の関係性を利用したマーケティングには無意味である。

 ビジネスの視点だけどはない。社会に影響を与えるという意味においても、親しい友人の交流を通じて流れる情報のほうがより影響力を持つようになれば、何人がその情報を目にしたかという指標よりも、どこに深い交流が発生しているかという指標のほうが重要になる。

 そう考えれば、ソーシャル時代にふさわしいいい指標が今はないのかもしれない。

 できれば実際の書き込み数やそれに対するコメント数、さらには「いいね!」を押す回数などを含めた「投稿数」というようなデータを公表してもらいたいものだ。SNSがどの程度活性化しているのかを示す指標としては、今のところこのような「投稿数」が一番いいと思う。それぐらいしか今はないのではないだろうか。

 Facebookユーザーの多くは、昨年秋からFacebookが急に活性化したことを知っている。登録者数の堅調な伸びとは比較にならないような急速な活性化がFacebook上で起こっていることを知っている。また20代のmixiユーザーはmixiが昨年春以降に急に盛り上がりを見せたことを知っている。「投稿数」という指標があれば、こうしたユーザーの感覚に近い数字が出るのではないだろうか。

 そしてもしそういう指標があれば、「リアル」で「クローズド」なSNSが急速に活性化していることが、だれの目にも明らかになるのではないかと思う。

 昨日の斎藤さんの記事を受けてmixiの原田明典副社長が、「オープンゲーム(コミュニティ型ゲーム)の利用は12月は特に伸びてませんね。」とつぶやいていた。

 斎藤さんが、「mixiは久々に1000万人台を回復した。今後の傾向を見守る必要があるが、2010 mixi meetup以降のオープンゲームに対する積極姿勢が功を奏した可能性がある」と解説したことを受けたつぶやきのようだ。原田さんとはこれまでに何時間も議論を重ねてきたので、彼の主張はよく分かる。代弁させてもらうと、オープンゲームのようなどこのだれか分からない人同士の交流がmixiを活性化させているのではなく、フォトやボイス、カレンダーといったツールを使った「リアル」で「クローズド」な交流こそがmixiを活性化させている、ということなのだろうと思う。

 新しい時代には新しい指標が必要である。調査会社にはぜひそうした指標を採用してもらいたいものだ。

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