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人と人が仲良くなる方法は限られている。男女の関係なら言葉はいらないかもしれない。男同士の関係なら、戦友のように修羅場を共にくぐり抜けることで深いきずなを築くことができる。しかしそうした関係以外では、人と人とがきずなを強める方法は1つしかない。時間をかけて自分のことを話し、時間をかけて相手の話に耳を傾けることだ。それ以外の方法で、人と人との関係が深まることはない。
米Facebookが今年の開発者会議「F8」で発表した「タイムライン」というページと、新しいタイプの「ソーシャルアプリ」は、時間をかけて話し合う以外の方法で人と人のきずなを深める新しい方法に関する、Facebookからの提案である。FacebookのCEOのMark Zuckerburg氏は、人と人が出会ったとき、まず最初の5分間で自分がどこのだれであるのかを相手に知らせるものだと言う。そしてその次の15分間で自分の最近の関心事などを話す。より仲良くなるには、相手が今までどのような人生を送ってきたのかを何時間もかけて話し合う必要がある、と同氏は指摘する。
Facebook上のユーザーページの「基本データ」のページは、出会ったばかりの最初の5分間の情報だという。自分の名前や勤務先、出身校、好きな音楽、性別などが書いてあるページだ。もっと仲良くなるためには、次の15分で最近の関心事を語る必要がある。それがTwitterのつぶやきのような「投稿する」である。そしてその後の何時間にも及ぶ会話の代わりになるのが「タイムライン」と呼ばれるFacebookが今回発表した新しいタイプのページになるという。
タイムラインにはFacebook上での自分の「投稿」や「写真」など、自分が発信したあらゆる情報が含まれるようになる。ただすべてが表示されるわけではない。直近の情報のほとんどが表示されるが、情報が古くなるにつれ表示される情報の数は自動的に減るようになっている。Facebookのシステム側でどの情報が大事な情報なのかを自動的に判断し、古い情報ほど少なく表示し、ユーザーごとの「自分史年表」を作ってくれるわけだ。もちろんこの「タイムライン」という自分史年表は、自分自身で追加修正できる。子供のころの写真なども簡単にタイムラインにアップロードできるほか、システム側が大事な情報と認識して大きく表示した写真や動画を、ユーザー自身で小さくしたり隠したりもできる。反対にシステム側が隠している情報を表示したり、小さな写真を大きく表示することも可能だ。当然ながら、それぞれの情報の公開設定(友達のみ公開、友達の友達まで公開、一般公開など)も可能だ。
タイムラインの表示の仕方もいろいろある。「写真ビュー」という表示方法なら、写真だけの自分史になる。「地図ビュー」という表示方法なら、生まれた場所から育った場所、旅行で訪れた場所などにピンが立って、地図上で自分の人生の軌跡を追うことができるようになっている。
そのタイムラインに表示される情報といえば、今のところ「投稿」「写真」「動画」「リンク」などが中心だが、これに加え「アプリ」からの情報が重要な構成要素になる、とZuckerburg氏は主張する。同氏によると、Facebookユーザーの多くはアプリが大好きで、アプリを通じて自分自身を表現したいと考えているのだという。
同氏によると、すべてのアプリがソーシャルの要素を組み込むことで楽しさや利便性が向上すると指摘する。すべてのアプリはいずれソーシャルアプリになるのだが、ただソーシャルの要素を加えることで楽しさや便利さが大幅に向上するものと、それほど大きくは向上しないものとがある。最も大きく向上するのは、「コミュニケーション」「ゲーム」の分野のツールやアプリ。反対にそれほど大きく変化しないのは、「医療」や「財務」など、他人と情報をあまり交換しない分野。当然のことながら大きく便利になる分野のアプリからソーシャル化が進んでおり、コミュニケーションの分野は電話からメール、そしてソーシャルメディアへと変化してきた。ゲームの分野は、ソーシャルの要素を組み込んだソーシャルゲームが大人気になっているのは周知の通りだ。そして「コミュニケーション」、「ゲーム」の次に、ソーシャルの要素を組み込むことで大きく変化すると同氏が考えているのが、「メディア」「ライフスタイル」の分野だ。
「メディア」に関するアプリは、音楽、映画、テレビ番組、ニュースなどに関するもの。そうしたアプリが発信する情報を友人のニュースフィード上で発信することで、メディア消費のカタチが大きく変化するという。例えば自分の友達が音楽アプリを使って今どんな曲を聞いているのかが「ティッカー」と呼ばれる画面右端のコーナーに電光掲示板のように表示されるようになる。もしくはなんらかの理由で「その曲を友人が今聞いている」という事実が価値のある情報であるとFacebookのシステムが判断した場合には、ニュースフィードと呼ばれるページ中央の目立つ情報コーナーに表示される。そしてその曲名をクリックすれば、友人と同時に同じ曲を聞くことができるようになる。
離れた場所にいる友達同士で同じ曲を聞くというまったく新しい体験が可能になるわけだ。曲を聞きながら文字でチャットしたりもできるだろう。実際に体験してみないと実感がわかないが、Zuckerburg氏によると、ものすごく楽しい体験だという。
同様のことが映画やテレビ番組、ニュースなどに関するアプリを通じて可能になる。
一方「ライフスタイル」の領域は、「料理」、「幸福」、「ファッション」、「睡眠」、「サイクリング」、「ジョギング」など、日常生活の何らかの活動に関するアプリ。例えばGPSなどを使ってジョギングコースで走った距離、時間を記録するモバイルアプリも、ソーシャル化することによってまったく別の楽しさが出てくるという。近くの公園でたった今、友人がジョギングを始めたという情報が、ジョギングのモバイルアプリを通じてFacebook上に表示される。自分もジョギングしたくなった人は同じアプリを立ち上げてジョギングに出かけるかもしれない。同じコースを走ってもいいし、全然別のところを走っていもいい。同じ時間に走ることによって連帯感が生まれるかもしれないし、競争心が沸くかもしれない。一人でジョギングするのとはまったく違った体験が可能になるわけだ。
どんなメディアを消費しているのか、どんなライフスタイルをおくっているのか。大事な友達だから自分のことをもっと知ってほしいし、大事な友達だから相手のことをもっと知りたい。Facebookユーザーは「メディア」「ライフスタイル」アプリを通じて情報を盛んに発信するようになるだろうと同氏は言う。
かってのmixiユーザーは日記でお互いのことを伝え合った。Twitterユーザーは140文字でお互いのことを知ろうとした。これからのFacebookユーザーは「メディア」「ライフスタイル」アプリを通じてお互いのことをよりよく知ろうとするというわけだ。
Facebookは進化を始めた。「タイムライン」という自分史年表という「過去」と、新しいタイプのソーシャル「アプリ」という「今」。「過去」と「今」を友人に発信することで、人とのきずなをより深めるツールになるべく進化が始まった。
【お知らせ】経営者や企業の企画戦略部門担当者を対象にした少人数制の勉強会「緊急開催!Facebook新戦略を徹底議論・f8帰国報告会」を9/30(金)の午後7時から都内で開催することにしました。詳しくはこちら。
ビジネス的には、「アプリ」の部分が重要なので、別の記事で「アプリ」のことをより詳しく取り上げたいと思います。