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店舗の在庫にチェックインできる「shopping+(ショッピングプラス)」はO2Oに革命をもたらすか? 【増田(@maskin)真樹】


[読了時間:2分]

 サイバーエージェントベンチャーズの支援プログラムで事業スタートアップを展開するインサイト・プラスは8月29日、商品バーコードにチェックインして価格情報を検索することができるスマートフォン用アプリ「shopping+(ショッピングプラス)」のiOS版をリリースした。Android版は2011年内のリリースを予定している。

 技術提携しているベンチャーリパブリックが提供する価格比較サイト「coneco.net(コネコネット)」から情報が提供されている。アプリ利用者は、商品バーコードをスマートフォンのカメラでスキャンすることで、瞬時にその情報を取得できるだけでなく、店頭価格やメモを付与する形でその商品情報を記録することができる。検索できる価格情報は現時点で「家電」カテゴリーに限定されているが、広げる準備もしているという。

カメラでバーコードをスキャン

商品に付与されているバーコードをアプリを使ってスキャンする


 アプリはfacebookかTwitterアカウントを使用してログインして使用する。チェックインのボタンをクリックするとバーコードスキャン機能が起動する。スキャンの精度は高く、バーコードを読み込ませると、瞬時に商品の情報やconeco.netの価格情報が表示される仕組みだ。

 この画面で「欲しい」や「持っている」といったメモ機能を利用できるほか、共有機能を 有効にすれば「買った」「在庫なし」といったステータスを付与した上でソーシャルメディア上で共有することが可能。「shopping+(ショッピングプラス)」にもソーシャルメディア機能があるため、他のユーザーをフォローし、商品を持っていたり関心を持っているユーザーと情報交換をすることも可能だ。

coneco.netからの情報表示に対応するほか。shopping+で入力された価格情報やクチコミ情報を共有することが可能

ユーザーページが用意される。フォロー関係が表示されるほか、欲しいものや持っているものなどがチェック可能。商品を通じてコミュニケーションできそうだ

 バーコードスキャン/プロダクトチェックイン型のサービスは、O2O(オンライン to オフライン)の典型的モデルとしてTechWaveでも何度か紹介している。例えば米ebay傘下のRedLaser&Milo(マイロ)のモデルや「Shopkick」などがそうだ。それらをゲーミフィケーション要素を含めて発展させた「CheckPoint」や「BarCodeHero」も注目だ。StickyBitはバーコードを発展させたアイディアを展開しているし、mixiもモノにチェックインするNFCタグの実験を行っている。

 プロダクトチェックインという意味ではどれも似たり寄ったり、アイディアが尽きないこの世界で「shopping+(ショッピングプラス)」はどう戦っていくのだろうか。

アフィリエイト事業成長の立役者 八木岳郎氏が見た“夢”

 インサイトプラス 代表取締役 八木岳郎氏は、1990年代に書店ECを筆頭としたECサイトの立ち上げに多数関与した後、トラフィックゲートの取締役副社長としてアフィリエイト事業を成長させてきた立役者。その経験の中で「クチコミ」が大きな役割を持っていたことを実感し、それらの経験から小売流通業にイノベーションを起こしたいと考えているという。

 「ユーザーとプロダクトをソーシャルグラフの中で結ぶことで、リアルの世界でもECやネットマーケティングのテクノロジーを広げることが出来るのではないか。7兆円のBtoC Eコマース市場に対して、135兆円と言われるの小売流通市場にイノベーションを起こせるのではないかと考えたことが、このサービスを始める一番大きなきっかけです。

 また、家電といえばマスプロ(マスプロダクション:大量生産)の発想が主流です。売り手主導の情報が主導権を握っているのですが、買い手の情報(クチコミ)もあるため、お互いが対立してしまっている。そこで情報を整理し、双方が必要な情報をお互いに補完し合う場を作り、から抜け出して新しい商売のしくみを作りたいという夢を見始めたんです。

 ユーザーや店舗、そして流通をどう巻き込むかについて色々考える所があります。ユーザーの反復率を高めるために昨今の話題の中心となっているのはゲーミフィケーション(ゲーム要素によるサービス活性化)で、これはこれで大切なポイントのひとつだと考えていますが、活用価値の高いデータを蓄積し情報収集に活用してもらうという本質を外してしまうリスクもあり、あくまでも買い物における利便性向上機能を中心に構築することでユーザーと店舗を巻き込む考えです。

 チェックインにより場所(店舗)情報を含んだユーザー動向を収集できるわけで、これらをマーケティングやサプライチェーンマネジメントに活用頂けるように購買データをマージした新たな店舗運営支援のシステムを作りたいと考えているほか、ユーザーと店舗がshopping+上で取引を行う仕組みといった店舗向けの機能を実装する準備をしています。

 具体的にはユーザーが「この商品をいくらなら買いたい」と登録すると、店舗が「いくらでいかがですか?」と返答して商談をすることができるというものです。1対1に対応しますが、事前に取引のルールを設定し、自動で進める仕組みも実装する計画です。商談が成立したら、商品のお取り置きを仲介したり、事前に決済を行える手段やECの仕組みを使って配送するという構想も検討中です。

 さらに、店舗独自のポイントサービスと連携したり、データが蓄積されたら「よく行くお店でのチェックインランキング」「エリアごとのチェックインランキング」といったコンテンツの配信も可能になります。これらを通じ、リアル店舗の商売流通の本流にどれだけ入り込めるかが私たちの勝負だと思っています。単純にアフィリエイトするのではなく、私たちのサービスが店員の代わりを出来るだけ担えるかがポイントだと思っています」(インサイトプラス 代表取締役 八木岳郎氏)

 リアル店舗での利用シーンの活性化を担うshopping+は今後、お店でチェックインすると受け取ることができるクーポンの提供や特定のリアル店舗とのキャンペーンなどを通じ年内に10万人、2012年末には100万人まで拡大したい考えだ。果たしてリアルはオンラインのノウハウで変容するのか、今後に注目される。

【関連URL】
・shopping+(ショッピングプラス)
iTunes Apps Store
http://www.shoplus.jp/

蛇足:僕はこう思ったッス
緻密に計算されたサービス。実際に利用してみると、知り合いと持っているものや欲しいものを共有することがとても楽しい、よくある「あのアイテムが好き」系サービスを超越したワクワク感があるのに驚かされる。実売価格のソーシャルメディアでの共有は、何となくではあるがタブーされているような気がする。しかし、同社が考えている店舗向け活性化サービスとユーザーが投稿する価格情報が絶妙の関係を持つことで、リアル店舗流通に活性化の火が付く可能性もあるように思えた。思い返せばO2Oのサービスは、もう20年近く語り続けられてきているわけで、そろそろ大本命が世界を席巻してもいい時期にあるように感じる。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 コードも書けるジャーナリスト。イベントオーガナイザー・DJ・作詞家。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら地方で成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。 / ソーシャルアプリ部主宰。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。
メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・詳しいプロフィールはこちら


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