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リンクトインが提示する新しい働き方の姿【谷口正樹】

[読了時間:3分]

リンクトイン(LinkedIn)が日本語化されました。が、どういう使い方が最も効果的か迷っている人も多いはず。大きな反響を読んだ前回の記事に続き、国内髄一のリンクトイン専門家である谷口正樹さんから、課題解決ツールとしての利用法を寄稿してもらいました。(本田)

谷口正樹
(@taniyang)

 先日20日の木曜日、ついにリンクトインの日本語版がリリースされました。リリース当日には、登録方法がnanapiでただちにアップされたり、リンクトイン関連記事がNAVERで即座にまとめられるなど、週末はリンクトイン関連で大きな盛り上がりを見せました。また、リンクトイン・ジャパンは国内オフィスを設け、当日は記者会見やブロガーミーティングを開くなど、日本展開への本気度をアピールしています。

 リンクトイン社は記者会見で、しきりに「日本の仕事の仕方を変える」というフレーズを使用していました。ニュースなどで報道された際には「海外のビジネスSNSが来た」という程度の内容でしたが、私としてはやはり見るべきは「リンクトインは仕事の仕方をどう変えるのか?」というポイントだと思っています。

 以下、リンクトインがどのように仕事の仕方を変えるかについて、私の利用経験からの見解を述べたいと思います。

リンクトインに似ているサービスはアマゾン

 やや唐突ですが、改めてリンクトインとはどういうサービスなのでしょうか?リンクトインと比較されるものとしては、現状ではフェイスブックやグーグルプラスがよく引き合いに出されます。しかし、これらは思想もサービス設計もそれぞれ根本的に全く異なっていて、私としてはまるで似ていないものだと感じています。

 少し妙に感じられるかも知れませんが、私の考えではリンクトインに一番よく似ているサービスはAmazonです。Amazonのユーザーは主に、欲しい商品の情報を得たりそこで買い物をしたいときにAmazonに行って検索をかける、という使い方をしています。同じようにリンクトインのユーザーは主に、ビジネスについて情報を得たりそこで何か仕事の依頼をするためにリンクトインに行って検索をかける、という使い方をしています。この2つのサービスは「自分が必要な情報を得るためにそこで調べ物をする」という点で非常に共通しています。

 そういう意味では、リンクトインはメディアというよりもデータベースと思ってもらうのが正確な理解だと思います。私も、説明をわかりやすくするためにリンクトインを「ソーシャルメディア」ですとか「SNS」として説明することが多いのですが、実際はソーシャル要素がそんなに強いサービスではないので、むしろAmazonやGoogleといったデータベース的なサービスにイメージが近いと考えています。(なので「ソーシャルメディアだ!コミュニケーションの場だ!」と思ってわいわいコミュニケーションを取ってみても「なんか違うぞ・・?」となって、結局利用を止めてしまう人が出てくるだろうと推測しています。)

 このような使われ方をしているためリンクトインとは、Amazonで欲しいものを発見するように「そこでビジネス課題の解決に必要な情報を発見する」場所であると言えます。そのため、私はリンクトインを「課題解決策発見ツール」と定義しています。我々はもはや工業社会を終えて情報社会、知識社会を生きています。工業社会のビジネスというのは「作れば売れる」というルールで成立していましたが、情報社会や知識社会のビジネスは「課題を解決することでお金がもらえる」という全く別のルールで成立しています。

 リンクトインが「ビジネスパーソンのための生産性向上ツール」を謳っているのであれば、リンクトインが「いかにユーザーが課題解決をする手助けをするのか」にフォーカスしてサービスを作るのは当然のことだと言えます。ここにリンクトイン社が言う「仕事の仕方を変える」という言葉の意味を知るヒントがあります。

実際に私の周囲で起きた「リンクトインを通じた課題解決」

 私の周囲で、リンクトインを課題解決ツールとして使ったちょっとしたエピソードをご紹介したいと思います。

 リンクトイン関連で私宛てにとあるメディアの編集者の方から取材のご依頼をいただきました。ご依頼をお受けして中身についてやりとりをしていたのですが、コンテンツの内容や背景を聞いていく中で「ユーザー目線ではない、採用をされている人事担当者の方にも取材したいがなかなかうまくいかず。。」というような話が出てきました。

