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HPがタブレット、ケータイ、PC事業から撤退へ【湯川】

[読了時間2分]
 米Hewlett-Packard(HP)は、四半期決算発表の会見の中で、タブレット、スマートフォンから撤退を決めたことを明らかにした。消費者向けパソコン事業からの撤退の検討も始めた。HPは昨年モバイルOS「webOS」事業に乗り出すためにPalm社を買収したばかり。約1年で見切りをつけたかたちだ。またパソコン事業は約30年に渡り同社の根幹となってきた事業だけに、実現すれば大胆な方針転換になる。一方で大容量データ解析技術を持つ英Autonomy社を103億ドルで買収する方向で交渉していることも明らかにした。消費者向けハードウエアから撤退し、大企業向けのソフトウエア・サービス事業に集中していく戦略のようだ。

 会見直前にリリースされた発表文によると、消費者向けハード部門であるPersonal Systems Group(PSG)に関し「子会社化やその他のトランスアクションを含むあらゆる可能性を今後検討していく」という。またAutonomy社に関しては「買収に関して協議している」という。

 一方会見の中でHPのCEO、Leo Apotheker氏は「PSG(消費者向けハード部門)を分離することで、クラウドやサービスへの集中戦略が明確になる。PC事業がうまく機能するには、(同部門が)自分たちで最適な決断をできるようにしなければならない。恐らく12カ月から18カ月でこの計画を完了できると思う」と語った。ただ、具体的な計画の中身については「あらゆるシナリオを検討する。PC部門を売却しないこともありうる」と明言を避けた。米Wall Street JournalのブログAll things Dによると、ハード部門をアジアのメーカーに売却するといううわさがあるようだ。


 同CEOは評価の高い基本ソフト「webOS」に関し「ソフトウエアのローンチは成功した。今後の進展を注目している。われわれのwebOS資産をどうすれば最大限活用できるのか検討を始めている」と語った。他社へのライセンシングに注力するもようだ。

 一方で同OS搭載デバイスに関しては「期待通りに進展していない」としており、「このデバイスの領域での事業を継続することは、もはやHPの利益にならない。webOSのハード事業は第4四半期に閉鎖する」と語った。

 HPのタブレット「TouchPad」はハード面では高い評価を得ていたが実際にはほとんど売れていないようで、All things Dによると家電量販店Best Buyに出荷した約27万台のうち約2万5000台しか売れていないという情報があるらしい。

 米Bloomberg通信がHP to Pay $10.3B for Autonomy, May Spin Off PCsと最初に報じたことを受けて、HP側が急きょ事実関係を明らかにしたようだ。まだどの計画も発表できる段階ではないようで、歯切れの悪い会見となった。

関連記事:HP to Pay $10.3B for Autonomy, May Spin Off PCs – Bloomberg
Liveblogging HPs Everything Including The Kitchen Sink Conference Call – Arik Hesseldahl – News – AllThingsD
OuchPad: Best Buy Sitting on a Pile of HP Tablets – Arik Hesseldahl – News – AllThingsD

蛇足:オレはこう思う

 HPはAppleになりたかったが、なれなかった。

 でも決して悪くない決断だと思う。ユーザーが発信するデータはものすごい勢いで増え続けている。広告やマーケティングに使えるデータが豊富に揃い始めたのに、それを解析する仕組みがまだまだできていない。大規模データ解析は非常に有望な領域だし、それに挑戦できるほど資金力のある企業ってそう多くない。早い時点で大胆な戦略転換したことは、英断と呼んでもいいと思う。

【追記】Twitterでこの話題を見ていると、「消費者向けPCって儲からないんだね」「HPのパソコンって売れてないんだ」という意見を見受けましたが、実際にはHPのPC事業は好調のようです。ただそれでも切り離すことを検討しているのは、それだけデータ解析に集中する会社になろうという意思の表れだと思います。

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