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スタートアップの経済圏は、多くの人の関与によって成り立っている。VCだけでなく、我々メディアもその一翼だろうし、さまざまな個人・企業が表に裏に支えている。
このシリーズでは、こういった影の立役者を中心にインタビューを行う。
今回は、昨日オープンした「Samurai Startup Island」(SSI)の設立を支援した寺田倉庫株式会社の荒川滋郎さんに、今回の経緯をお伺いした。
11月1日に天王洲アイルにオープンした、サムライインキュベートのインキュベーション施設兼コワーキングスペース「Samurai Startup Island」。
場所の提供を始め、このプロジェクトを支援したのが寺田倉庫株式会社(以下:寺田倉庫)である。昨年60周年を迎えた同社は天王洲に多くの物件を抱え、時代の変化に合わせコメの貯蔵からオフィス、トランクルーム、データセンター(ビットアイル)など高付加価値ビジネスを展開。現在は、不動産(オフィス、倉庫)、トランクルーム、BPO(Business Process Out-sourcing)などの分野でビジネスを行なっている。
SSI支援の経緯や目的
SSIの実現は、今年の6月、サムライインキュベートの榊原健太郎代表から寺田倉庫側にコンセプトをプレゼンをしたことに端を発する。「羽田に近いこの天王洲から世界に羽ばたくような企業を育てたい」という同氏のビジョンが特に響いたという。
一方、寺田倉庫としては地域活性化の狙いもあった。明るい話題はもとより、ここ数年天王洲に関する話題は少なくなっていた。そのため「榊原社長の夢を育てるという部分のお手伝いという面もありますし、天王洲の活性化という部分でも一つ面白いかな」というところで判断を下したそうだ。
寺田倉庫は空調倉庫や個人向けトランクルーム、規制緩和後初の水上船レストランなど、新しいものにチャレンジする気風をもった企業である。また、非上場のオーナー企業であることから、意思決定の速さも今回の取り組みが実現した一因であろう。現会長はITに理解があり、「商売っけももちろんあるんでしょうけど、人を育てる意識が高い」とは荒川さんの評。
先月まで小竹向原にあったサムライハウスを訪れた荒川さん。最初は新しいワークスタイルに正直びっくりしたそうだが、ITやネット業界の人にもリアルな場所の必要性を感じたという。
「私どもはリアルな方はご提供出来るので、お互いに自分の持っていないものを出しあうことが私としては面白いかと。」
「非常に可能性を感じました。私自身にはとても出来ないことですし、若い人のやっていることは分かりにくいけど、これは新しい力があるんだろうな、と感じさせるものがありました。」
支援の内容
一般的にはまだまだ普及していないインキュベーションオフィス。
寺田倉庫は家賃についても可能な限りの協力、ほとんど利益が出ない前提で貸しているという。
「不動産業者として儲けようというつもりはなくて、原価くらいは頂戴しますが、そこの部分は少し応援しよう。」
また、同時にサムライファンドの3号への出資も決めている。
今回は不動産事業での取引(支援)だが、スタートアップが成長するにつれ必要になるインフラ部分、物流や関連企業のデータセンターやBPO(総務部門のアウトソーシング)事業によるサポートも視野に入れているという。これはお互いにビジネスとしてシナジーを生み出せる領域でもあろう。
今後についてはSSIでIT関連のイベントを多数開催し、天王洲で色々な新しい事業が育っているという印象付けを行いたいとのこと。
SSIやスタートアップに期待すること
最後に、荒川さん個人の見解としてSSIへの期待について語ってくれた。
「日本がこのままだと構造的に劣化していく可能性がある中で、世界に向けてリーダーシップをとれるものは、ITを含めた新しいビジネスだと思うんですね。今までのビジネスモデルとは違うもので日本そのものを活性化していく必要が出てくる。」
「そういう時にサムライさんの、日本だけでなく世界に出して行く、日本発であるというこだわり。そういう意味では日本が勝つということではないと思うんですけど、日本がこれからも世界の中で一定のポジションを得ていくために、羽ばたいていけるようになるという部分への期待が大きいですね。」
「その中で、羽田の24時間化など天王洲は交通立地に恵まれていますので、良い条件が整わないとビジネスが育ちませんから、これを活かして頂きたいと思います。」
お話の中で印象に残ったのが、「全く異質な両者だけに、お互いに補完しあえるものが大きい。」という言葉。スタートアップの成長に欠かせない既存ビジネスプレーヤーとの関わり方で一つのヒントをもらったような気がしました。
SSIを実現させた榊原さんももちろんですが、これを理解し支援した寺田倉庫にも熱いオトナがいますね。
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。
技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
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