 そこで、なんとなく知人の採用担当者さんの顔が浮かんだのでその人の話をしてみました。すると「是非その方に取材したい!!」ということになり、リンクトインの紹介機能を経由して編集者さんとその人事担当者さんがマッチングされました。結果、編集者さんからお礼を言われたばかりでなく、紹介した人事担当者さんからも「自社の取り組みをPRしたいと思っていたところだったので助かりました!」というお礼のご連絡もいただきました。

 採用担当の方は「自社の採用への取り組みをアピールしたい」という課題が解決され、編集者の方は「面白い取り組みを取り上げてユーザーに見てもらいたい」という課題が解決されたことになります。これが今回だと、私がネットワークのハブになることで実現しました。リンクトイン上では、こうした「専門家ネットワークによる課題解決のマッチング」がいたるところで行われているのです。

課題解決策発見ツールである”リンクトイン”をどう活かすか

 課題解決策発見ツールであるリンクトイン。このリンクトインをどう使うかについて、話は「課題解決策を持つ人」と「課題解決策を求める人」で違ってくると思っています。(当然のことながらこれらの両方に当てはまる人もたくさんいます)

 「課題解決策を持つ人」、これはたとえばコンサルタント、IT系の法人営業担当、士業、NPO、フリーランスの方などが特に当てはまるかと思います。これらの人は、自分自身が専門家ネットワークのハブになり、出会った人から課題を聞き出してそれを解決できる人を紹介します(自分が解決できることなら自分が引き受けます)。自分の専門家ネットワーク内の全員がこれを実行することで、「ネットワーク内の専門家が自分に案件を紹介してくれる」という関係が生まれることになります。先ずはこの考え方を理解することが大前提です。どうやってコンタクトを増やすのかや、どんなプロフィールを書くかといった戦術論はその後の話です。

 この使い方について言うと「自分の案件獲得につながらないことになんて時間を割けない」と考える方がいるかも知れません。たしかに直接自分のビジネスにはつながらないかも知れませんが、一方で、紹介してもらった人は「この人に相談すると信頼できる解決策を提示してくれる。この人も信頼できそうだ。」と認識してもらえます。つまり、「信頼を稼ぐ」ことができるのです。自分がビジネスの紹介をしてもらう必要がある中で「自分がいかに周囲から信頼を得ているか」が極めて重要になってきているのは、おそらくご理解いただけることなのではないかと思います。ビジネスの競合と日々しのぎを削る中で「あの人に相談したら解決するのでは?」と思って真っ先に声をかけてもらえるのは、ビジネス上非常に大きな価値を持ちます。

 「課題解決策を求める人」、これはたとえばバックオフィスの方やマネージャー、ディレクター、記者、経営者の方などが特に当てはまるかと思います。これらの人は、例えば多くのコンタクトとつながっている人(=様々な専門家を紹介する能力を持っている人)と会った際に「今●●といった課題を持っているのだが解決できる人はいないか」と紹介を仰いでみるという使い方が挙げられます。

 他にも、リンクトインの検索窓で課題に関連するキーワードを入れて課題を解決できる人を探したり紹介してもらったりするですとか、Q&A機能を使って該当するテーマで質問をして専門家を見つける、といった使い方がメインとなります。信頼できる専門家がいたときはリンクトインでつながっておいて、「●●に困っているけど、解決できる人はいないか?」と聞ける関係を作るとよいでしょう。他にも、現場感のある話をしたければ、他社の同じ職種の方とつながると同じ目線での意見交換ができるでしょう。

 以上、「リンクトインは課題解決策発見ツールである」という趣旨でお話させていただきました。私はこれがリンクトイン社の言う「仕事の仕方を変える」ということであり、ここがリンクトインの本質だと考えています。本記事をご覧の皆さんが、リンクトインを活用し、自分専用の専門家ネットワークを形成して、日本の閉塞感の打破へとつなげていただくことを願っています。

著者プロフィール:谷口正樹

株式会社トライバルメディアハウス所属。
個人としてビジネスSNSをテーマとしてLinkedIn等の普及を通して日本の労働慣行を変えていくべく奮闘しています。

http://www.linkedin.com/in/taniguchimasaki/ja

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