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私にとって思想的支柱の一人でもある跡部徹さんが、「顧客に愛される会社のソーシャル戦略」という本を今日上梓したので、ご本人からそのエッセンスを解説して頂きました。記事下には著作から特別公開のPDFへのリンクもあります。(本田)
跡部 徹
(@atobeck)
企業のソーシャルメディア活用の話に、みなさん飽き飽きしていませんか?
キャンペーンやらなくちゃ、毎日投稿しなくちゃ、ファン数競わなくちゃ…、と。フェイスブックページやって、twitterで情報発信して、mixiページもGoogle+にも企業ページ開設して…。いやいや。そりゃ疲れますし、食傷気味にもなるはずです。
ブラック企業は、ソーシャルメディアなんて使わないほうがいい
断言します。
「ブラック企業は、ソーシャルメディアを活用しないほうがいい」
「顧客を向いて仕事をし、従業員や取引先と仲間になれている会社じゃないと企業が活用しても意味がない」
「顧客に愛される会社のソーシャル戦略」という書籍は、このことを言いたいがために書いた本です。
ソーシャルメディアを企業が活用するときに、他社がやっている手法だけを見ていても、本質を理解することはなかなかできません。表面だけ真似をしていても、次から次と新しいものが出てきて、振り回されるだけです。
企業がソーシャルメディアを活用するのは「商売の原点」を取り戻すこと
企業がソーシャルメディアを活用する最大のメリットは、「商売の原点」を取り戻すことです。
もともと商売は物々交換で始まり、その後対面で商品とお金を交換する貨幣経済に入って行きました。しかし、基本は対面での取引だったため相手の顔もわかり、ズルをするような取引相手は、同じ地域で長期間の取引を続けることは不可能でした。
それがマスマーケットにマスプロダクトを販売する必要性が出てきたのと同時に、商品を販売網に流通させて、販売するというシステムが出来上がりました。同時に商品が流通されたタイミングで、一気に告知して買ってもらう広告宣伝の手段が進化していきました。
効率的に大量の商品を販売することができる様になった分、失ったものは、「相手の喜んだ顔が見られる」「商品に対する期待や不満が把握できる」機会でした。
購入する側から見れば、「お得意様」として認知してもらえ、「えこひいき」してもらえる。もちろん「えこひいき」は金銭的なメリットだけとは限りません。「あなただからこそ、相談したいのだけれど…」と頼られるのも常連としての喜びでした。
お互いを自分の人間関係の中に組み込んで、知り合いを紹介し合い広がっていく喜びがありました。別に安さだけ求めるのであれば、他の売り手から購入するけど、知り合いから買ったほうがうれしいよね、困ったことがあったら、お役に立てることだったら言ってね、という感覚でしょうか。
行きつけの飲食店には、この法則はまだ健在です。「安さ」よりも、相手が自分のことを知っていてくれる喜び、コミュニケーションできる楽しさが心地良さを提供しています。
結局、ブランドは信頼や期待感の蓄積です。だからこそ、真摯にやってきた企業に日の目が当たる時代なのです。決して、ソーシャルメディア上でページ運営をすることではなく、顧客に対して、自分たちができることを真摯にやっていることの一部に過ぎないのです。
この本で取り上げた企業は、皆さんにお馴染みの日本のソーシャルメディア先行ブランドです。無印良品、ANA、伊藤ハム、東急ハンズ…。取り組み事例だけに注目するのではなく、その奥にある顧客に対する思想や中の人が何を考えてやっているかを紹介することにより力をいれています。また、企業という組織の中で、どうやって人間重視の顧客重視の取り組みができたのかにもスポットを当てています。
ソーシャルメディアの戦略を語るときに、表面はテクノロジーでも、求められることは人間の根本的なあり方に近いからです。
※書籍の最後に掲載している対談PDFに、この本のエッセンスが詰まっておりますので、特別に公開しておきます。メンバーズの原さん、無印良品の川名さん、ANAの山本さん、サントリーの坂井さん、私で飲みながら語ったものです。
http://techwave.jp/docs/discussion_strategy-of-socialmedia_atobe.pdf(約1.2MB)
そもそもこの本が生まれたきっかけはTechWave塾でした。第一期TechWave塾に一回だけ代理で私が参加した時の講師がANAの山本さんでした。打ち上げで山本さんと意気投合し、その後メンバーズの原さんを加えて定期的に飲み会を開催することになりました。
その定期的な飲み会は、企業の中でソーシャルメディア活用を行なっている担当者がいつしか増えていきました。この飲み会をきっかけに仲良くなった企業の担当者同士が、お互いのブランドのファンに対して仕掛けを行ったりということが起きていきました。
この流れで、企業がソーシャルメディアを活用することの本質についてちゃんと書いておこうと、出来上がったのがこの書籍です。この本自体が、リアルな人間関係が影響しあって生まれた、まさにソーシャルから生まれた書籍です。
株式会社空気読み代表取締役/メディアコンセプター
株式会社リクルートで、雑誌・WEB・ケータイ・フリーペーパーなどの編集長を歴任した後に独立。一人株式会社空気読み代表として「生活者の気持ちやトレンドの背景をとらえたアイデア・企画により、賑わう場を運営する」をモットーに、メディアのコンセプト設計・新規事業の立ち上げを行なっている
著書:「空気読み企画術」(日本実業出版)/「前に進む力」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
現在の興味は「ソーシャルな生き方」。「個」がより輝いた生き方をするために、社員を雇わずに、優秀な外部パートナーとチームを組むことで、ポジティブな働き方を「一人株式会社」というコンセプトのもと実践中。来年のテーマは「お金よりも信頼の蓄積」